お互いのブログやSNSで家族のエピソードを発信し人気を集める、お笑いコンビ・はんにゃの川島章良さんと妻・菜月さん。今回、川島さんが夫婦二人三脚でがんを乗り越えた話をまとめた書籍、『はんにゃ川島のお笑いがんサバイバー』(扶桑社刊)が本日発売! 発売を記念して、「Amebaブログ」×「ESSEonline」コラボ企画を実施。今週から3週に渡り「川島家3大事件簿」をテーマに、菜月さんはESSEonlineで、川島さんはAmebaブログにて、夫婦の交換日記形式でつづります(毎週金曜同時更新)。記念すべき第1回は、「まさか! 長女きあちゃんの自宅出産」です。当時大きな話題を呼んだエピソードについて、菜月さんに、今だからこそ感じる思いも含めつづっていただきました。

事実を記述しているため、出産にまつわるリアルな描写があります。

予定外の自宅出産で、救助隊に保護された際のはんにゃ川島さんの長女<写真>

初めての出産がまさかの自宅トイレに。そのとき夫は…!

もともと夫のがんが発覚したのは、第一子である娘の妊娠がきっかけだったのですが、その出産は、想像していたものとはかなり異なるものでした。今回は、出産を経験したお母さんたちにびっくりされることが多い、第一子のトイレ出産体験についてお話したいと思います。

それは2015年6月の出産予定日2日前のことでした。

たまたま夫も午後からの仕事だったため、朝から一緒に病院へ検診に行きました。そのときは「んー、これはまだまだですねぇ。一週間後くらいかなぁ」と言われ、経験をしたことのない出産に対して恐怖しかなかった私は正直、胸をなで下ろしました。

●その日の夜、襲ってきた突然の激痛

そして夜は外食へ。出産後なかなか外食できなくなると思い、これでもかとピザを食べました。するとその夜から異変が…。

お腹が痛くて痛くてたまらない…。食べすぎにより私はお腹を下していました。トイレに行ったり来たり、便秘だったからかな? と気にも留めず、ひとまず23時頃ベッドで眠ることに。

が、しかし眠れない。痛くてトイレに行ってまた戻っての繰り返し。出産はまだ先だと聞いたばかりだったこともあり「こんなことなら欲張ってピザ2枚も食べなきゃよかったー!」と、まだ陣痛だと気づいていない私は、食べすぎを後悔していました。

まったく眠ることができず、トイレに行ってはリビングへ戻り、ゴロゴロ。ネットで「妊婦 便秘 お腹下す」などいろいろ検索していると、「前駆陣痛」ではないかと、思います。

なに…陣痛に偽物とかあるの…と思いましたが、どんどんひどくなる痛みに耐えきれず、さすがに「これ陣痛じゃない?」と思い、そこから陣痛の間隔を測ることにしました。

でも陣痛の間隔の測り方も本やネットにはあるものの、実際に起きてみると時間がバラバラでよくわからないし、痛すぎて死にそうで頭が回りません。

●病院に電話するも、まだ自宅待機に

そう思った朝4時頃、病院に電話することに。すると「まだまだだと思います。5分間隔になったらきてください」との答え。

「でも、もう痛すぎてどうすればいいかわかりません」と言うと、「自分で電話もできてるし大丈夫です。水分とって歩いて少し寝てくださいね。破水か出血したらすぐ来てください」とのことで、電話を切りました。

少しパニック状態だった私は、「どうしたらいいんだ! あきぷー(夫・川島さん)は明日も朝から仕事だからギリギリまで起こせないし…」と、トイレへ行ったり来たりウロウロ。お腹が痛すぎて吐き気もあり、水分は一切取る余裕がありませんでした。

次第に、お腹が痛みにより嘔吐を繰り返すようになり、ネットで「陣痛 痛み」とか「陣痛 死にそう」「陣痛 間隔 バラバラ」など検索したり、登録してた陣痛タクシーを確認して気を紛らわしていたのですが、外が明るくなってきた6時頃からもうほぼ記憶がないくらい悶絶しました。

●いよいよ破水!どうする!?

