※この記事は2015年05月22日にBLOGOSで公開されたものです

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21日、孤立・困窮状態にある少女たちの支援や、情報発信を行っている一般社団法人Colabo代表の仁藤夢乃氏が会見を行い、「JKビジネス」の背景や問題点、児童相談所の実態など、女子高生を取り巻く深刻な現状について訴えた。

多くの少女が客引き中にお客さんから買春や性交渉を持ちかけられたと話しています

仁藤氏:私たちは孤立・困窮状態にある10代の少女を支える活動を行っています。具体的には、夜の街を巡回し、終電前に家に帰らずにいる少女への声掛けや相談、十分に食事を取ることができていない少女やネグレクトされて育った少女への食事の提供、売春・人身取引・性暴力の被害に遭った少女たちの自助グループの運営、彼女たちを取り巻く実態を伝える活動を行っています。夜の街のスタディツアーなども開催しています。

東京を中心に活動を行っているんですが、相談は全国から寄せられていて、北海道から沖縄まで、少女たちと出会って関わっています。

昨年は1年間に84名の少女と出会いましたが、人身取引・性搾取の被害に遭った少女からの相談も多数ありました。JKビジネスに関わる少女が58名、個人売春をしている少女が23名、斡旋者の下で管理買春をしていた少女が17名、中には知的障害や発達障害の少女が狙われて搾取されているケースもありました。そういう少女たちが自傷行為や自殺未遂を行うというケースも後を絶ちません。

今日は、日本で今、深刻な問題になっているJKビジネスについてお伝えしたいと思います。 JKビジネスとは、女子高生の若さや未熟さや性を売りにした商売のことです。具体的には、個室マッサージ店として営業し性的なサービスをさせる「JKリフレ」や、無店舗型で自由にお散歩する「JKお散歩」などが存在しています。

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秋葉原では夜になるとこのような光景が見られます。2メートル間隔で女の子たちが客引きをしています。「お散歩に行きませんか」「ご飯食べませんか」と声を掛けています。こうした仕事をする少女80名以上関わっていますが、全ての少女が客引き中にお客さんから買春や性交渉を持ちかけられたと話しています。

警視庁の発表によると、2013年、JKビジネスは200店存在しており、101人の少女が保護や補導、逮捕されていますが、私は、東京だけで5,000人以上の少女が従事していると推計しています。

これについては、アメリカの国務省が2014年に発表した「人身取引報告書」でも指摘されています。日本では家出した少女が買春の被害に遭っていることや、「JKお散歩」が児童買春の温床になっていることが指摘されていますが、日本政府はこれに対する取り組みをほとんど行っていないのが現状です。この事については、「女子高生の裏社会」という本に詳しくまとめています。

JKビジネスには様々な業態があります。女子高生を撮影するものや、最近では、少女が鶴を折る様子をマジックミラー越しに見学して下着を観察する「JK折り鶴作業所」というお店の摘発がニュースになりましたが、他にも占いやカウンセリング、会話ができる「JKコミュニケーション」や、ゲームができるプレイルームなど、風営法が適用されないグレーゾーンで営業しており、摘発とのイタチごっことなっています。

これらは組織的に少女を巧みに勧誘しています。求人情報サイト、TwitterやLINEなどのSNS、街でスカウト行為を行っています。 「観光案内のアルバイト」という説明を見て面接に行ったら男性とデートする仕事だと言われ、学生証のコピー取られてしまったので仕方なく働くことになり、カラオケや漫画喫茶で客から性行為を強要されたと泣きながら話す少女や、街でスカウトを名乗る人物に仕事を紹介するとか、大手芸能プロが運営するカフェやスタジオだ言われて騙され、ポルノ動画を撮影された少女もいます。

高校生だけでなく小中学生が被害に遭うこともあるんですが、こうした声掛けの危険についてはの教育はされていません。一方でスカウトの側も、馴染みあるツールの中に入っていって、誘いこんでいます。そのため、特別な事情を抱える少女以外も入ってきています。

私は少女たちへの取材や話を聞く中で、働く少女たちは3つの層に分けられると考えています。「貧困層」「不安定層」「生活安定層」です。「生活安定層」は、両親との仲も問題なく、学校成績も良く、将来の夢もあって受験も控えているような普通の女子高生で、そういう少女たちも「JKリフレ」や「JKお散歩」に入り込んできています。

少女たちはLINEやカカオトーク、Twitterやツイキャス、「斉藤さん」という知らない人とテレビ電話がつながるようなアプリ、ブログやゲームのメッセージの機能を通じて仕事に誘われています。

また、業者は可愛いホームページを作っています。たとえば「もえナビ」というサイトにはJKビジネスの求人が東京だけで数百店舗掲載されていて、ここを経由して店にアクセスし、被害に遭った少女とも多数出会いました。

