金正恩が普通江川岸段々式住宅区竣工式でテープカットを行った(2022年4月14日付朝鮮中央通信)

写真拡大

北朝鮮国営の朝鮮中央通信は11日、各地の農村で住宅建設が進んでいると報じた。

各地で農村住宅の骨組、屋根工事が本格化

【平壌9月11日発朝鮮中央通信】各地の活動家と勤労者が、農村住宅の骨組、屋根工事と仕上げ建材の生産を本格的に推進しながら、農村建設成果を日ごとに拡大している。
慈江道では、煕川市地新野菜農場の村を標準に整えるために施工の質を高めて壁塗り、屋根工事、汚水処理場の建設を進めている。

江東郡、泰川郡、会寧市の活動家と建設者も、短期間に基礎、骨組工事を終え、先進工法を積極的に活用しながら、内部と外部の壁塗りとスラブ工事を電撃的に推し進めている。

農村建設が本格的に行われることに合わせて、機械化の割合を高めるための活動が推進されている。

各道で、建設装備と器具・工具の展示会を実質的に催して、地方建設の物質的・技術的土台をいっそう強化している。

農村住宅の建設に必要な建材品を生産、供給し、仕上げ建材の国産化比重を高める活動でも進展が遂げられている。

わが党の雄大な農村革命綱領を実践の成果で貫徹している活動家と勤労者の力強い闘いによって、各地の農村で平屋、低層、段々式住宅がその姿を現せている。−−−

朝鮮労働党機関紙・労働新聞も15日、農村での住宅建設が進み、中でも平壌市、慈江道(チャガンド)、咸鏡北道(ハムギョンブクト)、咸鏡南道(ハムギョンナムド)が他地域より進んでいると報じた。

これらの住宅は、住民に名目上は無料で提供されるが、当の住民からは不満と懸念の声が上がっている。咸鏡南道のデイリーNK内部情報筋が伝えた。

朝鮮労働党咸鏡南道委員会(道党)は先月30日、今年の社会主義農村文化住宅建設の成果を上げよと、建設旅団に対して、技術者を建設現場に派遣させるよう命じ、咸鏡南道の支援の下で、市と郡が農村住宅の建設課題(ノルマ)を、党が直接乗り出す形で行うように指示した。

また、建設現場で機械が使えるように燃料供給を保証させ、農民に「税金外の負担」をさせてでも、建設資金の調達と労働力の動員と後方事業(支援)に力を入れるべきだと要求した。なお、税金外の負担は、金正恩総書記が禁じたはずの行為だが、これでは地域の最高組織である道党が、最高指導者の命令をガン無視していることに他ならない。

これを受け、道内の定平(チョンピョン)郡当局は、すべての世帯が後方事業に参加するように求め、参加しない者がいれば、人民班(町内会)で把握して、上部に報告せよと命じた。

参加しないのに、国が力を入れて建設した家をタダで受け取ろうとするのは、羞恥心も良心もない行為だとして、総和(総括)を行って、家を受け取る者のリストから除外すると警告した。

これに対して現地の住民からは「家族が食べるものが不足して、その日その日糊口をしのいでいるほどなのに、こんな生活が苦しい時期に、誰が家を建ててくれと言ったか」と反発している。また、「家でももらってももらえなくてもどうでもいい」と言い切る人すらいる。

北朝鮮で新築住宅は、内装工事が行われないままに、入居者に引き渡されるのが慣習だ。内装工事は、入居者が自費で行わなければならないが、食うや食わずの生活をしている人々に、そんな余裕などあるはずがない。

また、定平は、北朝鮮の他の地域に比べれば温暖な方ではあるが、2ヶ月もすれば、暖房なしでは暮らせないほどの極寒が到来する。暖房設備を整える余裕がなければ、寒さに震えながらの越冬を余儀なくされる。

情報筋は、住民が、別の懸念を口にしていると伝えた。

「のんびりと進んでいた農村住宅建設が、道党の指示が下されてから、急にスピードアップした。なんとか整地を終えた土地に、労働者が押し寄せ、建設が非常に速いスピードで進み、住民は懸念を示している」

見るからに質の低い資材を使って、乱暴に壁を組み立てて、セメントが乾いてもいないうちからペンキを塗るなど、無茶なスピードで建設が進むのを見て、住民は「いつ崩れてもおかしくない危険な家」だと不安を示している。農場のイルクン(幹部)ですら、事故に巻き込まれるかもしれないと、内心心配しているという。

質を度外視しして、スピードを優先させる「速度戦」の愚が、また繰り返されているのだ。

速度戦で建てられた住宅が崩壊し、巻き込まれた多くの人が犠牲になる事故が起きるなど、北朝鮮の人ほどその弊害を身をもって感じている。だが、深くまで根を張った「やっつけ仕事」の習慣は、国のトップですらやめさせられず、むしろ煽る始末。

極寒の冬、梅雨の長雨、台風に耐え抜き、1年間持ちこたえる家は、どれくらいあるだろうか。