ガス併用住宅なのに、あえてIHコンロを選択。一見、悪手とも思える家づくりをした日刊住まいライター。光熱費のコスト面ではデメリットがあるものの、掃除の手間がない、料理のレパートリーが増えた、心に余裕が生まれたといった点で、日々とても満足しています。この選択に至った理由と、実際に感じているメリットについて語ります。

ガス併用なのにキッチンはIHに決めた理由

1年半前にハウスメーカーで家を建てた筆者。ガス衣類乾燥機(※)やガスヒーターを導入したかったため、オール電化ではなくガス併用住宅を選択しました。

しかし、キッチンはガスコンロではなく、あえてIHに。それまでの住まいでずっと悩みのタネだった、ガスコンロの掃除から解放されたかったからです。

ガスコンロでの調理だと、気をつけていても、油や食材が飛び跳ねたり、吹きこぼしをしたり。そのたびに、コンロ回りの掃除が必要になります。

五徳など凹凸の多いガスコンロは、掃除に手間がかかるうえ、掃除の仕方を間違えると塗装がはげて、後悔することもありました。

一方、IHは凹凸が少なく掃除がラク。「IHはガスコンロに比べ火力が劣る」という話は耳にしていましたが、筆者は、掃除がしやすいという点に大きなメリットを感じていました。

※筆者は、ガス衣類乾燥機を導入し、外に洗濯物を干さないことを前提に家づくりをしました。これによって、洗濯家事を徹底的に効率化しています

 

「オール電化orガス併用にするか」に悩む

そもそも、「オール電化orガス併用にするか」は、ハウスメーカーを決めるときからとても悩みました。それぞれの立場で、光熱費について筆者がまとめてみると、以下のようになります。

●オール電化だと:
ガス併用にすることで電気料金とガス料金、2つ分の基本使用料が発生してしまう。従って、コストメリットのためにも電気に一本化したほうがいい

●電気とガスを併用だと:
一般的に電気代よりガス代の方が安い。従って、大容量の太陽光パネルと蓄電池を採用しないのであれば、電気とガスを併用したほうが賢明。そして、コンロもIHではなくガスコンロにする方が、トータルの光熱費が下がる可能性が高い

「オール電化にして使いたいガス機器をあきらめる」か「ガス併用にしてガスコンロにし、IHをあきらめる」か。これは、とても難しい問題でした。

結局、わが家の性格やライフスタイルを理解し、「ガス併用だけど、キッチンはIHに」と自発的に言ってくれたハウスメーカーと家づくりをすることにしました。

1年半使ってわかった、IHのメリットとデメリット

できあがって新居に暮らして1年半。実際に日々IHを使うなかで、デメリットもわかりました。

たしかに、揚げ物や焼き物は、ガスコンロで調理する場合に比べてパリッと仕上がりません。「IHは火力が弱い」というよく聞く話を、実感しています。

けれど、やはりメリットのほうが大。IHを希望したいちばんの理由である、お掃除の手間が、ガスコンロに比べ圧倒的にかかりません。

IHはトッププレートが平たんなので、基本的には調理終わりにさっとふくだけで掃除が完了。キッチンの作業スペースをふくついでに一緒にやってしまえるので、手間が最小限です。

 

ときには落ちにくい汚れがつくことや、焦げついてしまうこともあります。でも、そんなときには、クレンザーをつけたラップでこすると簡単に落とせます。

 

筆者が選んだIHは、ワークトップとの段差がとくに少ないタイプ。つなぎ目部分も汚れにくく、助かっています。

ガスコンロのときには掃除が面倒で、避けがちだった揚げ物料理。IHにしてからは掃除の手間を気にせずにできるようになったため、食卓に並ぶレパートリーが増えました。

また、安全面でもIHにはメリットが多いとされています。直火を使わない分、火災のリスクが下がることは、よく知られています。自動調理メニューも豊富で、ボタン1つで調理してくれるため重宝していますが、多少ほったらかしにしてしまってもさほど心配がありません(※)。

※調理は取扱説明書に従って行ってください

 

さらに、子どもでも安全に使いやすいと実感。小学校2年生の娘が、休みの日に料理している様子を筆者が見守っていても、火災のリスクを感じることがなく安心です。

 

トータルコストは上がったが、満足度も抜群に高い

「ガス併用なのに、キッチンはIH」という、筆者の選択。コスト面だけではいちばんの悪手なのかもしれません。長く暮らす家だからこそ、ランニングコストをもっとシビアに考えて家づくりをすべき、という意見のほうが説得力があります。

けれど筆者は、掃除の手間やストレスを減らす選択ができたことに、とても満足しています。出ていくお金は少し増えたかもしれませんが、時間や気持ちに余裕が生じて、筆者のフリーランスの仕事の効率もアップ。「入ってくるお金」が増やせることも考えられます。

また、高齢になり火の扱いに不安が生じ、ガスコンロからIHに変更するという例もあります。このような場合、長期的にみたらコスト高になるような気も…。

初期コスト、ランニングコスト、そして長期的にみたコスト。これらに対して、どのくらいの満足が生活のなかで得られるのか。そのバランスを考えながら、自分のライフスタイルに合った設備を、家づくりでは選びたいものです。