「港区、目黒区だけじゃなく全国を見る」マーケの神髄は“頭から血が出るぐらい想像すること”
「そろそろ、No.1を入れ替えよう。」というセンセーショナルなフレーズで話題となったファミリーマートPB「ファミマル」の広告。
ファミマ、王者のセブンに叩きつけた「挑戦状」
https://toyokeizai.net/articles/-/466239
ファミリーマートとともにこのブランド開発と広告を手掛けたのは、The Breakthrough Company GOの代表取締役であり、PR/クリエイティブディレクターとして活躍する三浦崇宏さん。
おなじみの威圧感で登場だ!
今回はこの男からの紹介で、あるレジェンドに取材できることになりました。
GOとともにファミマルのブランディングを手掛けるのは、P&Gを経て日本マクドナルドにて「グランドビッグマック」「Pokemon GOコラボ」などを仕掛け、同社の業績をV字回復させた“伝説のマーケター”足立光さん。
ファミマルのプロモーションのお話を通じて、足立さんが考える「話題になるマーケティングのキモ」を深掘り取材しました!
結論、ヒットをつくるための、僕らにまだまだ、まだまだ足りない“あるポイント”に気付かされました…。
〈聞き手=天野俊吉(新R25副編集長)〉
「港区と目黒区だけじゃなく、全国を見てほしい」
天野:
「ファミマル」の広告、かなり話題になってましたね。
ネットでは「他のコンビニを想起させなくなっているうまい手法」と称賛されてました。
足立さん:
「お客さんからすると、どこが1位とかは関係ない」という意見がありましたが、「そろそろ、No.1を入れ替えよう。」は“No.1を目指してチャレンジする”という社内向けのメッセージと、全体の話題づくりが目的だったので、想定通りの反応でした。
これからどんどんユーザーさんに向けたキャンペーンも展開していきます。
『Pokémon GO』内で特別なポケモンに出会えるチャンスが増える!「『Pokémon GO』Special Week
https://www.family.co.jp/campaign/spot/2111_pokego-sw_cp.html
『Pokémon GO』で特別なポケモンに出会えるチャンスが増えるイベントへの参加券が入手できたりするらしい
天野:
足立さんは、いろいろなインタビューで「ユーザー視点の重要さ」を話してますが、徹底的にユーザー視点を持てるのはなぜなんでしょうか?
足立さん:
それよく聞かれるんだけど、僕にとってはなにが難しいのかがわからないんですよね。お客さんが“うれしいな”と思うものを考えるだけなので。
しいて言うなら、我々が今いる港区とか目黒区などの都心だけじゃなく、全国を見ることが第一歩ですよ。
本日もゴリゴリに東京都港区で取材しております
足立さん:
極論ですが、僕がファミリーマート社内でよく言ってるのは「青森県の35歳子持ち女性や、長崎県の24歳男性・子ども2人家族4人」、この人たちを思い浮かべながら考えなさいと。
天野:
青森や長崎をイメージするのがヒットの秘訣…?
足立さん:
どういうことかと言うと、このあいだも、ある外資系の方が「世の中はすっかりテレワークになり、働き方は全く変わってしまった」と言ってたんですが、実際には今でもすごい数の人が電車で通勤しているわけです。
つまりこういう方は、自分が実はマイノリティだとわかっていないんですよね。
天野:
なんだかんだユーザーのことが想像できてないと?
足立さん:
そう。たとえば漢字とかも、商品名やタイトルに「これ絶対読めないよね」っていう難しい漢字を使ったりする。
あと、みんなすぐ「TEDみたいな広告作りましょう」とか言うでしょ。
※TED=学術、デザインなどさまざまなジャンルのプレゼンテーションが行われる講演会。2006年以降ネット上で動画配信されるようになり、著名となった。よく動画がバズって、「これからはこういう時代だ」と話題になるやつですが…
足立さん:
「TED」って絶対伝わらないよね?
「みんな糖質を気にしている」とかもそう。実際にはコメ食ってますよ。
メディアの方たちも、こういう“自分たちの常識”が正だと思う勘違いが多い。
天野:
耳が痛すぎる…。新しいトレンドを「これがイケてるんだ」と取り入れるのが“話題づくり”に必要だと思ってました。
足立さん:
それはむしろ、マーケティング的ではない。
少なくともマーケティング的観点を持ちたいなら、自分が世界を代表していないということを強く思わなければいけないはずです。
天野:
ぐっ…。選挙のときに聞いた「エコーチェンバー」という話と同じなのかもしれません。「まわりはみんなこう投票してる」と錯覚するけど、実際には一部でしかないという。
足立さん:
そうなんです。実際には、人の行動は今も昔も“欲望”に基づいていると考えてほしい。
たとえば、いま新しいとされているマーケティング手法も、ほとんど昔からあるものの名前を変えたものにすぎない。「インフルエンサーマーケティング」とかも、日本人は昔からやってるんですよ。何だと思います?
