ラジオの仕事と「理想」と「現実」 - 西原健太郎

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※この記事は2017年03月31日にBLOGOSで公開されたものです

学生は春休みのシーズンだったりする今日この頃。みなさんいかがお過ごしでしょうか?私はというと、いよいよ目前に迫った、新番組の準備が大詰めを迎えています。ここで一つ宣伝を…。4月9日(日)11時より、文化放送で『A&Gリクエストアワー 阿澄佳奈のキミまち!』という新ワイドがスタートします。私はこの番組に、AP(アシスタントプロデューサー)という役割で参加しております。ぜひお聴きいただけると嬉しいです。

ところでこの時期といえば、就職活動が本格的に始まる時期だったりします。そしてみなさんの中には、「ラジオ業界に就職したい」、「ラジオに関わる仕事がしたい」と思っている方もいるのではないでしょうか?そこで今回は、ラジオの仕事と理想と現実について、アドバイスも兼ねて書いてみようかと思います。

ラジオ業界に就職するには?

一口に「ラジオに関わる仕事がしたい」といっても、ラジオに関わる仕事は、業務内容によっていくつかに分かれます。一般的なラジオ番組は、『ディレクター』と『放送作家』、そして『プロデューサー』の3人で制作されていることがほとんどです。ディレクターは番組を統括し、放送作家は企画を考えて台本を書き、プロデューサーは予算とスケジュールを管理します。

プロデューサーは放送局の社員が担当していることが多く、プロデューサーになりたいのであれば、放送局の社員を目指せば良いでしょう。ディレクターは、収録・編集など、番組に関わる全ての責任を持つ仕事です。

決まった時間以内に収録を行い、決められた納期までに番組を組み立てます。音の調整や、トークの編集など、聴きやすい番組に仕上げるセンスが必要な仕事です。ディレクターになりたい人は、専門学校などに行き技術を学び、制作会社の入社試験を受けると良いでしょう。

しかし、プロデューサーやディレクターと違い、放送作家になる方法は、これといった答えが無いのが現状です。この仕事をしていると、「放送作家になるのが夢です!」という人によく出会います。

私自身は、放送作家になりたくてこの道を志したのでは無いので、そんな人に出会うと申し訳ない気持ちになったりするのですが、放送作家になりたい!と思っている人は、放送作家という仕事に、どんなイメージを持たれているのでしょうか…?『時間が不規則そう』とか『忙しそう』とかでしょうか…?それとも、『楽しそう』『華やかそう』でしょうか…?

まず、『時間が不規則』という表現は、正確ではありません。ラジオ番組の収録は、隔週1回、決まった時間に行われるので、収録だけ考えたら規則正しい生活が送れます。しかし、ラジオの放送作家は収録の前に、番組の台本を書かなくてはいけません。

台本も決められた時間に書けば良いのですが、難易度の高い台本になると、どうしても時間がかかってしまいます。そうすると、寝る時間が不規則になったりもします。事実、今このコラムは、台本作業の合間、真夜中に書いています。

続いて、『忙しそう』ですが、これは作家それぞれのキャパによります。週に何十本も抱えている作家は確かに忙しいですが、週に数本しか抱えていない作家でも、1つの台本作成に時間がかかると、結果として忙しくなってしまいます。
ただ、他の業種と違い、放送作家の仕事のスケジュールは自分自身で調整ができるので、忙しくなりそうなら事前に他の仕事を前倒ししたりして、調整することができます。

ここまではネガティブなことばかり書きましたが、もちろん『楽しい』瞬間もあります。自分が考えた演出が収録でバッチリ決まり、出来上がった番組が多くのリスナーを楽しませ、その反響が番組に届いた時は、放送作家として「番組をやっていてよかったなぁ」と思います。

また、企画を考える時はリスナーの目線に立って考えるので、若いリスナーに向けた番組の場合は、子供のような感性で企画を考えます。それは子供の頃、友達と時間を忘れて遊んだ時の感覚に似ています。遊んでいるかのように企画を考える時間は、とてもとても楽しいです。

タレントさんと付き合え…ません。

そして最後に、『華やかさ』についてですが…みなさんの期待を裏切って申し訳ないですが、放送作家の仕事は、華やかではありません。外見が派手な放送作家は多いですが、放送作家の仕事自体は、とても地味です。台本は基本一人で書きますし、収録現場はタレントさんがいて華やかそうに見えますが、それはあくまでも出来上がった番組内での話。収録自体は淡々と進みます。

また、たまに「放送作家は、タレントさんと仲良くなれていいね」みたいな事を言われたりしますが、これも誤りです。もちろん現場では仲良くしますが、タレントさんは芸能人であり、我々はスタッフです。そこには越えられない、越えてはいけない境界線があるのです。いないと思いますが、「タレントと付き合いたい、結婚したいから放送作家になりたい」と考えている人は、残念ですが諦めてください。

以上、一部ではありますが、放送作家の仕事の現実を書いてみました。それでも「ラジオに関わる仕事がしたい!」「放送作家になりたい!」というなら、『人脈』を作って『入り口』を探しましょう。

企業の入社試験を受けても、放送作家にはなれません。放送作家になるための専門学校やスクールもありますが、そこで技術を身につけたとしても、最終的にものをいうのは、その人の『人脈』です。要は、『自分で動いて人との繋がりを作り、自分で放送作家になるための入り口をこじ開けるしかない』ということです。放送作家になりたいなら、まず行動を!

え?「どんな行動をすれば良いか」って?それを考えられないようでは、放送作家にはなれませんよ。放送作家は考えるのが仕事ですから。