※この記事は2015年05月08日にBLOGOSで公開されたものです

「ニコニコ超会議」を仕切っているドワンゴ取締役CCO・横澤大輔が大好きなテレビ番組があると聞いた。普段ネットで仕事をしている業界の人々はコンピューター漬けでテレビの番組などほとんど観ないと私は勝手に思い込んでいたが、彼が「好きだ。」と知って少々驚いた。かなりコンテンツにうるさい横澤氏だが「これは毎回絶対に見る」という。
そして、私の身の回りにこの番組の熱烈なファンがもう一人いる。私の12歳の娘である。「プラダを着た悪魔」や名作「ペーパームーン」が好きで将来海外で映画監督になりたい等と申し上げている誠に上から目線の生意気な娘であるが、いつの間にか月曜の夜になるとこの番組を毎回見ている。
今回はこの番組について少々書いてみたい。

関ジャニの村上君とマツコ・デラックスが司会。「世間で気になっているさまざまな件に対して、ちょっとだけ首を突っ込んだり突っ込まなかったりする番組」とある。企画・演出は「イッテQ」の古立善之君、プロデュースは田中宏文君。

最近盛り上がったのは「世田谷区民」の話。世田谷区に住む住民が如何に「世田谷に住んでいることが凄いか。格が上か。」を語る。スタジオでマツコがこのインタビューロケが「中途半端な世田谷・二子玉川」で行われたことでさらに激怒し、「お前ら、小岩に住むことの深さを知れ」と叫ぶという内容だった。
あと、品川ナンバーから独立した世田谷ナンバーに対し世田谷住民が「住んでいるところが特定されてしまうので、いやだ。」と言った際にマツコが「せっかく独立したのに何よ!」と怒鳴ったり・・・。

深夜番組なのでこの番組、予算はない。
ただこの番組の成功のカギは「演出センスが良い」のと、「ネタのチョイスが良い」のと、「ロケ企画に手が込んでいる」のと、「深夜番組なのに制作に手間がかかっている」のと、「見ている人・出ている人・作っている人の関係性がよいこと」、「作為がなくシンプルで余計な事をしていないこと」のと「株主優待で暮らす桐谷さんなどの番組発のオリジナルスターを生み出している」のと「視聴率を取れる演出パターンをあえてずらす事によりかえって予期せぬ新鮮さを与える」事にある。

それと、「情報の圧縮性」に優れているということもある。「全国の○○問題」についてはおそらく10か所以上にロケをして、編集して強烈に情報を圧縮している。昨今の番組は「情報が薄い」番組が多い。1か所のロケでズルズル引っ張る番組もある。池上彰さんのゴールデンタイムのニュース解説エンターテイメント番組ですら筆者は番組のスピードのノロさを感じてしまう。確かに小学生にも解りやすい演出を心掛けているのだが、強烈に「早回し」したい衝動に駆られてしまう。もっと、次から次へ、脳が刺激される情報と画像を見たくなるのだ。
比べて「月曜から~」は強烈に圧縮しているし「音声・画像情報の配置」も上手いので、見始めると一瞬も目が離せなくなる。脳に対して一番心地よい形を演出をしている。そして余計な「演出上の添加物」「過剰演出」「無駄なゲスト登場」がないので、まるで無添加野菜をシンプルに料理した様な旨みが番組から出ている気がするのだ。また飄々とした味もある。

でも、おそらく少人数のスタッフがフル回転していないとこの手のものが作れないことはプロである筆者にもわかる。最近「手間がかかった」番組を見ないなと思っていたが、意外と深夜に「手間がかかっているのがわからない様に手間をかけている番組」があったのだ。やっぱりスタッフが時間をかけ知力を尽くしている番組は王道の面白さがある。

筆者もかつて「特命リサーチ200X」を制作していたとき、レアーで新鮮な情報をどういう手法で集め、情報をくり出す順番と手法を考え、情報を圧縮し、見ている方の脳を集中させフル回転させることに留意した。 「何かをリサーチ(調査)する・調べてみる」という点ではある意味「特命」と「月曜から~」との類似性を感じてしまう。だから「番組の情報性とその見せ方」について、あえて指摘したくなった次第である。

そして、結局このシンプルな番組作りが一番演出者の腕が問われるのだと思う。