早くもカレーの季節到来。スパイス料理でパワーをつけて、猛暑に備えるべし !

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連載「今週のカレーとスパイス」でお馴染み“カレーおじさん \(^o^)/”が、ひと月に食べたカレーとスパイス料理を振り返る月イチ企画。2022年6月は、早くもやってきたカレーの季節にぴったりな東京&奈良の注目5店をお届け!

【カレーおじさん\(^o^)/の今月のカレーとスパイス】2022年6月を振り返る

まだ6月だというのにとにかく暑い! カレーの季節がいつもより早く訪れたようです。今月は高円寺で曜日限定営業の間借りカレー店を2店舗、王子駅前の立ち飲みおでんのお店で見つけたネパールカレー、古くから今まで「知る人ぞ知る隠れた名店」という立ち位置に居続けるお店、奈良で絢爛豪華なミールスを提供する大注目店、以上5店舗のご紹介です。暑い季節にぴったりなアイスクリームやアイスチャイの情報も含まれていますよ。スパイス料理をしっかり食べて、暑さに負けずにカレーの季節を楽しんでいきましょう!

【第1週のカレーとスパイス】日曜日は高円寺でハシゴカレーはいかが? 今から知っておきたい、注目の間借りカレー2店「カレーとアイスの店 かりす」と「カナ マカナン」

東京における間借りカレーの激戦区と言えば数年前は新宿ゴールデン街でしたが、今となっては高円寺がその代表的な街と言えるのではないでしょうか。以前から高円寺で間借りカレーを営むお店はありましたが、ここ数年で何倍にも増えており、曜日限定営業のお店も少なからずあります。今回はそんな中から、日曜限定のおすすめ店を2つご紹介したいと思います。

まず最初は「カレーとアイスの店 かりす」。以前は笹塚で営業していたのですが、2022年2月に新高円寺駅近くに移転しました。高円寺駅からも、パル商店街を抜け、ルック商店街を歩いて行けば十分に徒歩圏内。バーの間借りで日曜ランチタイムのみの営業です。

「2種盛り」

メニューは週替わりで、この日のカレーはナスとひよこ豆のトマトキーマ、ココナッツフィッシュカレーの2種。せっかくですから「2種盛り」1,300円に「新ごぼうのアチャール」100円をつけてオーダー。

かりすのシェフは新代田の人気店「キッチンアンドカリー」でも働いている方で、以前はアンドカリー的な素材を大事にした優しいスパイスカレーという印象だったのですが、今回食べてみて感じたのはより現地料理に近づきつつ個性もあるものに進化しているということ。

副菜もにんじんのポリヤル、ジャガイモとニンニクの芽のサブジ、ミントのチャトニと、どれもインド的。しかもすべてがおいしい。以前も十分おいしかったのですが、より輪郭がはっきりと際立ち、おいしさのレベルも確実に上がりました。素晴らしい! 新ごぼうのアチャールも食感が非常に良く、修行先のアンドカリーの特徴でもある野菜をおいしく食べられるカレーという雰囲気を受け継いでいるのも良いです。

「台湾パインのココナッツアイス」

せっかくカレーとアイスのお店ですから、デザートに「台湾パインのココナッツアイス」400円も。こちらはココナッツの自然な甘みをいかしたアイスの上にココナッツファインをローストしたものがのり、香ばしくて良いです。隠し味にほんのり塩も使っていて、より甘みを深く感じることができました。

これからの季節はカレーもアイスもよりおいしく感じる季節なので、さらに盛り上がっていくことでしょう。既に人気店なので予約でいっぱいになることもありますから、お店のSNSをチェックして予約した上で行くことをおすすめします。

続いてご紹介するのは「カナマカナン」。こちらは大学生でありながら様々な場所やイベントで間借りカレー活動をしてきたシェフが、遂に屋号をカナマカナンと決めてスタートしたお店。高円寺北口の個性的な居酒屋の日曜ランチ間借り営業です。

カナマカナンの料理はスパイスカレーと言ってもセンスに頼った独創的なものではなく、あくまでインドをはじめアジア各国の現地料理に対するリスペクトが根底にあり、それをアレンジしたものがカレーになっているという印象です。

「無水サンバルビーフプレート」

今回いただいたのは「無水サンバルビーフプレート」1,200円。サンバルとは南インド料理における味噌汁的な立ち位置の野菜カレー、の名前でもあるのですがこの場合はそれではなく、インドネシアの辛味調味料のこと。英字で書くと綴りが違うのですが、日本語の発音だと同じになってしまうので勘違いされることの多い料理です。

