前回のこの欄で、次戦サウジアラビア戦(2月1日)のスタメンが、中国戦(1月27日)と一緒であることの問題について記した。森保監督が試合前の会見で「サウジアラビア戦のスタメンは中国戦をベースに……」と述べていたことを踏まえると、同じである確率は6割と予想した。4割ほど淡い期待を抱いたものだが、蓋を開ければ、それは楽観だった。スタメンは中国戦とまるで同じだった。愕然とすることはなかったが、やはり森保監督、恐るべしと、溜息をつきたくなった。こちらとの感覚の違いを改めて実感した次第だ。

 試合は2-0の勝利だった。一方、ライバルのオーストラリアがオマーンと引き分けたので、日本とオーストラリアの勝ち点差は3に広がった。とはいえ、日本はオーストラリアに得失点差で劣る。状況は好転したと言っても、決定的な差ではない。オーストラリアが残る2試合で、日本とサウジアラビアに連勝すれば、日本は最後のベトナム戦(3月30日)に勝利しても、現状で不利な得失点差の争いに持ち込まれる。次のオーストラリアとのアウェー戦(3月24日)は、まさに絶対に負けられない戦いになる。

 ところが、日本のスタメンはこの大一番を前に、あらかた露呈した状態にある。過去2戦の流れから以下のスタメンを容易に想像することができる。

 権田、長友、吉田、冨安、酒井、遠藤、守田、田中、南野、大迫、伊東。怪我さえなければ、この11人で9割方固い。中国戦、サウジアラビア戦から変わるのは、センターバックの2人。この2連戦をコンディション不良で休んだ吉田麻也と冨安健洋が、谷口彰悟、板倉滉とそれぞれ入れ替わるのみだ。

 オーストラリアのグラハム・アーノルド監督にとって、これは歓迎すべき事態である。スタメンが固定されていれば、交代選手の顔ぶれも推測できる。それは、前線の3人と左サイドバック(SB)になるだろうと。

 サウジアラビア戦の森保采配でいただけなかった点はもう一つある。交代枠を4人しか使わなかったことだ。終盤、試合は特段、緊迫していたわけではなかった。日本が逆転される可能性は後半30分を過ぎた段で5%もなかった。2-0は2-1にされた途端、お尻に火がつく。安全なスコアではないと言い出す根っからの心配性が、世の中には一定数存在するが、森保監督もそのひとりだと考えたい。

 たかが1人、されど1人。使うか使わないは小さな問題ではないのである。3人、3人、5人、4人、5人、5人、5人、4人。これは今回のアジア最終予選過去8戦で、交代カードを切った人数だ。計40回使用していいはずの交代機会を、森保監督は34回しか使わなかった。6回分無駄にした。こちらにはそう見える。

 2022年カタールW杯は交代枠5人制で行われる初めての大会だ。2人枠から3人枠に変わり最初に行われたW杯が、日本が初出場した1998年フランス大会になるので、隔世の感というか、時代の移り変わりを感じさせる。コロナが終焉を迎えたとき、5人制は維持されるのか、定かではないが、2人から3人に変わった1998年大会より、3人から5人に増える今回の方が、当たり前の話だが変化の幅は大きい。競技性にまで影響を及ぼしそうな、まさに大変革に値する。VARの比ではない。

 この点にどこまで敏感になれるか。森保ジャパンは目標をベスト8に掲げているが、交代枠を使い切る術と成績が密接な関係にあることは、交代枠の増大に加え、戦術的交代が流行するきっかけとなった1998年大会を振り返れば一目瞭然となる。変化の幅が大きい今回はその分、影響が顕著に出ると思われる。5人枠が成績に計り知れない影響を及ぼすことは間違いない。