8月の天候を振り返ると、台風の発生数は5個で平年とほぼ同数、日本に比較的近い所で発生しやすかったことが特徴です。台風シーズン、今年は長引く可能性があります。残暑が厳しい日は、まだあり、爽やかな秋は短いかもしれません。

台風11号の動向 南の海上には台風11号以外にも発達した雲の塊

きょう31日、雲の様子をみると、沖縄の南に、台風11号の雲があり、台風の目はきのう30日ほどではありませんが、比較的鮮明です。コンパクトな台風ですが、猛烈な勢力です。

台風11号は、8月28日に、南鳥島近海の北緯25.55°、東経149.30°で発生しました。太平洋高気圧に北上を阻まれ、西へ進み、翌29日には、東京都小笠原諸島の父島で、最大瞬間風速48.4メートルを観測するなど、発生からすぐに影響が出ました。
8月を振り返ると、台風は比較的日本に近い所で発生する傾向で、今後もそのパターンが起こりやすいといえそうです。

きょう31日、台風11号は、沖縄本島に接近しています。今後、沖縄の南で停滞した後、4日にかけて北上し、沖縄地方に近づく恐れがあります。
台風11号の予報円の中心は、当初の予想より西よりに変わってきていますが、進路は定まらず、依然、予報円は大きいままです。
台風11号は、東シナ海を北上し、日本海を北東へ進む公算もあり、この場合は、九州や四国、本州でも警戒、注意が必要になってきます。最新の気象情報をご確認下さい。

きょう31日、南の海上には、台風11号以外にも、発達した雲の塊が、フィリピンの東、マリアナ諸島近海などにみられます。これらの雲は、今後、熱帯低気圧や台風になることもあるかもしれません。

8月の台風 日本に近い所で発生しやすかった 台風8号は伊豆半島に上陸

8月は、台風が5個発生しました。8月の台風発生の平年値は5.7個ですので、ほぼ平年並みの数値です。

台風8号は、8月13日午後5時半ごろ、伊豆半島に上陸しました。台風8号の影響で、東京都伊豆諸島北部では、13日午前10時59分、線状降水帯が発生したことが確認されました。伊豆諸島では、13日3時間降水量の日最大値は203.0ミリを観測し、1991年の統計開始以来、8月の1位を更新しました。千葉県勝浦市では、13日に最大瞬間風速31.0メートルを観測しました。
台風8号の発生は8月12日ですので、発生した翌日には、日本に影響が出たことになります。というのも、発生場所は日本の南で、北緯29.35°、東経135.55°と、日本に比較的近い所でした。
8月に発生した台風では、台風10号、11号も北緯20°より北で発生しています。

台風は、通常、太平洋高気圧の南に当たる偏東風が吹いている、だいたい北緯15°から20°くらいで発生します。
8月の台風が、比較的日本に近い所で発生しやすかった原因は2パターン考えられます。ひとつは、日本の南の上空に、日本付近を流れる偏西風から切り離された寒気が流れ込みやすかったことです。
もうひとつは、この8月は太平洋高気圧の勢力が例年より北で強まった時期があり、台風の発生しやすいエリアも北へシフトしたことです。

8月 東北〜北陸付近で記録的な大雨

8月3日から4日は、前線が東北から北陸付近にゆっくり南下しました。青森県や秋田県では、線状降水帯が確認されるなど、記録的な大雨になりました。
新潟県関川村の下関では、5日午前6時までの48時間降水量は569.0ミリを観測。統計開始の1976年以降、年間を通して1位の値を更新したのですが、これまでの観測史上1位の値が1978年6月27日の288ミリですので、この値を大きく上回っての更新になりました。

南下する前線に向かって、台風が持ち込んだ熱帯由来の暖かく湿った空気が流れ込む状況が持続したため、記録的な大雨になったのです。これは、沿海州付近で偏西風が南に蛇行したことや、日本の南で太平洋高気圧の勢力が平年より強い状況が続いたことによります。

