労働基準法は、真面目にやっている人が守れるような制度になっているのか ~維新の会・足立康史議員・質疑書き起こし~ - BLOGOS編集部
※この記事は2015年03月26日にBLOGOSで公開されたものです
25日の厚生労働委員会で維新の党の足立康史衆院議員(比例近畿)が、元私設秘書から未払いの残業代700万円を請求されたことを明らかにし、「払うことはできない。私たち政治家の事務所は、残業代をきっちりと労働基 準法に沿って払えるような態勢かと問題提起したい」と話したとする報道が話題になっている。■参照記事
・維新議員、秘書残業代不払い宣言 「労基法は現実に合わない」 - 47News
・「秘書残業代不払い宣言」等との報道に係る補足とお詫び - 足立議員のエントリ
この答弁はどのような文脈の中で、出てきたのだろうか。当該答弁を書き起こしでお伝えする。 足立議員はまず派遣法の問題などについて質問を行った後に、「高度プロフェッショナル制度」、いわゆるホワイトカラー・エグゼンプションについて質問を行った。(可読性を考慮して、一部発言を文章として整えています。)
「残業代ゼロ法案」というのは、あるまじきレッテル
足立康史議員(以下、足立):労働法制のもう一つの柱が、先程も民主党の委員の方々が取り上げていた、一部政治勢力が言うところのいわゆる「残業代ゼロ法案」というものです。私としては、その呼び名には大変違和感があります。むしろ、時間ではなく能力等に基づいた働き方。そうした新しい働き方は必須だと私は思っています。何故この今、今でもないですね、以前からこれは取り組んできているわけですが、私は出来るだけ早く制度整備していく必要があるテーマだと思っていますが。
「高度プロフェッショナルなんとか」とかいう名前は、私はあまりわかりやすい話じゃないと思いますが、名前はともかくとして、この制度の必要性について簡潔で結構です。ご答弁ください。
塩崎厚生労働大臣(以下、塩崎):全体として、労働市場改革、雇用政策改革ということで、日本経済を根本からやり直すという中で。特に労働生産性は、かつて世界に誇っていたものだったわけでありますが、今、かなり負けている。
そういう中で賃金も下がって、生活水準も下がっているということで、これを挽回していくためには、やはり様々な産業が、様々な働き方による様々な人たちがいて、初めて様々な能力がいかされていく。それによって、また勝てる日本経済になれるということではないかと思うので。
個人のレベルから行けば、「ワーク・ライフ・バランス」を大事にしながら、働きすぎを是正をし、そして多様なニーズを生かしていく。そういう新しい働き方の選択肢の一つとして、我々「高度プロフェッショナル制度」と言っていますけれども、ユニークな専門性を持った人たちが自由な働き方を出来るようにして、能力を目いっぱい発揮してもらう。こうしたことをきちっとして、今までのような時間規制をしないとしても、別な規制をしっかりかけて、一人一人の働く人の健康や生き方を守っていくと。こういうことで、我々は必ずこれも通していかなきゃいかん言う風に思っておりますので、ご審議をまずいただいて、ご理解をいただければと思います。
足立::この「高度プロフェッショナル制度」ですか。法案審議も通じて、しっかりと深めていきたいと思うのですが、非常に残念な国会の状況だと私は思っています。
要するに「残業代ゼロ法案」というような、あるまじきレッテル貼りがあって。それによって、結局政府側も政府与党もディフェンシブになりますよね。新聞もあることないこと書きますし。
その攻める方、野党も野党でそういう言い方するし。政府は政府でこれまでも苦労してきたものだから、どうしても「本当はこう思っているんだけれども、まぁちょっと丁寧にやろうか」ということになるわけです。
そうした与野党のやり取りの中で、制度がなかなかスッキリとしないというか、困った妥協の産物が出来上がっていくわけです。私たちはやっぱり 国政を預かる国会議員として、本来の議論というか、本当の話をしっかりと、この委員会の場でしなければいけない。この委員会の場で何言っても大丈夫な訳ですから。そうですよね?。忌憚なく、しっかりやっていきたい。
そこで大臣、残業代の問題というのは、大事だと思っているので、ちょっと正確に通告できていないのですが、可能であれば政務三役の方、どなたでも結構でので是非一つ教えていただきたいことがあります。
というのは、この「高度プロフェッショナル制度」については、年収要件みたいなものが法律にも文言が入っています。年収の下限みたいなものが出来ると思いますが、私は、職種によってはもっと低くてもいいと思っているんですね。党のコンセンサスはありません。ありませんが、個人としては私はもっと低くていいと思っています。
経団連がかつて400万と言っていたのは、どうかなと思います。それは議論があると思いますが、少なくとも今の議論は高すぎると私は思います。ある職種はですよ。例えば 営業職。営業職というと一般的すぎますが、私たち秘書がおりますね。秘書が。公設秘書は、先程、山井先生(※民主党の山井和則議員)に教えていただいたところによると…、言っちゃいけませんね。教えていただいたところによると、公設秘書は基準法の適用除外だということだそうです。しかし、皆さんも私設秘書雇ってらっしゃると思います。残業代払ってらっしゃいますか?大臣どうですか?
