香川県ネット・ゲーム依存症対策条例では、「ゲームは1日60分、休日は1日90分まで」と定められていますが、任天堂の「あつまれ どうぶつの森」や人気バトルロイヤルゲーム「Apex Legends」など合計7タイトルのゲームをプレイしたゲーマー約4万人を6週間にわたって調べた研究により、ゲームをプレイする時間と精神的な健康の間にはほとんど関係がないことが示されました。

Time spent playing video games is unlikely to impact well-being | Royal Society Open Science

https://doi.org/10.1098/rsos.220411

OII | Major new study finds little evidence for causal connection between well-being and video game playing

https://www.oii.ox.ac.uk/news-events/news/major-new-study-finds-little-evidence-for-causal-connection-between-well-being-and-video-game-playing/

Gaming does not appear harmful to mental health, unless the gamer can't stop

https://techxplore.com/news/2022-07-gaming-mental-health-gamer.html

Rest assured: Playing video games is unlikely to impact well-being, study says | Euronews

https://www.euronews.com/next/2022/07/27/rest-assured-playing-video-games-is-unlikely-to-impact-well-being-study-says

「各国の政府や保健機関は、十分な裏付けとなるデータがないにもかかわらず、ゲームの潜在的リスクに対処するとして広範な政策決定を行っています」と指摘するのは、オックスフォード大学インターネット研究所のシニアリサーチフェローであるアンドリュー・シュビルスキー教授らの研究チームです。自分自身も子どもを持つ親であり、またゲームに親しみながら育ってきたというシュビルスキー教授は、ゲームソフトメーカー7社と協力してゲームのプレイと幸福度との関係を調べる研究を行いました。

研究対象になったのは、任天堂の「あつまれ どうぶつの森」、Electronic Artsの「Apex Legends」、CCP Gamesの「Eve Online」、Microsoftの「Forza Horizon 4」、ソニー・インタラクティブエンタテインメントの「グランツーリスモSPORT」、スクウェア・エニックスの「アウトライダーズ」、Ubisoftの「ザ クルー2」の合計7作で、どうぶつと過ごすスローライフが中心のゲームからバトルロイヤルゲーム、MMORPG、レースゲーム、CEROレーティングが「Z」のシューティングゲームまで幅広いタイトルが選ばれています。

研究には、18歳以上のゲーマー3万8935人が参加しました。平均年齢は34歳でゲーマー歴の中央値は23年、性別は男性が77%で女性が21%、第3の性別またはノンバイナリーと回答した人が1.8%、残りは性別の回答を控えた人です。また、ゲーマーのメンタルヘルスの調査には、生活への満足度や各種の感情レベル、ゲームをする際のモチベーションなどを調べる合計3つの手法が用いられました。

研究チームが、各ゲームメーカーから提供された6週間分のゲームデータと、研究チームが収集したメンタルヘルスのデータを分析した結果、ゲームを遊ぶこととプレイヤーのメンタルヘルスの間には因果関係がほぼまったく見られませんでした。研究チームによると、メンタルヘルスに変化が出たのは通常より10時間も長くゲームをプレイしたケースだけだったとのことです。

一方、ゲームをプレイする動機に焦点を当てて分析したところ、内発的動機付けがあった場合、つまりゲーマーが自ら進んでゲームをしたいと思ってプレイしている場合はわずかながら幸福感に正の影響が表れていたことが判明。逆に外因的な理由でゲームをプレイする外発的動機付けがあった場合は、幸福感に負の影響が見られました。

この結果について、シュビルスキー教授は「ゲーマーの幸福には、ゲームをプレイする時間は関係ないことが分かりました。つまり量ではなく質が重要で、『プレイしなければ』と感じると気分が悪化しがちです。その代わり、ゲーマーが好きでプレイしている場合、それがメンタルヘルスに影響を与えると解釈できるデータはありませんでした。従って、好きでゲームをやっている限り精神衛生上の問題はないようです」と述べました。

さらに、シュビルスキー教授は日本などの国でゲームが規制されていることに言及して、「この研究は非常に基本的なもので、ゲーマーの行動を調べたり何らかの実験を行ったりはしていません。しかし、こうした基本的な研究さえ行われていないのに日本は条例、中国は法律を制定して、ゲームを禁止したり制限したりしています。これらの法律は若者のメンタルヘルスを向上させるために作られたはずですが、それが効果的であるというエビデンスはありません」と指摘しました。

なお、今回の研究ではゲームと幸福度の関係が分かっただけでなく、ゲームが人や社会に与える影響についてのデータが制限されており自由に研究ができないという課題も浮かび上がっています。今回の研究を行うにあたり、研究チームは30社以上のゲームメーカーに声をかけましたが、データを提供してくれたのは前述の7社だけでした。また、全世界には約10億人のゲーマーがいて、任天堂のプラットフォームだけでも3000以上のゲームを遊ぶことが可能ですが、今回研究対象にできたのはわずか7タイトルをプレイしている4万人弱のゲーマーだけでした。

こうした点からシュビルスキー教授は「プレイヤーはゲームにはどんな影響があるのか知りたがっていますし、科学者も親も政府も、そして私も知りたいと思っています。しかも、データは手が届くところにありますが、オープンにはなっていません。もし大手ゲームプラットフォームがプレイヤーの幸福を考えるなら、彼らのゲームがどんな影響を及ぼすのかをプレイヤーや科学者が知る機会をもうけるべきです」と述べて、ゲームに関するデータをよりオープンにすべきだとの見解を示しました。

ゲーム企業にもっとデータを出して欲しいというシュビルスキー教授の思いは、同氏のTwitterアカウントのヘッダー画像にも表れています。