東京Vや長崎に比べると、琉球の状況はひっ迫している。17節から直近の22節まで、6試合勝利をつかんでいない。20節から22節までは3連敗だ。

 ナチョ新監督が来日する前に行なわれた22節は、倉貫一毅ヘッドコーチが暫定的に指揮した。1試合も無駄にできない立場にありながら、就任まで時間がかかる外国人監督を選んだのは、琉球がJ2残留という短期的な結果を最優先に考えていないからだろう。

 どんな形でもいいから残留を、と考えるのなら、J2を知る日本人監督を呼ぶほうが効率的だ。フリーの適任者もいる。その状況でナチョ・フェルナンデスとともに歩むとの決断は、クラブに新しい文化を根付かせたいからだと想像する。

 J1、J2を問わずに、クラブによってターゲットは異なる。監督選びは予算規模にも関わってくるが、かつては経験や実績を重視した人選が多く、ひとりの監督が他クラブへ横滑りすることが多かった。

 J2で実績を残した外国人監督が、J1へ引き抜かれるケースも増えている。ロティーナのJリーグでのルーツは、前述したようにJ2の東京Vだ。徳島ヴォルティスをJ1優勝へ導いたリカルド・ロドリゲスは浦和へ、アルビレックス新潟にポジショナルプレーを植え付けたアルベルはFC東京へ、それぞれ迎えられている。

 強化を担当する立場で考えれば、すでに実績のある監督にチームを任せたほうが安心だ。しかし、監督の顔触れが大きく変わらないリーグは、客観的に見て新鮮味に乏しく、興味が湧きにくい。パッケージが変わっただけで、中身の変わらない商品が陳列されているような印象がぬぐえない。
それだけに、清水や長崎、琉球のチャレンジは興味深い。とりわけ、残留というミッションに新監督とともに挑む清水と琉球は、Jリーグの「監督選び」への問題提起となるかもしれない。