「陣痛ってこんなに痛いのか…間隔もはっきりしてないし、出血も破水もしてないしまた電話したらうざいかな…この痛みいつまで続くの…」

なんて思っていたら、気づけば破水。

「あ、病院に電話しなきゃ」と携帯で病院に電話したときには、時すでに遅し。もう動けないほどの痛みで声も出ません。

「はああああああああああ、まじでやばいやつじゃーーーーん」と思い、助けてほしいのに、痛すぎて声が出ません。電話した病院の電話口の方も焦った声で「ご主人がいれば変わってください」ということで、トイレの非常用呼び出しボタンを連打し起こそうとしましたが…。

全然起きません。
「もう…これは無理だ! 行くしかない!」と這いながら寝室へ行き、なんとか夫を起こし電話を渡しました。

「は? なに!? なになになに?」と夫はパニックになりキレていたのです…!(夫はパニックになるとこうなりがちに笑)

しかし私も負けじと「もう生まれそうなんだよーーー! いいから電話!!!」と叫びます。

すると、やっと状況を把握した夫は冷静に病院の電話に対応してくれ、まだ下痢と嘔吐を繰り返していた私は、救急車を待つためにトイレに戻りました。

「やっと救急車に乗れる」と思ったら、赤ちゃんの頭が…!

痛みで冷や汗が止まらず、ぽたぽたと床へ流れ落ちます。その様子を見て夫が、電話で
「今ですか? 今…すごい泣いてます!」と病院に説明していて、「いや、泣いてないし」と心の中ではつっこみたいものの、そんな余裕はなく、とにかく痛みにうろたえていました。

その後、病院からの指示で救急車を呼ぶことに。するとピキピキという感覚がお股に響きます。なにこれ…と触るとそこには赤ちゃんの頭皮が…。

トイレの前にいる夫に「頭出てきてるーーーー」と叫ぶと、夫は「えっ頭出てる!?」とパニック。

もうここからは赤ちゃんの頭は出てくることを止められません。押し返すこともできないし、出産の知識もない私は、立ちながらとんでもない格好で力一杯に力んで押し出しました。

「おぉぉぉぉぉぉぉ…!」とかわいげのない、野獣のようなうなり声を上げ、もう野生動物と化していました。「もうここで産むしかない」そう決意し、自分と戦い続けました。

●勢いよく出てきた娘を本能のままキャッチ

幸い娘は勢いよくシュポンっと出てきてくれ、私は本能のままに自分でキャッチし気づいたら抱き抱えていました。そしてトイレに腰を下ろし、救急隊の到着を待ちます。

しかし、一瞬うぶ声をあげた赤ちゃんがピタッと泣き止みどんどん冷たくなっていったのです。「せっかく会えたのに! 起きて…!」と声をかけるもびくともしません。電話越しの救急隊の方からの指示でタオルで包み、抱き抱えてひたすら温めました。

出産から約5分後。たくさんの人数の救急隊の方が来て下さり、私と娘は繋がれていた臍の緒を切られ、保護されました。その瞬間に安心し出血多量で貧血になり、私は一人意識が遠くの方へ。

 

救急車の車内では救急隊の方が「川島さん! 川島さん!」「赤ちゃんここにいますからね!」「見えますか?」「目あげてみて下さい」「とってもかわいいですよ」など、私が意識を飛ばさないようにずっと声をかけてくれてました。

ただ、自力で出産しお尻まで裂けてしまった私はそれどころではなく…「痛いんです! 早く麻酔してください」など言ってしまっておりました…。当時救ってくださった救急隊の方には失礼なことをしてしまいました。もう一度会えたら謝りたいと反省しております。