沖縄で日最低気温30℃以上 観測史上初 8月は例年より暑かった地域も

沖縄の久米島空港で、8月26日、日最低気温が30.0℃で、沖縄では観測史上初めて、30℃以上になりました。前日の夜から気温が30℃以上で経過し「超熱帯夜」になりました。全国で日最低気温が30℃以上になるのは2019年の8月に新潟県上越市などで観測して以来、3年ぶりです。

沖縄付近は、8月は太平洋高気圧に覆われて、晴天が続いていました。さらに、台風11号の影響を受けるまでは台風の影響がなく、海面水温が30℃を超え平年より高くなっていたことが、記録的高温になった原因のひとつです。

本州付近も太平洋高気圧に覆われやすく、8月1日から30日の平均気温は、九州や中国地方、四国を中心に平年より高くなった所が多く、北海道でも平年より2℃くらい高くなった所がありました。

※「超熱帯夜」は日本気象協会独自でつけた名称(夜間の気温が30℃以上)です。気象庁が定義しているものではありません。

8月の天候に影響を与えた大気の流れ 負のインド洋ダイポールモード現象

負のインド洋ダイポールモード現象が発達中で、この秋、発達のピークになる予想です。
8月、偏西風が大きく蛇行したことや、日本の南で太平洋高気圧の勢力が強まったのは、この現象が大きく影響しているといえます。そして、今後の天候にも影響してきます。

インド洋のダイポールモード現象は、熱帯インド洋で、海洋と大気が連動し、相互に作用しながら発達する気候の変動現象です。負のインド洋ダイポール現象が発生すると、熱帯インド洋の海面水温は、南東部で平年より高く、西部で低くなります。このため、通常でも対流活動が活発な東インド洋で、さらに対流活動が活発になります。
この8月も、インド洋北部から南シナ海で、対流活動が平年に比べて活発になっています。この影響で、その北側のチベット高気圧は北へ勢力を強め、偏西風を北へ押し上げたのです。太平洋高気圧の西への張り出しを強めたのも、南シナ海付近の対流活動が強かった影響です。
南シナ海付近で対流活動が活発なことは、太平洋の熱帯域で、海面水温が東部で平常より低く、西部で平常より高い、ラニーニャ現象の影響もあります。

ちなみに、中国東部のチョンチン(重慶)では、この8月、熱波で、最高気温が40℃を超える日が24日もありました。これも、この偏西風の蛇行によります。
ヨーロッパに熱波をもたらしたブロッキング高気圧も、アジアでの偏西風の蛇行に影響しています。イギリスやフランスなどに、この夏、異例の高温をもたらしたブロッキング高気圧からの波束伝播により、中国東部で背の高い高気圧を形成し、偏西風を北へ押し上げたのです。

今年は台風シーズン長引く可能性あり 爽やかな秋は短い

この先、季節の進みはゆっくりでしょう。
負のインド洋ダイポールモード現象やラニーニャ現象などの影響で、今後も、インドからフィリピンの東海上にかけて、対流活動は活発な見込みです。このため、偏西風は日本付近で北を流れる傾向で、太平洋高気圧の勢力はまだ強まることがあるでしょう。10月になっても、残暑は続く見込みです。

台風シーズンも続くでしょう。今後も、台風は日本に近い所で発生するパターンが、比較的起こりやすいと考えられます。台風が南の海上で発生すると、台風8号や台風11号のように、すぐに日本に影響が出始めることがあるかもしれません。

季節の進みが遅いということで、もう一つ懸念があります。台風シーズンは長引くことも考えられるのです。例年では10月も半ばごろになると、台風シーズンは過ぎていることもありますが、今年は10月半ばごろまで、南の海上で、熱帯低気圧や台風が発生しやすく、動向に注意が必要な状態が長く続く可能性があります。

11月になると、西高東低の冬型の気圧配置が現れやすくなり、北風が吹く季節になるでしょう。今のところの資料を見る限りでは、今後、残暑が長く続き、冬の訪れは早いということで、今年は爽やかな秋は短い、ということがあり得ます。