というわけでこちらの料理はインドネシアのサンバル的スパイス使いをカレーの調理工程の中に落とし込んだオリジナル。繊維状にホロホロになったドライなビーフはしっかりと辛味と香りのあるスパイス感でご飯との相性が抜群! カナマカナンのシェフの修業先でもある八丁堀の「ジャパニーズスパイスカリー ワッカ」の無水チキンをヒントに作られたカレーなのですが、それをそのまま出すのではなく一工夫も二工夫も加えて自分のものにしているというのが素晴らしいです。

チキンカレーと魚介カレーの「カレープレート ダブル」1,200円

レギュラーのチキンカレーと魚介カレーも時期によって内容が変わります。この日のチキンはよりココナッツ感が強いもので、魚介はアサリのカレーなのですが南インドのラッサム的な仕上がりで以前食べたときとかなり違い、どちらも面白く、おいしいです。

東京に間借りカレー店も増えましたが、その中でも上位のおいしさの2店舗だと感じています。どちらのお店のシェフも普段は名店で働きながら、週末に間借り営業をしているという共通点もあります。そしてそれぞれの師匠の教えをしっかりと受け継ぎつつ、自分ならではのオリジナルを生み出せているのが素晴らしいです。どちらのシェフもいずれは独立を考えているということですので、それを楽しみにしつつ、進化の過程を、現在営業している店舗で確認していくというのも間借りカレーの楽しみ方のひとつです。

気になった方は日曜日、高円寺で間借りカレーはしごをしてみてはいかがでしょうか?

※価格はすべて税込


<店舗情報>
◆カレーとアイスの店 かりす
住所 : 東京都杉並区高円寺南2-20-8 BAR PROSPER
TEL : 不明の為情報お待ちしております

<店舗情報>
◆カナ マカナン
住所 : 東京都杉並区高円寺北3-22-12 でんでん串
TEL : 不明の為情報お待ちしております

【第2週のカレーとスパイス】カレーボールって知ってる? おでんとカレーもおいしい北区・王子のせんべろスポット「平澤かまぼこ 王子駅前店」

カレーボールというおでん種をご存じでしょうか? 東京でも各地で存在するわけではなく、体感的には23区の北東部でよく見かけるものの、他ではなかなか無いおでんです。今回ご紹介するお店はそのカレーボールはもちろん、意外なカレーもある「平澤かまぼこ 王子駅前店」です。

こちらは北区神谷の練り物店が開いた、おでんメインの立ち飲み店。おなじみのものが並ぶおでんメニューに、確かにあります「カレーボール」200円の文字が。

カレーボールとは球形の練り物にカレー味がついたもの。昆布と煮干しでとった透明度の高いだしに3つ入って出てきました。食べてみればまず最初にカレーパウダーが香り、その後に玉ねぎの甘みが追いかけてきて、白身魚のすり身に吸い込まれただし汁のうま味がそれらすべてを包みます。しみじみとおいしい。

「カレーボール」

僕は東京出身ですが、地元にはカレーボールがありませんでした。大人になってから様々な場所で飲むようになり、北区のお店でカレーボールと出合ったわけですが、ボール自体は小さい頃から食べてきており、そしてカレーも小さい頃から好きでしたから、それらが合わさって郷愁に近いものも感じます。

「チキンカレー」

それだけではありません。ここに来たら「チキンカレー」350円を食べないわけにはいきません。チキンカレー(つまみ)と書かれている通り、ご飯はつかないおつまみスタイルのカレーです。お店の雰囲気からして昔ながらのカレールウを想像されがちなのですが、出てきたものはインド亜大陸の現地料理のようなルックス。食べてみるとインドというよりはネパールやバングラデシュの料理のような素朴で滋味深い味わいであり、シンプルなスパイス使いで鶏肉のおいしさが引き立てられているようなカレーです。

お顔立ちもネパール系の方に多いタイプに見えたので「これはネパールのカレーですか?」と聞いてみると「そうです」と。やはりそうかと思いつつも驚きました。まさかおでんのお店でネパールカレーをいただけるとは。実はこちらのお店、ネパール出身の方が店主をつとめているのです。

「源氏巻」

他にもチーズとソーセージを蒲鉾で巻いたというオリジナルの「源氏巻」400円、甘みと深いうま味に紅生姜の酸味のコントラストが良い「国産牛の牛すじ」350円もいただきましたがどれも良いおつまみでお酒が進んでしまいました。

