熊本と鹿児島を結ぶ在来線は、JR肥薩線が災害で不通のため、大部分が第三セクターの「肥薩おれんじ鉄道」のみとなっています。この路線では「青春18きっぷ」も利用できません。両県のあいだはどう移動するのがよいのでしょうか

九州新幹線の開業によりJRから第三セクターへ

 全国のJR普通列車が乗り放題となる「青春18きっぷ」。もちろんJR以外の私鉄各線は、一部の例外をのぞき利用できません。しかし、18きっぷ旅の途中であっても「どうしても乗らざるを得ない」私鉄路線があります。そのひとつが、熊本県と鹿児島県にまたがる、延長116.9kmの第三セクター「肥薩おれんじ鉄道」です。


肥薩おれんじ鉄道の車両(画像:写真AC)。

 肥薩おれんじ鉄道は2004(平成16)年、九州新幹線 新八代〜鹿児島中央の開業にともない、並行するJR鹿児島本線の八代〜川内を引き継いで誕生しました。そしてこの時から、この区間は「青春18きっぷ」が使えなくなったのです。

 現在、全線通しで乗れるダイヤは、出水駅での乗り継ぎを含めると、1日14〜15便。八代〜川内の所要時間は約2時間半です。途中、上田浦駅(熊本県芦北町)の前後や阿久根市内など海岸線の風景を楽しめるエリアもあります。
 
 純粋にJRのみを利用して九州一周するには、八代から内陸部を隼人まで抜ける肥薩線のルートがありましたが、2020年に八代〜吉松が豪雨で被災し不通に。代行バスはなく、復旧の見通しも立っていません。このため、熊本・鹿児島を在来線で移動する場合、現在は肥薩おれんじ鉄道を利用せざるを得ない状況です。

追加出費はいくらかかる?

 八代〜川内を全線通しで乗った場合、運賃は2670円。しかし「おれんじ18フリーきっぷ」という、当日有効の18きっぷを提示して買える一日乗車券があります。値段はなんと2100円。片道通し乗車だけで大きく元が取れます。

 一方で、「どうせ別途出費がかかるなら、圧倒的に速い新幹線を利用したい」という人がいるかもしれません。その場合、いくらの出費になるのでしょうか。

 新八代〜川内を自由席利用する場合は3610円。つまり、肥薩おれんじ鉄道で移動する場合に比べ、1510円プラスとなりますが、所要時間は2時間半がわずか30分に短縮。うまく乗り継ぎができれば、かなりの効率化が図れます。

 ちなみに新八代から鹿児島中央まで新幹線を利用した場合、自由席利用で5060円の出費となります。

 18きっぷを持っているのに在来線を使わないのはシャクかもしれませんが、その出費と時間短縮で、本数の少ない指宿枕崎線や日豊本線、肥薩線方面への接続がうまくいく場合があります。旅行全体を見渡して、積極的に「ワープ」を図るのも一手でしょう。