※この記事は2015年04月03日にBLOGOSで公開されたものです

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4月2日、日本外国特派員協会は、報道の自由と開かれた社会及び民主主義の担保に寄与する優れた業績をあげたジャーナリストを表彰する「自由推進賞」を創設することを明らかにした。「報道賞」「報道功労賞」「年間最優秀出版賞」など5つの賞が設けられており、日本記者クラブなどに所属していれば、誰でも推薦者になることができる。

司会の外国人記者は、例年「国境なき記者団」が発表している「報道の自由度ランキング」において、日本の順位が年々低下していることを問題視。特定秘密保護法や安倍首相が特定のメディアを名指しで批判しているといった状況が、影響していると指摘した。

今回の賞の審査員を務める田中稔氏と清武英利氏が会見で、日本の調査報道に対する危機感を訴えた。

SLAPPが報道の自由を委縮させている

田中氏は、昨年12月に施行された特定秘密保護法はメディアの自主規制の流れを加速させていると指摘。また、「原子力ムラの経営者が、私個人に対して6700万円の損害賠償請求を提訴した。1年以上の間、裁判対応に苦しめられた。こうしたSLAPPの横行は時の権力によって決まる。安倍政権の元では、SLAPPが報道の自由を益々委縮させている」と述べた。

最後に、「私は、審査員の就任にあたり、殺害されたジャーナリスト後藤健二さんのことを決して忘れません。『I'm Kenji』という言葉を胸に刻みます」と締めくくった。

大手メディアも手間のかかる調査報道から離れつつある

一方、清武氏は、自身が元々社会部の記者で、調査報道に携わっていたことを強調。読売新聞の渡辺氏を告発したことで解雇された後は、再びジャーナリストとして活動してきたと話した。昨年には、破たん後の山一證券を描いた『殿』という書籍で講談社ノンフィクションを受賞。現在では、ソニーなど日本の電機業界における“追い出し部屋”の実態を追いかけ、FACTAなどで連載しているという。

そうした中で、「日本の官庁、大企業への取材の壁はますます厚くなっている。また、現場を歩く記者、批判を恐れずに調査報道に取り組む記者の数も減ってきている。今回の賞の創設は、日本の調査報道への警告であると同時に励ましであると思っている」と話した。 さらに、「大手メディアも手間のかかる調査報道からますます離れている。だから、ここで是非OBたちは腕を見せろと言いたい。単なるテレビの前の批判者であってほしくない」と述べ、定年などにより現場を離れた元記者たちも、調査報道を行うように訴えた。

また、若手記者に対しては、「読売の渡辺さんですら、かつては一生懸命アルバイトをして腕を磨いた。自社媒体だけではなく様々な媒体で書くべき。そうすることで、調査報道が競争にさらされ、こうした競争が調査報道を強くする」と話した。

この「自由推進賞」は、ジャーナリストからの自薦も受け付けており、〆切は4月23日、5月3日に受賞者が発表される予定となっている。