「国産牛の牛すじ」

元々は気さくなおばあちゃん女将が切り盛りしていたお店だそうですが、引退された後に長年つとめていたネパール出身の現店主がお店を引き継いだとのこと。働きぶりが真面目だったからこそでしょう。言葉少なですが丁寧な仕事が感じられるおでんとカレーとその他のおつまみ。せんべろできる価格も魅力的。駅前でアクセスも良いです。

昼飲みといえば近くの赤羽が聖地ですが、その前に王子で降りてまずここから始めるのもおすすめですよ。


<店舗情報>
◆平澤かまぼこ 王子駅前店
住所 : 東京都北区岸町1-1-10 NUビル 1F
TEL : 03-6884-9546

【第3週のカレーとスパイス】まるで銀座のオアシス。胃袋にも財布にも優しい、名物ママの絶品カレー「ブラン亭」

昔から大好きなお店があります。銀座のコリドー街の古びたビルの地下にあった頃に出合い、その場所で長年営業していたものの建物が取り壊しとなり銀座八丁目に移転。しかしそのビルも取り壊しとなり、再度コリドー街のビルの4階に移転してきて今に至る「ブラン亭」というお店です。

店内に入ってみるとスナックのような雰囲気。「あら、いらっしゃい!」と優しい笑顔でママさんが迎えてくれました。カレーのお店なのですが、コリドー街の地下にあった頃からスナックのママさんのようにおしゃべり上手で楽しくて優しくて、その人柄にもお客さんが付いているのだろうなと思える方なのです。

「今日はおまかせしか無いんだけど、それで良いかしら?」と。もちろんです。ここのカレーはすべてがおいしいことを知っていますから。思えば前回来たのはコロナ禍に突入する直前の2019年のことでしたか。

基本のメニューはチキン、ポーク、キーマ、豆。そして現店舗に移転してから定番化した、しらす。どのカレーも食べたことがあるのですが、程よくスパイシーで程よく優しいおいしさ。僕はママの腕を信頼しきっているのです。「トッピングの目玉焼きのせてくださいね!」とだけ注文。ここのカレーと目玉焼きの相性の良さを思い出しながら待ちました。

出てきたカレーは実に豪華! 「今日の内容は何ですか?」と聞くと「今日はね、しらすとポークが無いの。そのかわりにビーフがあるのでそれと、野菜もつけました」と。

「おまかせ日替わりカレー」

写真の右上から時計回りに、キーマ、豆、野菜、ビーフ、チキンの順。野菜はカレーというよりはトマト煮込みでしたが、ラタトゥイユのような味付けでカレーの付け合わせとして非常に面白く、相性も良いものでした。

定番カレーはどれも最高! ママはインドにも縁があるそうで昔はインドから直送のスパイスを使用していたとのことですが、インド料理そのものではなく日本人が作ったからこその日本人受けする優しい味わいがあります。言うなればこれはスパイスカレーという言葉が生まれる前から存在するオールドスクールスパイスカレー。昔よく見かけたインド風カリー的な料理であり、その中でも突出したレベルのおいしさだと言えるでしょう。

すべてがおいしい中で特に今回心を撃ちぬかれたのはビーフ。肉のうま味とスパイスが絶妙に合わさっていて、オンリーワンのブラン亭の味なのです。

途中からフライドオニオンやピクルスを合わせて食べれば味変にもなり、おいしさが加速します。夢中になって一気に平らげた後は「はい、ほうじ茶ね」とサービスが。

その後はママと久しぶりの会話を楽しみました。お店が忙しい日はなかなかお話もできないのですが、この日はたまたま他にお客さんがいなかったので。以前はママのインド旅行時の話や、僕の仕事の話などで盛り上がり、今回はアメリカのギャングスタラッパーであるスヌープ・ドッグの話で盛り上がるという話の振り幅。とにかく話し上手で引き込まれます。

気づいたら仕事の時間でお会計。「はい。1,100円ね!」って、いやいやいやこれで1,100円は安すぎますって! しかも銀座ですよ!「だって、おまかせの日替りカレーは1,000円なのよ。でも最近玉ねぎの値段が上がっちゃって大変なの! 他のカレー屋さんはどうしてるの?」と。他のお店も価格改定を余儀なくされていますね。

そもそもカレーとラーメンは原材料や手間暇を考えると、他の料理と比べて安すぎることが多い料理。しかし思い返してみると、確かにブラン亭のカレーは昔から安いんです。そしておいしいんです。でも、場所がわかりにくかったり移転を繰り返したりしているせいもあってか、マニアが押し寄せるわけでもない、知る人ぞ知るという立ち位置に居続けている稀有なお店です。

「ポーク&しらすカレー」900円に「目玉焼き」100円をトッピング

おいしいカレーで体が癒やされ、ママのトークで心が癒やされる、銀座のオアシス。どうやら今の場所も移転予定があるとのことですので、行けるうちに行っておくべき名店です。僕もまた行かなくちゃ!


