「今この作品が送り出されることには意義がある」~映画『日本のいちばん長い日』の完成報告会見 - BLOGOS編集部
※この記事は2015年05月20日にBLOGOSで公開されたものです
5月20日、都内のホテルで、映画『日本のいちばん長い日』完成報告記者会見が開かれ、本作に出演した役所広司、本木雅弘、松坂桃李、堤真一、監督の原田眞人が登壇した。映画「日本のいちばん長い日」は昭和史研究の第一人者・半藤一利氏の同名ノンフィクションの映画化。太平洋戦争末期、連合国がポツダム宣言の受諾を迫る中、降伏か本土決戦か、陸軍大臣・阿南惟幾、昭和天皇、首相・鈴木貫太郎を中心に、それぞれの決断への苦悩とその舞台裏を描く。
監督の原田眞人さんは冒頭のあいさつの中で「これまで阿南陸軍大臣の決断をテーマにした作品は二本(※注)あったが、いずれも昭和天皇を正面から描けていなかった。このことがずっと心に残っていた」と前置きした上で、「この原作は、昭和天皇の聖断と”日本の一番長い日”にいたるまでの4ヶ月間を描いた話であり、昭和天皇を前面に出さないと作品が成立しない」と語り、これまでの二作品とは違い、昭和天皇の存在を明確に描いた作品であることを強調した。
また、原田監督は、岡本喜八監督で一度映画化されている『日本のいちばん長い日』を改めて製作することについて「いつか(昭和天皇について)原作に近い形で映画化したいと考えていた」と語ると「アレクサンダー・ソクーロフ監督の『太陽 』が日本公開されたことがきっかけとなった。昭和天皇が前面に出てくる映画が日本で公開されることが許されるのだろうかという雰囲気があったが、公開されると何も事件は起こらなかった。これで覚悟ができた」と本格的に作品にとりかかることを決意するまでの経緯を明かした。
昭和天皇を演じた本木雅弘さんは「畏れ多さと、この役を本当に背負えるのか、という気持ちが消えないまま撮影が終わった。昭和天皇に強い印象を持つ方々には”本木のあそこは違う”などとお叱りの言葉をいただくのではないかと、それを思うといまでも唇が震える」と昭和天皇を演じたことへのプレッシャーを語った。役のオファーが来たときも「逃げ出したいような、逃したくないような」気持ちで受けるか迷っていたところ、義母である樹木希林に「あなたにこの役が来た意味がわかる気がする。原田監督は力のある監督だし、昭和天皇の役を演じられる機会はなかなかない。受けてみるべき」とオファーを受ける後押しを受けたことを明かした。
完成した作品をみた感想について原田監督は「時代がいま、どんどんきな臭くなってきている。秘密保護法案なども含めて、表現者が圧迫されるようになってきていて、当時に似たような姿勢がいまの時代の政治家によって生み出されている。そういう時代にこの作品が送り出されることはすごく意義がある」と語り、「一度、戦後50年で戦争映画はというのは下火になってしまった。そんな風に戦争の記憶が失われつつある戦後70年のいま、もう一度、何ゆえに昭和天皇が聖断を下さなければならなかったか考えてみようよとい気持ちがすごく出ている作品」と改めて作品に込めた思いを語った。
同作は8月8日より全国公開される。
※注「日本敗れず」阿部豊監督(1954年)、「日本のいちばん長い日」岡本喜八監督(1967年)
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