こうしたビジネスが困難を抱えていない少女にまで拡大していくと、貧困層の少女や、見た目やコミュニケーション、知能に困難のある少女は働けず、売春宿のようなところ、より痛い、汚い、臭い、性奴隷のように働かされ、人間以下の扱いを受けた少女とも出会っています。

この問題について語るときに、「需要と供給があるから無くならない」という人が多いです。私もそう思っていますが、その需要と供給はどこにあるのかを、みなさんに考えていただきたいです。

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この写真を見ると、一見少女が自ら男性を誘っているように見えますが、実際には少女たちの裏には、管理をする大人がいます。需要と供給というのは、売りたい大人と買いたい大人の間で成り立つものであり、そこで未熟な女子高生たち、とくに孤立・困窮した少女たちが商品化されているのが現状です。

日本では、少女の売春について、自己責任論や貞操観の問題として語られる事が多いです。しかし、実際には切迫した問題を背景にかかえている子も多く、三分の二の少女には家族からの性的虐待やネグレクト、貧困や精神的な不安が存在しています。 経済的に困窮し、給食費、修学旅行費を支払うために売春に足を踏み入れた中学生とも出会っています。

しかし、そうした少女たちが警察や児童相談所に"保護未満"として処理されてしまっている現状があります。児童相談所では、中高生が虐待の被害に遭っていても売春や家出などの問題行動がある場合はまず警察へ行って下さいとか、精神的に不安を抱えている場合は病院へと、たらい回しにされて十分な調査もなく家に帰されています。校長先生が虐待の通告をしても動かないことがあるということも聞いています。

また、子どもを保護するはずの児童相談所が一時保護所内で管理・強制し、虐待している実態もあり、少女たちにとって、保護が恐れるものとなっているもの場合があります。夜の街で声を掛けた時に、「保護じゃないよね?」と怯えた表情で言われることもあります。

児童相談所の職員は専門家ではないので青少年や虐待の知識がないスタッフがいないことも問題です。開所時間も8時半から17時までで、少女たちの実態と合っておらず、虐待などの危険を感じる夜間に彼女たちが駆け込める相談窓口が不足しています。

少女が児童相談所や警察に被害を訴える時、整然と理解できるように説明できなければ、話すら聴いてもらえないこともあります。私たちも同行支援を行っていますが、背景にある生活状況を改善する、という観点で関わってもらえるかどうかは、それぞれの機関で出会った職員の質によるという現状があります。

一方で、JKビジネスの経営者たちは、そうした支援よりも先に彼女たちに繋がって、衣食住の関係性を与えるような形で近づいています。帰るところがないなら寮を紹介する、お腹が空いているなら食事を提供する。悩みの相談に乗ったり、地方に片道のチケットを送って呼び寄せることもあります。さらに彼女たちに役割ややりがいを与えて利用する。受験に向けた学習支援、買い物帰りに休憩できる居場所の提供をしている店もあります。そのように、困っている少女に対し必要なものを具体的に与え、そこから取り込んでいくというやり方があります。

JKビジネスに関して、警察や行政はチラシ配り禁止する条例や、高校生がJKリフレなどで働くことを禁止する条例を作り、違反した児童を補導して取り締まるというやり方をしています。児童買春に関しても、警察はネットを通して買春する客を装い、おとり捜査で補導する"サイバー補導"を行っています。これらには一定の効果もありますが、ケアにつながる、背景への介入は行われていません。
私は、支援に繋がれず危険に行き着いた少女を発見し、補導した後のケアに繋ぐ"ケア付きの補導"を訴えたいです。

また、少女の補導だけでは需要と供給を絶つことにはつながりません。お店や少女を買春を持ちかける男性こそ摘発し、家族や職場に連絡するなどの対策を立てるべきと考えていますが、JKビジネスでは少女を買う側への対処は行われていません。愛知県ではJKビジネス全面禁止の条例を作りましたが、雇い主への罰則しか設けていません。

もちろん取り締まりでは少女たちが置かれた状況は変わりません。JKビジネスの店舗数を超えるほどの支援や、JKビジネスのスカウトを超えるほどの伴走支援者が求められています。"保護未満"とされる少女たちの受け皿がなければなりません。

日本では子どもの性の商品化に寛容な社会が出来てしまっています。児童ポルノも容認され、野放しになっています。こうした現状や認識を変えていかなければ、変わらないと思っています。

私も10年前、街をさまよう生活を行っていました。家庭が荒れ、高校を中退し、お金が無いときにはビルの屋上で寝たこともあります。JKビジネスに近い業者に勧誘され働いたこともあります。その業者は児童買春の斡旋をしていて、多くの友人たちが傷つくのを見てきました。

今この問題はさらに深刻化して、一般化・表面化しています。しかし日本にはこうした現状をエンタテインメントとして取り上げるメディアやバラエティ番組も多数存在しています。今日ご参加の皆さんが真摯に受け止め、報道してくださることを願っています。