平賀源内のうなぎ…はインフルエンサー関係ないしな…
足立さん:
日本最初のインフルエンサーマーケティングは「天皇御用達」。天皇に献上しましたとか、旅館で「天皇がお泊まりになりました」とかね。
いつの時代でも、人は「著名人が食べたり、泊まったりしているものに惹かれてしまう」。そういうシンプルな「欲望」にまっすぐになりなさいということです。
「頭から血が出るぐらい想像していますか?」コワイ
足立さん:
ほかにも僕がよく言ってるのは、「頭から血が出るぐらい想像していますか?」っていう…
それはたいへん
天野:
頭から血…どういう感覚なんですか?(笑)
足立さん:
たとえば、仕事のなかでいろいろなプレゼンがありますよね。これってチャンスでもありリスクでもあるんですよ。
言葉遣いとか、見せるチャートとか、ひたすら想像して考え抜かなければいけない。
よくいるのが、画面に投影するスライドと、紙で渡す資料が同じっていう人。
天野:
…ダメなんですか?
足立さん:
「頭から血が出るほど想像してる」人は、それはしないです。
スライドを見るのと手元で見るのだと頭に入る情報量が違うから、見てる人のことを考えたら、たとえば画面に投影する資料は文字を大きくしたり、情報量を減らしたりして見やすくするなど、変えるのは当たり前。
天野:
はい…
足立さん:
ほかにも、4人で話す会議と、20人の会議で話し方が同じ人。参加者のことを考えたら全然違うものにしなければいけないんですよ。
僕は会議やプレゼンの前日は、家で相手を思い浮かべながら1人で話し方のシミュレーションをします。
天野:
そこまでしますか…!?
足立さん:
何かを伝えて相手の心を変え、結果的に行動を変えるというのがマーケティングの仕事。
「このチャートでいいや、使い回そう」と思うのは職務怠慢。それが、「血が出るぐらい」という感覚ですね。
「血が出るまで考えた?」明日から社内で流行りそうでコワイ
「自分のマーケティング」のために、“突破する経験”を積み重ねよう
天野:
足立さんは外資系の会社でも活躍されてますが、日本のR25世代に欠けてると思うことはありますか?
足立さん:
自分のマーケティングを考えていないことですね。
ああ…その通りだなあ…
足立さん:
「どこの会社のナントカさんです」ではなく「あの人はこういうことをやってきた、こういう人なんです」と言われる人が圧倒的に少ない。
僕の知り合いで、本業は某会社のCDOなんだけどナチュールワインのお店をやっててワインの世界で有名になってる人がいたり…「自分はこう呼ばれたいというイメージ」があったら、みんなもっと行動して発信したほうがいいよね。
天野:
足立さんも、「どう呼ばれたい」ってあるんですか?
足立さん:
「かわいい必殺請負人」みたいな。かわいいのに仕事はちゃんとするっていう。
天野:
かわいい…!?
「かわいいタイプだから、乾杯のときもニャーって言うようにしています」謎すぎますが、足立さんがけっこうパーティーキャラなことがわかりました
天野:
僕らが自分のブランドを確立するためにはどうすればよいでしょうか?
足立さん:
やっぱり、仕事を通じて何かを突破する、局面を変えるということだと思うんですね。
そのためには、「前年比5%アップ」を考えないことです。「50%アップ」を考えないと、革新的なアイデアは出てこないですよね。5%だと、現状の延長線でできちゃうかもしれない。
天野:
努力幅というか。インパクトがない。
足立さん:
2つ目は、突破のためには「これはいける」と感じたことを諦めない。
新しいことや尖ったことをやろうとすると、必ず反対する人がいる。そういうものです。でも、そこで「嫌われたくない」「波風立てたくない」と思って、妥協して意見を曲げてしまうと、尖った部分がどんどん削れて、普通の施策になってしまったり、最悪実行できなくなったりします。
どんな会社の就業規則にも「ビジネスのために正しいことをする」っていう意味のことが書いてあるはずなんです。
なので、突破していくためには人に嫌われようが、ビジネスを伸ばすために自分が正しいと思ったことをとことん追求する。
天野:
足立さん並の実績がないと、「突破」を貫ける自信がないかもしれません…
足立さん:
組織だから、自分の意見を貫いてるばっかりじゃただのワガママになっちゃう。納得できないことをしなくてはならないこともあるけど、そういうときは自分なりに「今は納得できてない」と理解しつつ、ちゃんとやる。
だけど自分がしたいことは持っておいて、“出せるときに出す”という感じかな。新しいことや尖ったことは、すぐにはできないかもしれないけど、心の奥にしまっておいて、適切な時期が来たら、満を持して実行する。
天野:
したたかに見極めて「突破」していくんですね。
足立さん:
そうやって実績を残していけば、普通に会社の中にいても立派な“ブランド人”なんですよ。
「自分はどういうふうにキャリアを積みたいんだろう」「どういうブランドになりたいんだろう」ということから逆算して、必要な仕事をする、実績を残す、または発信する…
こういうことを考え抜いてみてほしいですね。
「ユーザー視点に立ちましょう」なんて、ふだんからよく聞く話。
ですが、足立さんはその重要性を、誰よりも強調されました。
“想像しているつもり”でも、つい自分の身のまわりだけの狭い世界のことしか考えられていない。
一流のマーケターとそれ以外を分けるのは、結局ここに尽きるのかもしれません。
あなたも今日から、いろいろな施策を行う際に「頭から血が出るぐらい想像できているか?」と自問自答してみてください。
〈取材・文=天野俊吉(@amanop)/編集協力=山田三奈(@l_okbj)/撮影=長谷英史(@hasehidephoto)〉
そして、足立さんのお話のなかから、ふたつの新R25ワイドショーテーマを公開!
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