なぜ日産「シルビアS15」の盗難被害増えてる? 今年だけで5台も! 行く先は「アメリカ」が濃厚と言える理由とは

写真拡大 (全2枚)

なぜいま日産「シルビアS15」の盗難被害が増えているのか

 2020年頃から日産「シルビア」の盗難がじわじわ増えています。

 とくに多いのが1999年から2002年に発売されたS15型です。

【画像】これが次期型シルビア!? 顔が違うマシンも凄い! 激レアなシルビアを見る!(27枚)

 25年ルール適用となるまでにはまだあと少しありますが、なぜ最近になってS15の盗難が増えているのでしょうか。

なぜ最近になって日産「シルビア(S15型)」の盗難被害が増えているのか? 行き先はどこへ?

 シルビアの盗難は自動車盗難情報局に報告があっただけで2019年7台、2020年8台、2021年10台、2022年(1-4月)6台と2022年に入ってわずか4か月で6台もの盗難報告がありました。うち5台がS15です(未遂1台含む)。

 自動車盗難情報局は盗まれた被害者が自主的に登録するシステムであるため、実際の盗難台数は5から10倍ともいわれています。

 2020年はコロナ禍によってコンテナ船が出ない、海外との行き来が難しくなったなどの理由で、旧車の盗難報告は激減しました。

 2020年5月に日本から盗まれたクルマの部品が米国ヴァージニア州にある日本車専門店「J-Spec Auto Sports Inc.」で販売されていたことが明らかになったことも激減の一因かもしれません。

 この際は、テレビの情報番組や自動車メディアで報じられ、SNSでも大きな話題になりました。

 しかし2020年の秋以降、再び日本車の盗難が増え始めます。

 シルビアだけではなく、日産「スカイライン」、ホンダ「シビック」、「インテグラ」、トヨタ「ランドクルーザー・プラド」、レクサス「LX570」、マツダ「RX-7(FD)」などのクルマの盗難がSNSに上がる機会も増えました。

 盗難されたシルビアやRX-7、スカイラインの行き先はやはり多くはアメリカです。

 アメリカには製造年月から25年が経過するとアメリカの保安基準FMVSSを満たしていないクルマでも合法的に輸入ができる「25年ルール」といわれるシステムがあり、R34スカイラインのような超人気車種ともなると、解禁数年前から日本の中古車市場でも値段が高騰してきます。

 なお、25年未満の右ハンドル車であっても、(莫大な費用が掛かりますが)実車にてクラッシュテストなどをおこない、諸々の審査を経てFMVSSの安全基準が満たされていることが証明されればアメリカへの輸入が許されます。

 この方法で2000年頃、モトレックスという日本人経営の会社によって、新車のR34スカイライン10数台がアメリカに輸入され登録されています。

 映画ワイルド・スピードに登場したR34スカイラインもこのモトレックスが輸入した個体でした。

なぜシルビアS15がアメリカで人気なのか? その理由はいかに

 3月31日にくるまのニュースで「国産旧車、約400台が「破壊」の危機に?」の記事を書きましたが、このなかにS15はなんと30台もありました。

 アメリカで人気の理由として挙げられるのは、第一にスカイラインGT-R(R32/R33/R34)と同様に、S15は北米仕様車が作られず、左ハンドルモデルが存在しなかったことにあるでしょう。

 同じシルビアでもS13やS14は240SXという名称で、北米仕様車が生産され人気を博しました。
 しかし、S15の北米での販売はナシ。つまり、日本でしか販売されなかった「希少性」が高い価値を生んでいると考えられます。

 さらに、S15のスポーティでアグレッシブなデザイン、そして最高出力250馬力を発生する「spec.R(6MT)」の存在も日本車好きのアメリカ人にとってさらに魅力的に感じることでしょう。

 盗難が急増しているS15シルビアはどのような経緯をたどってアメリカに持ち込まれるのでしょうか。

 それは主に以下のふたつの方法が考えられます。

 1.25年を迎えるまで、日本国内または近隣の国(カナダは製造から15年で輸入解禁)で保管する。

 2.エンジンを含む部品としての輸入であれば製造から21年を経過していれば可能なのでバラバラにしてコンテナに積んでアメリカへ輸入する。

 もちろん、日本国内でパーツとしてネットオークションなどに出品される可能性もあります。

 盗まれた80スープラが数時間以内に解体され、盗難2日後にはオークションに出品されていた例もありました。

 車台番号やエンジン番号などが分からないようにするのはもちろん、オーナーが特定できるような情報(オドメーターの数字など)も改ざんするため、残念ながら今の制度ではオーナーが「自分のクルマに間違いない」とオークション主催会社に申し出ても、警察が捜査を始めるまでには大変な時間と労力がかかります。手元に戻ってくる可能性も著しく低いのが現状です。

盗難後にバラバラにされて国外に流出されることがあるという(画像はシルビアS15の内装)

 前述2.の「21年ルール」について説明しておきます。

 こちらはEPA(米国環境保護庁=Environmental Protection Agency)が関わるルールで、中古車の世界においては一般的に「排ガス基準」を意味します。

 製造から21年が経過したクルマは、EPA基準が撤廃されるため、完成車としてはまだ25年ルールまで時間がある場合でも、21年を過ぎていればエンジンを含むパーツの輸入が可能になります。

 S15の場合、21年ルール適用となったのが2020年。以降はパーツとして(とくにエンジン)アメリカに持ち込むことが合法的に可能となりました。

 S15の需要が高まっている背景には「21年ルール」の存在も関わっていると考えられます。

 アメリカでは、エンジンスワップが日本よりはるかに盛んにおこなわれています。警察官もマニアックなクルマ好きが多く、エンジンに関わる知識も豊富です。

 不正なエンジンスワップはすぐに発覚し、対応しないでいると3回目くらいの警告でクルマが没収され破壊される恐ろしい罰則が適用される恐れもあります。

 製造から20年近くが経過した日本製スポーツカー、とくにアメリカでは販売されていなかった車種やアメリカ仕様には積まれていないエンジンが搭載されている旧車を持つオーナーの方は盗難に十分注意してください。

 この先、2度と生産されることはない価値ある旧車を大切に守ってあげてください。