流れが少し変わってきたのか。
 それとも、単なる偶然なのか。
 6月19日までに全日程の半分を消化したJ1で、監督交代が行なわれたのはヴィッセル神戸と清水エスパルスだ。

 シーズン開幕から下位に低迷する神戸は、三浦淳寛監督との契約を解除し、ミゲル・アンヘル・ロティーナを招へいした。J2の東京ヴェルディで2年連続プレーオフ進出の成果をあげ、J1のセレッソ大阪と清水エスパルスを指揮した彼は、日本のサッカーを理解している。「計算できる指導者」だ。

 清水は平岡宏章監督との契約を5月末で解除し、ブラジル人のゼ・リカルド監督を迎えている。J1残留争いの渦中にあり、シーズン途中の就任を考えると、ロティーナのように計算の立つ指導者を選びたくなるものだ。監督代行として指揮を執った篠田善之ヘッドコーチに任せる選択肢もあったはずだが、クラブはより抜本的な変化を望んだのだろう。これまで日本で采配をふるったことのないゼ・リカルドに、チームを託すことにした。

 J2では4チームが監督交代に踏み切っている。
 最初の交代劇は大宮アルディージャで、霜田正浩監督が解任され、相馬直樹監督が着任した。50歳の指揮官は当時JFLのFC町田ゼルビアから監督のキャリアをスタートさせ、現役時代を過ごした川崎フロンターレを経て再び町田で6シーズンを過ごし、21年はキャリアの全盛期を過ごした鹿島アントラーズでコーチと監督を務めた。

 昨シーズンの鹿島では、4月にザーゴ監督の後任としてコーチから監督に昇格した。2勝2分4敗で14位に沈んでいたチームを、最終的に4位へ押し上げている。シーズン途中からの監督就任も経験済みだ。大宮が相馬監督に白羽の矢を立てたのは、様々な意味で「計算できる」ことが理由になっている。

 前半戦終了後に堀孝史監督が退任した東京ヴェルディは、城福浩監督を後任に据えた。FC東京、ヴァンフォーレ甲府、サンフレッチェ広島で10年以上の監督経験を持つ。J1を指揮する印象が強いが、12年にJ2の甲府でJ1昇格を果たしてもいる。

 今シーズンのJ2は中位が混戦だ。東京Vは22節終了時点で11位だが、J1参入プレーオフ圏内の6位とは勝点4差である。後半戦の戦い次第で、プレーオフ出場は可能だ。城福監督の就任は「計算できる」ものでありつつも、「J1昇格」へのクラブの本気度を示すものだったと言える。
現在5位のV・ファーレン長崎も、前半終了時点で監督を替えた。松田浩監督からブラジル人のファビオ・カリーレ監督へ指揮権を移した。

 清水のゼ・ロベルト監督と同じように、カリーレ監督もJリーグ初挑戦だ。クラブ史上初の外国人監督でもある。

 22節終了時点の長崎は勝点34で、J1自動昇格圏の1位アルビレックス新潟とは勝点11差、2位の横浜FCとは勝点9差となっている。ここから先の戦いがきわめて重要となるタイミングで、カリーレ監督にチームを託したのは、「あと一歩の壁」を打ち破りたいからだろう。

 長崎は18年に手倉森誠監督を迎えたが、同年は12位、翌20年は3位に終わった。吉田孝行監督のもとでスタートした21年は開幕ダッシュに失敗し、松田監督のもとで巻き返しをはかったが4位にとどまった。

 松田監督のもとで戦った今シーズン前半戦は、9勝4分8敗の5位で終えている。期待どおりではないが、J1昇格圏内とはこの時点で勝点9差だった。続投させることのメリットとデメリットを精査したうえで、クラブは監督交代に踏み切ったと考えられる。

 J2で最下位に沈むFC琉球は、スペイン人指揮官に再建を委ねた。バレンシアでヘッドコーチを務めていたナチョ・フェルナンデスと、契約を結んだのである。22日には就任会見が行なわれた。