<店舗情報>
◆ブラン亭
住所 : 東京都中央区銀座7-2-14 第26ポールスタービル 4F
TEL : 03-3571-0972

【第4週のカレーとスパイス】近府県から通うファン多し! 並んででも食べたい、奈良で注目の南インド料理店「toi印食店」

スパイスカレー流行のきっかけとなった大阪は今も多くのお店が行列をなし、さらなる新店舗が生まれ続けています。大阪には多くのカレーマニアが存在するのですが、大阪カレーマニアの間で話題となり、連日多くのお客さんが集まるお店が奈良にあります。今回は地元客はもちろん、大阪から通う人も多いという注目のお店をご紹介しましょう。近鉄奈良駅近くにある「toi印食店」です。

日本人シェフによる南インド料理のお店なのですが、おしゃれなカフェのようでもあり、現地にある食堂のようでもあるという絶妙な雰囲気。

メニューはカレーの種類と数を選べるミールスという南インド定番の定食がメイン。「Curry全種+本日のおかず」2,300円をいただきました。

「Curry全種+本日のおかず」

見た目からして絢爛豪華なミールス! この日のカレーはチキンマサラ、ダルフィッシュ、マトンクルマ、サンバルの4種。これにダル(豆スープ)やワダ(豆でできた南インドの甘くないドーナツ)などがつきます。

チキンマサラはトマトの程よい酸味とうま味が華やかな逸品。マトンクルマは骨と皮つきの羊肉にハーブを使ったニルギリと呼ばれるタイプのグレイビーがマニア心をくすぐるカレー。

ダルフィッシュ含めノンべジのカレーもおいしいのですが、僕がそれ以上に気に入ったのは肉や魚を使わないダルとサンバル。インド現地でもミールスがおいしいと評判のお店に行くと野菜のみだったりすることも少なからずあり、ミールスとは基本的に野菜料理だと思うことが多いのですが、こちらのお店もまさにそうで肉がなくとも十分に楽しめるミールスなのです。

ワダがまた非常においしい。ふわふわとサクサクが共存。半分はチャトニをつけて食べ、半分はサンバルに投入してサンバルワダという南インドの定番料理のようにして食べ、一度で二度おいしいです。

現地料理としてのミールスは、ひとつひとつの料理はシンプルで素朴ながら混ぜていくことで完成するおいしさという方向性が多いのですが、こちらのミールスは派手でおいしいのです。ひとつひとつが個性あって印象に残る味わいであり、混ぜてもそれがぶつかることがないバランス感。ミールス初心者にとってはこういうものの方が理解しやすいでしょう。そして様々なミールスを食べている方にとっても、この野菜のおいしさには感動するはずです。それに肉や魚の存在感もあるのですから満足度が高すぎる一皿が完成しています。

シェフは北インド料理、南インド料理、どちらのお店でも腕を振るってきた経験がある方だからこそのミールスです。言うなれば北インドで食べる南インド料理のような魅力。そこに日本人ならではの感覚も入っているという面白さ。これは確かに大阪から通う方が多いのもうなずけます。

「多くの方にもっと日本人が作るインド料理の可能性を伝えたいんです。インド料理の知恵を借りて地元野菜のおいしさに気づいてもらえたりするとうれしいですし、インド食文化の楽しさを伝えていくことを自己表現のひとつとして発信していけたらと思っています」とシェフは語ってくれました。

「アイスチャイ」

食後にミニサイズの「アイスチャイ」200円も。スッキリとした飲み口のチャイ。絢爛豪華なミールスの後を爽やかにまとめてくれて、これまた素晴らしい。期待して行ったのですが、その期待を超えるクオリティに感動しました。

お店は大人気で記帳制です。まず最初に名前を書き、そこから並んで待ちましょう。わざわざ行く価値も、並ぶ価値もある、今の奈良のカレーを代表するお店のひとつだと言えるでしょう。


<店舗情報>
◆toi印食店
住所 : 奈良県奈良市花芝町30-3
TEL : 不明の為情報お待ちしております

※価格はすべて税込です。

※外出される際は人混みの多い場所は避け、各自治体の情報をご参照の上、感染症対策を実施し十分にご留意ください。

※営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、最新の情報はお店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。

文・写真:カレーおじさん\(^o^)/

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