青春18きっぷの旅で最大の関門ともいえるのが、本州〜北海道の移動です。海峡部が“在来線”ではなくなってしまったため、「オプション券」を別途購入して新幹線を利用すべきか、それともフェリーを使うか、比較してみました

「オプション券」併用で新幹線、三セクも利用できる

 JR全線の普通・快速列車が5回(5人)まで乗り放題の「青春18きっぷ」。値段は1万2050円なので、1回(1人)あたり2410円とあって、“最強”のおトクきっぷとして人気です。

 夏の観光シーズンには、18きっぷを使って本州から北海道を目指す旅行者も少なくありませんが、津軽海峡の海底を貫く青函トンネルが“関門”となります。というのも、2016(平成28)年の北海道新幹線開業に伴い、このトンネル区間は新幹線と貨物列車の専用線(一部列車をのぞく)となり、在来線の運行がなくなりました。さらに北海道へ上陸しても、その先の木古内〜五稜郭間は新幹線開業でJRから第三セクターの「道南いさりび鉄道」に移管されています。


青函トンネルを出る北海道新幹線の列車(画像:photolibrary)。

 ゆえに、18きっぷだけでは北海道へ上陸できなくなっているのですが、18きっぷユーザー向けの救済商品として、「青春18きっぷ北海道新幹線オプション券」が用意されています。

 オプション券の名が示す通り、このきっぷは18きっぷとの併用する場合に限って使えるものです。北海道新幹線の奥津軽いまべつ〜木古内間と、道南いさりび鉄道の木古内〜五稜郭間が利用できるようになります。1枚で片道1回のみ利用でき、料金は大人・子ども同額の2490円。北海道新幹線の奥津軽いまべつ駅はJR津軽線の津軽二股駅と隣接しており、津軽線(青森〜津軽二股)、新幹線、道南いさりび鉄道、函館本線(五稜郭〜函館)を乗り継げば、青森〜函館間を移動できます。

 北海道新幹線の乗車時には、普通車の空席が利用可。注意したいのが有効エリア外にまたがって乗車した場合で、このときは乗車した全区間の乗車券と特急券が必要です。たとえば、奥津軽いまべつ駅から乗車して木古内駅を過ぎ、次の新函館北斗駅まで利用すると、エリア外にあたる木古内〜新函館北斗間の運賃、特急料金の乗り越し精算ではなく、奥津軽いまべつからの運賃、特急料金を支払わなくてはいけません。また、道南いさりび鉄道の木古内〜五稜郭間は通過利用のみが許されており、途中駅で下車したら乗車区間の乗車券が必要となります。

新幹線でも1日わずか7本!

 オプション券利用での最大のネックは、有効区間の列車本数が少ないことです。津軽線の津軽二股駅に発着する列車は1日あたり上下各5本で、さらに奥津軽いまべつ駅、木古内駅に停車する北海道新幹線も上下各7本しかありません。

 それゆえに乗り継ぎパターンは限られ、上下線で各3パターンのみ。なかには、列車待ちでの時間ロスがかなり大きいパターンもあります。たとえば、下りの乗り継ぎパターンは次の通り。

●下り(青森→函館)の主な乗り継ぎパターン
・青森発(津軽線):6時16分、11時01分、15時31分(いずれも蟹田で乗り換え)
→蟹田発(津軽線):7時07分、11時44分、16時12分(津軽二股で新幹線へ乗り換え)
→奥津軽いまべつ発(北海道新幹線):8時12分、14時15分、17時01分
→木古内発(道南いさりび鉄道):9時13分、15時19分、19時15分
→函館着:10時13分、16時22分、20時16分

 青森6時16分発の乗り継ぎパターンならば函館まで最速の3時間57分で着き、函館からさらに乗り継ぎを重ね、当日中に札幌駅へ到達できます(室蘭本線・千歳線経由、函館本線の山線経由のいずれも可能)。函館に約2時間滞在できるので、駅のすぐ近くの「函館朝市」を散策しながら海鮮丼を味わうのもよいでしょう。

 しかし、青森発11時01分発、15時31分発のパターンだと接続が悪く、函館までそれぞれ5時間21分、4時間45分を要します。函館から青森への上り3パターンは総じて接続が悪く、最速でも6時間以上かかります。


津軽線の津軽二股駅と北海道新幹線の奥津軽いまべつ駅は隣接している(乗りものニュース編集部撮影)。

 上記以外の乗り継ぎパターンについては、たとえば奥津軽いまべつ駅(津軽二股駅)周辺で宿泊して翌日に函館方面を目指す案も考えられますが、北海道新幹線と道南いさりび鉄道の日程をまたいでの利用は、オプション券ではできません。

深夜便を宿代わりにも? フェリーへの乗り継ぎ

 オプション券には使い勝手が悪い面があるので、近年は津軽海峡を航行するフェリーが注目を集めています。青函フェリーと津軽海峡フェリーの2社が運航し、乗船時間は3〜4時間ほど。

 フェリーはなんといっても、フラットなカーペット席で横になれるのが最大のメリットでしょう。シャワー室や飲料・カップ麺の自動販売機などもあります。2社とも毎日8往復。深夜発・早朝着の深夜便もあり、宿代わりに使うこともできます。運賃は、下記の通りオプション券より少し高い程度で、新幹線と比べれば格安といえます。

●フェリー旅客運賃(2022年7〜9月)
・青函フェリー 2600円
・津軽海峡フェリー(スタンダード) 3220〜3650円
※学生割引、往復割引などの各種割引あり

 乗船にあたっては、出航時間の30〜70分前まで(運行会社・時期により異なる)に乗船手続きが必要です。


青函フェリー「はやぶさ」(画像:青函フェリー)。

 津軽海峡の船旅ということで、青函トンネル開業に伴って1988(昭和63)年に廃止された青函連絡船を彷彿とさせるものもあって、年配の方ならば懐かしさを覚えるかもしれません。ただ、フェリーターミナルは駅前ではなくやや離れているので、アクセスのためバスやタクシーの運賃が別途かかります。また、青森以外の各地と北海道を結ぶフェリー航路もあるので、柔軟に検討しましょう。

 ともあれ、フェリーを組み合わせた移動もオプション券利用の乗り継ぎと同様、時間はかかります。効率重視派ならば、北海道新幹線での“ワープ”がよいでしょう。新青森〜新函館北斗間ならば1時間におよそ1本設定されており、乗車時間は1時間程度。もちろん18きっぷは使えないので、運賃と指定席特急券で7720円(通常期)かかりますが、時間ロスが少ない旅程が組めます。