塩崎:必要に応じて払っております。
労働基準法を直すために国会議員になった
足立::模範答弁としては「必要に応じて払う」というのは当たり前のことなんですね。私事ですが、今日は覚悟をもって来ていまして。まず自分のことを申し上げると。私の事務所は、私設秘書を抱えています。残業代払ってません。
あ、まずいですかね。払っていません。(会場ざわつく)
先日、辞めた、かつての従業員、秘書から受任通知兼請求書が来ました。「残業代払え」と。最高裁まで争うつもりでありますが、何が言いたいかというと、私たちの事務所、政治家の事務所、たぶんみなさんわかるでしょ?残業代をきっちりと、労働基準法にそって、払えるような体制か、ということを私は今日、問題提起したいと思っています。
この通知書には、こう書いてあります。読んでいいのかな。まぁいいですよね。
「メールやFacebookを用いた連絡文のなどの客観的資料に基づき、当方で計算したところ、時間外勤務は4200時間をゆうに超え、700万円を支払え…」
ふざけるな!と思うわけですが。これから労働基準法の改正案出てきます。そこで、委員長、政務三役が、それぞれ自分のところの事務所、労働時間 管理をどのようにしていて、割増賃金を払っているのか、いないのか。正確に労働基準法を守れているのか。これ今日ご答弁できる方はしてください。出来ない方は、後刻資料で出していただくようお願いします。まず政務三役の皆さんどうでしょう。
塩崎:おってご報告申し上げます。
山本副大臣:残業が生じるような働き方をしてない人を私設で雇っています。(会場から「素晴らしい」)
永岡副大臣:調べまして、後程ご報告いたします。
橋本大臣政務官:おってご報告させていただきたいと思います。
高階大臣政務官:調べまして、おってご報告申し上げます。
足立::おそらく、こういう請求書がくるような事務所はうちだけだと思います。ただ、何人かの議員と一般論として議論したんです、この話を。そしたら、結構シンパシーというか「足立さん大変やなぁ」とみんな言ってくれます。
実態は、例えばメール、電話、Facebook、様々な方法で秘書たちとは連絡を取り合っています。正直、 24時間、365日仕事しています。私はしてます。夜中でも起きます。朝でも起きます。そういう中で、秘書だけが労働基準法にそって、残業代を支払うというのは、私は出来ません。
だからこそ、労働基準法を直していただくために国会議員になりました。いいですか。そのために、国会議員になったんですよ。私が、文句があるのは労働基準法だけじゃありません。道路交通法。阪神高速走ってごらんなさい。一車残らず違反していますよ(会場笑)。 もし、そこに掲げられているスピードを守ったら交通事故が起こります。みんなと一緒に走ったら違反しているんですよ。いいですか。これが道路交通法の一部です。公職選挙法も結局うちわがどうなったか知りませんが、法文上、どのように解釈していいかわからない問題がいっぱいあるわけです。
そういう中で、苦労しながら、みんなやっているんだけど、法治国家であれば、道路交通法、公職選挙法、そして何よりも労働基準法については、しっかり真面目にやっている人が守れるような制度、これを作る必要があると思っていて、そういう意味では今日テーマになっている…。なんかシーンとしていますが大丈夫ですか?
経済実態、社会の実態、働き方の実態に即して考えたときに、実現可能な立法をしていくのが国会の責務だと思っています。今日、山井議員が、いろいろとああだこうだと問題があるとおっしゃいました。確かに問題があるとこもあるが、法律違反をしているところを取り上げて、「かわいそうじゃないか」という問題は全く別ですよね。
法律があって、法律を守っていない会社の労働者が苦しんでいる。それはエンフォース(※法を執行すればよい)すればいいわけだから、法律の問題じゃない。私が申し上げているのは、真面目にやっている人が守れないような法律だったら、なおさらいけないですよねという話なんです。山井さんの問題提起と私の問題提起はまったく別の話だということをご理解いただきたい。
また、私は今申し上げたようなことがきっちりできない限り、山井さんがおっしゃっているような、上限規制とかインターバルとか。私は、そういう規制が必要だと思いますが、労働者を守る法律だけが、労働者を守る事項だけが、バーッと制度化されていって。
私は今、事務所の経営者です。経営者が法律を守るのが大変なものがね、野党の「残業代 ゼロ法案」というようなレッテル貼りでマスコミを引っ掻き回してやるようではね、こちらが出来ないなら、こちらだってできないよなというバランスの中で厚生労働行政というのは今あるわけです。
是非、この国会ではもう1回、政務三役の事務所の実態を明らかにしていくことを通じてね。今国会の労働基準法の審議をより有意義なものにしていただきたいと思っています。
で、1千何十万ぐらいでしたか、一応下限みたいなものが議論になっていますが、これ将来的に引き下げる余地はあるとお考えでしょうか?
塩崎:今回の法律では、「年収が平均給与額の3倍を相当程度上回る水準」ということを法律に書きます。実際に今、想定している1,075万円というのは省令に書き込んであります。
したがって、法律に「年収が平均給与額の3倍を相当程度上回る水準」、こういう風に書いてある限りは、1,075万を400万だ、300万だみたいな極端なことを言う方が時々おられますけれども、そういうことは法律を改正しないといけないので、国会での議論になる。こういうことでございます。
足立::ありがとうございます。明快な答弁で。本当に国会の責務は大きいと私も思います。
労働法制、ちょっと微妙な雰囲気が漂っていますが、一旦これで区切りにさせていただいて。委員長、先程政務三役5人の先生方「おって報告する」とおっしゃっていただきました。公設はエグゼクトされているということであれば、私設のスタッフの労働時間管理がどのようにされていて、そして、残業代を残業していれば支払っているだろうし、山本副大臣のように残業してないということであれば、支払っていない。まぁ当たり 前のことですね。
それからいわゆるその労働時間管理の実態、要は勤務表というんですか。そういうものをつけてらっしゃるかどうかも含めて、確認をしていただきたいと。委員長にお願いをします。
………………………
この後、足立議員は医療介護の問題についても質問を行っている。
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