という感じで病院に搬送され母子ともに一命を取りとめました。救急隊、病院の皆さんには今も感謝の気持ちでいっぱいです。

予想外の出産を経て、第二子出産時に生かされたこと

昔から我慢強いところや人に迷惑をかけてはならないという思い込みが強く、「お産は来週のはず」と我慢をしすぎた結果、第一子をトイレで出産という事態を引き起こしてしまい、娘には本当申し訳ない気持ちです。

●出産後に発信したところ批判も

私と同じような人の役に立てばと、実際に当時このことをブログに綴ったところ、その反響は大きいものでした。

「トイレで産むなんて一生の恥」
「娘がかわいそう」
「親として失格」
などの言葉も多く、自分を責めたこともありました。

でも、出産を経験した多くの女性からは
「一人で子どもの命守ったなんですごい」
「本当にがんばりましたね」
「尊敬します」
と言ってもらえることもあり、もちろん、賛否両論ありますが、ニュースなどで見る「予期せぬ出産はだれにでも起きうる」ということも強く感じました。

ただ、予期せぬ出産にならないために、「もしも」に備えて、事前に助産師さんとしっかり話し合いをすることをおすすめします。

●第二子出産時は助産師さんにしっかり相談

実際に、第二子出産のときは、助産師さんに「一人目の出産がトラウマになっていて電話をかけるのが少し怖いです。夜中だと忙しいだろうしまだ電話したらだめかな? と思ってしまうかもしれない」と相談しました。

すると、「川島さんは出産の進みが早いかもしれないので、ひとまず強い痛みがきたら間隔を測って、パニックになりそうなら自分の限界が来る前に早めに電話してください。」と言ってもらい、第二子の出産はとてもスムーズでした。

まだこの痛みで電話しちゃいけないかな? と思いつつも、念のため、と電話をすると、病院に来てくださいとのことでその後4時間ほどで無事出産しました。当たり前ですが、一人で産むのとプロのサポートがあるのとでは、精神的にも体力的にも大違いでした(笑)。

●もしものときは、早めにSOSを

あとからわかったのですが、この予想外の出産の中で、自分の判断で臍の緒を切らなかったことは、正解だったそうです。もしも思いもしない形で産んでしまった場合は、とにかく赤ちゃんを温めて救急隊の到着を待つのがいいと思います。

出産は本当に十人十色で、お母さんたちみんな命がけで子どもを産んでいます。

今ではいろんな出産方法がありますが、お腹の中で育て出産することにラクなことはないのです。また、生きる中で多少の我慢は必要かもしれませんが、自己判断での我慢しすぎは自分を苦しめる、と、この出産を経て感じました。

早めに「助けてほしい」と声を上げることが、あのときの自分には必要だったのかな…と思います。

夫・はんにゃ川島さんの天然!?エピソード

私は救急隊が来て娘が保護された瞬間、出血多量で貧血を起こし三途の川を見ました。

なのですが、
「ご主人しっかりしてください」
「とにかく落ち着いてください」
とあまりにも辺りが騒がしく、意識が朦朧とし始め目を覚ましました。アタフタしすぎて、なだめられていましたが、多分私たちを必死で守ろうと動いてくれてたんだと思います。ありがとう。いざとなれば助けてくれるそんな存在に救われています。

●世の中のパパになる皆さんへ

何度経験しても、決してラクなことではない出産。命がけで出産する奥さんを、どうか他人事のように見ないでほしいなと思います。お母さんたちだって、覚悟ができているわけでもなく、不安いっぱいの中戦ってるんです。

出産時だけではなく、妊娠した瞬間から、たくさんのマイナートラブルを経て小さいな命を守っています。どうかそれを理解し、思いやりをもって一緒に、出産・子育てに向き合っていってもらえるといいな、と思っています。

はんにゃ川島さんのアンサーは『はんにゃ川島章良オフィシャルブログ』にて公開中です。川島さん側の当時の心境とは…!?

記事の内容はあくまで個人の体験談、見解になります。体に不調を感じた場合は、医療機関へ相談・受診してください。