期待を裏切らず予測不能。

さまざまなバランスを取りながらスタートした金曜ドラマ『石子と羽男―そんなコトで訴えます?―』(TBS系、毎週金曜よる10時)。1週間放送が延期となりファンが待ちわびるなかスタートした先週の初回、視聴者からは「先が読めないー!」「見入ってしまった」「軽快なテンポでストーリーが展開されて時間あっという間」「石子と羽男のナイスバディ感最高な予感」「今期ドラマの中で断トツでおもしろい」などの声が上がり、上々の滑り出しと言えるだろう。


本作は、NHK連続テレビ小説『とと姉ちゃん』などを執筆した西田征史のオリジナル脚本。有村架純演じる“石子”と中村倫也演じる“羽男”の“石羽コンビ”が身近に潜む法律トラブルに挑む異色のリーガル・エンターテインメント。

初回放送前の予告映像では、赤楚衛二演じる依頼人・大庭蒼生が「カフェでスマホを充電していたら訴えられたんです」と石羽コンビのもとに相談に訪れていたが、この依頼人とカフェ側との問題は早々に解決。しかし大庭がそのカフェに訪れていたのには理由があり…そこから物語は二転三転。「そう来た?!」「何がホント?」「うわー、そういうことだったのか。。こわっ。」「どんでん返しに震える…」と先の読めない展開にワクワクし、気付けばRADWIMPSの主題歌『人間ごっこ』が深く心に響いている。有村架純、中村倫也をはじめとしてゲストに至るまで、キャストの“この役ぴったり”“こんな役見たかった”“こんな掛け合い最高”が散らばっている。『MIU404』や『最愛』を手掛ける新井順子プロデュース×塚原あゆ子演出の妙も大いに感じた初回。“バランス”をキーワードに振り返りながら、今夜の第2話に備えたい。(以下、第1話のネタバレ含む)


まずは、石羽コンビのバランス。

東大卒で司法試験に4回落ちたパラリーガル・石子。

「〜と存じます」と丁寧な言葉遣いでまくし立てたかと思えば、羽男のイタリア語の決め台詞をマネして「ちょっとごめんなさい ないです」と嘲笑気味にバッサリ。でも何かと羽男をフォローし、最後は一歩引いて、あくまで裏方でいようとする。石子のセリフは法律用語も交えながらかなりの速さなのだが、そんな中に、その言い方反則!と思わず言いたくなるような「えっ? 何〜?」の可愛さ(ぜひ映像で!)や、ほろ酔い石子の色気が急に発動するのだから楽しい。そしてコメディシーンが多いドラマの中で、届けるべきメッセージは、しっかりと響かせる。会社内でのパワハラについて声を上げなかったことに対して「それは違いますよ」と話す石子の表情や声の奥には、雨でびしょびしょになった人にさしかける傘のような温かさも感じさせた。


羽男は、高卒で司法試験に一発で合格した弁護士。

中村倫也のいい声で「Sono content」とキメても、石子に「型破りな天才弁護士を演じていませんか?」とブランディングを見破られる。写真のように見た物を記憶できるフォトグラフィックメモリーの持ち主だが、想定外のことが起こると思考停止。手は震え、途端に余裕がなくなる。そしてすぐに“諦める”という選択をしようとする。ではダメダメな男なのかというとそうでもなく、問題解決の糸口を見つけていったのも羽男。しかも“オフ”な姿まで供給。重要なことに気付いてペットボトルの蓋がついたまま飲もうとしてしまう細かい可愛さ付きだ。何かを抱えている役は中村の真骨頂。コミカルな掛け合いをしていてもどこか目が切実だったりするから面白い。しかも「いま金八のモノマネしたよね?」とSNSもザワついた小ネタ(?)まであって縦横無尽。そしてラストの超高速長ゼリフは圧巻。「どれだけの肺活量があればあんな一気に喋れるんだ」「中村倫也の台本やばそう」と視聴者からも感嘆の声が上がった。


そんな二人がテンポの良い掛け合いを見せる。

途中、石子(回想)と羽男(現在)のセリフが切り替わりながらカフェのマスターへの説得を行う場面があったが、二人の演技のテンションの一致とそれを繋いだ“間”の心地よさがあった。セリフの量はとにかく膨大だし、難しい法律用語も出てくるのに決して重くならない。会話のリズム、コメディとシリアスの緩急のバランスも抜群だ。

屋上の画やカーチェイスなど『MIU404』を彷彿とさせるシーンもありドラマファンの心をくすぐりながら、回想シーンの見せ方は斬新。画面下には現在の事務所、画面上には再現シーンが逆さまに映し出され、それを回転させながら見せていくという演出も。「再現シーンめちゃくちゃカッコ良い」「見せ方がすごく面白い」「細かい演出も好き」という声も多く、新しさでも心をつかむ。冒頭の舞台のようなシーンも含め、第2話以降どんな見せ方をしてくれるのかという期待もますます高まった。


赤楚演じる大庭は、真面目で誠実。しかし、別れ際に電車で残した表情には影が…。その余韻がその後の展開を予測不能にする。第1話ゲストの小関裕太とともに、抗っている二人の苦しさや、声を上げられた正しさを二人が想像させる余地を作りながら熱演し、最後に主題歌がすくいあげていった。歌詞がすっと映像にハマるとそのまま心にやさしく流れ込んでくる。やはり、主題歌の存在は大きい。同時に、パワハラをしていた上司に羽男は「あなたはあなたで声を上げればいいじゃないですか!」と言い放つ。法の下に平等。声を上げる権利は上司の方にもある。身近にある問題から、社会に潜む問題へ。そこに手を差し伸べる法律。まずは声をあげること。会話もシーンもてんこ盛りでストーリーは二転三転するけれど、メッセージは一貫しているように感じた初回だった。


さて今夜の第2話は「息子が無断でゲームに課金してしまった」という母親の声。ワケアリ親子のトラブルに石子と羽男が挑む。

依頼人役は木村佳乃。そして、声優の宮野真守が羽男のライバル的立ち位置でゲスト出演する。初回ラストには、赤楚演じる大庭が石子と羽男のいる潮法律事務所でアルバイトをすることになったようだが、この先どんな役割を果たしていくのか。


第2話あらすじ

大型ショッピングモールで無料法律相談会を開いていた石子(有村架純)と羽男(中村倫也)のもとに、一組の親子がやってきた。

母・相田瑛子(木村佳乃)は、小学生の息子・孝多(小林優仁)が内緒でスマホゲームに課金して、ゲーム会社から高額請求され困っていた。

返金してもらいたいと相談された羽男らはゲーム運営会社の顧問弁護士を訪ねるが、担当弁護士は羽男の元同僚の丹澤文彦(宮野真守)だった。

羽男は「未成年者取消権」を主張するが、事態は思わぬ方向へ進んでいくことに…!



■金曜ドラマ『石子と羽男ーそんなコトで訴えます?ー』
毎週金曜よる10:00〜10:54

(C)TBS