私たちは、全ての少女が衣食住と関係性を持ち、困難を抱える少女が暴力を受けたり、搾取に行き着かなくて良い社会を目指しています。現在、こうした少女たちが夜間に駆け込める一時シェルターを計画して、寄付を集めています。この活動も応援していただけたら幸いです。

質疑応答

ー児童ポルノが野放しになっているということですが、私の出身の北米では、そうしたものはペドフィリアして見られ、関わった者は逮捕されます。どうして日本と北米では違うのでしょうか。

仁藤氏:日本では昔からそういうことをする子どもが悪い、女性が悪いという認識のもとで法整備が行われてきています。たとえば売春防止法も買春が悪いのではなく売春が悪い、というような考え方になっています。

また、女の子たちを性の対象として観ることもカルチャーとして受け入れられている現状がありましす、そういうことをポップな感じで紹介する海外メディアもあるので、やめてほしいなと思っています。
日本では子どもの人権の擁護意識が低いと思います。"子どもの夢を応援する"、"アイドルの見習い"という形で、児童ポルノのようなビデオが撮影され、売られています。子ども自身はそれがどういうものなのかわかっていません。
乳首が透けるような水着を着せられてお風呂に入れるような映像も、取り締まられずに普通に売っている現状があります。

ーJKビジネスに関わっている女の子のうち、何割くらいが18歳未満なのでしょうか。

仁藤氏:そういう統計は出ていません。メディアで取り上げられた日にはお店にいなかったりしますが、落ち着いたら戻ってくるということもあります。最近では規制が厳しくなってきたのでチラシ配りは18歳以上の子だったりしますが、お店の中では13歳、14歳の女の子を囲ってサービスをさせているということもあります。

ーむしろ恵まれた恵まれた家庭の子が入ってきている理由はなんでしょうか。

また、児童相談所に虐待されるというお話、女の子たちが保護されることを恐れるというお話がありましたが、具体的にはどういうことなのでしょうか。


仁藤氏:子どもたちの中では、大人が知る前に、馴染み深いツールや口コミで情報が入ってきます。今年も夏休み前になると、少女たちが目にするブログなどに「女子高生人気no1アルバイト」「今一番稼げるアルバイト」などという広告が載ることになると思います。ファミレスやマクドナルドでバイトをする感覚で働いてしまうのです。しかし、少女たちの間でこういう仕事の実態や危険性が知られていないし、両親も知りません。

次に児童相談所の保護の実態ですが、私が聞いた話ですと、保護されている子ども同士が目を合わせていけないというルールや、名前を教え合ってはいけないというルール、私語が禁止されているということもあるようです。シャワーが3日に1度しか浴びられなかった、歯磨きやトイレに行く時も職員の監視付きだったという話も聞きました。
1日6時間くらい勉強をさせられるんですけど、やっていないのがわかると怒鳴られたり、「内省」という名目で個室に隔離されて、ひたすら何時間もレポートをやらされるとか、反省分を欠かされるということもあるようです。そこで1~2週間、長いと2ヶ月暮らすこともあります。

また、親からの虐待があって保護されているのに、「何で保護されたかわかってるのか、落とし前つけろよ!」などと職員に怒鳴られたという話も聞きました。

正直、児童相談所は予算や人数、職員の研修が十分に足りていないですし、専門職ではないので虐待への理解が無いということもあると思います。また、その実態も表に上がってきていないのであまり問題にされていません。「鑑別所より嫌だった」という声を聞いたこともあります。ケアではなく管理になっているというような実態です。

ーデモの周りには多数の警察がいるが、秋葉原にはなぜ警察はいないのか。安倍政権に求めることは。

仁藤氏:一応パトロールが巡回していますが、客が交渉で成立したところで捕まるということではないんですね。JKビジネスは風営法や労働基準法に引っかからないギリギリのところでやっているので、警察も手を出せない、捕まえたくても捕まえられないんだというお話があります。

でも一方で、有名なお店が摘発されるという話があったときに、なぜかその日だけ、毎日出勤していた人気の女の子、上から3人休んでいるということもありました。

政府に求めることは、日本では人身売買について、先進国の中でも認識や取り組みが遅れています。これはアメリカや国連の報告書でも指摘されています。しかし、社会全体が、少女が悪い、家庭が悪い、個人の問題だ、学校は何しているんだと責任を押し付けています。JKビジネスの実態について政府に見向きもされていないと感じています。少女たちの背景に関わる、ケアをするという認識を安倍総理にも持っていただけたら嬉しいです。

そもそもJKビジネスが人身売買や児童買春につながるという認識がないことが問題で、政府が公開した人身取引の被害者数に彼女たちは1人も入っていませんし、政府や警察が出している性被害を受けた女の子の人数の中にも彼女たちのほとんどは入っていません。なぜなら彼女たちも自分が悪かった、自分に責任があると思っていたり、親にバレるのを恐れて被害を訴えることができずにいるからです。

・一般社団法人Colabo
・仁藤夢乃 公式ブログ|@colabo_yumeno

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