「このふたりには、才能“しか”ない」東京03飯塚が語る“豊本・角田から若手が学べること”
誰にだって、うだつのあがらない若手時代があるはず。
大きな結果を出したり、抜擢されたりしている人を横目に見ながら「自分は全然だ…」とモヤモヤする日々を、先輩たちはどうやって抜け出したのだろうか…？
ということで今回は、昨日（11月23日）『今日は一日 東京03のラジオコント三昧』を8時間半（！）にわたり放送した東京03のお三方に、「20代のモヤモヤ期をどう突破したか」を相談。
前回の飯塚さんに引き続き、今回は豊本さん・角田さんが20代のモヤモヤ期をどうやって突破したのか聞いてみました。前編では「リーダー・飯塚悟志に頼りっきり」と話していたおふたり、いったいどんなアドバイスが出てくるのか…？
〈聞き手＝サノトモキ〉
【東京03・飯塚悟志（いいづか・さとし）／角田晃広（かくた・あきひろ）／豊本明長（とよもと・あきなが）】2003年結成のお笑いユニット。豊本明長と飯塚悟志が結成していたお笑いコンビ「アルファルファ」に、元「プラスドライバー」（お笑いユニット）の角田晃広が加入して誕生。TBS系『キングオブコント2009』で優勝を果たす
豊本さんからのアドバイス� 崟茲鯢舛韻覆ぅ織ぅ廚蓮◆悗笋襪戮�ことが見えているリーダー』と出会うべき」
サノ:
豊本さんも飯塚さんと2人でコンビを組んでいた20代のころは、成果が出ず悶々とする日々だったと思うのですが…
当時の経験を踏まえ、僕のような成果が出ずモヤモヤしている若者にぜひアドバイスをいただきたいです…！
豊本さん:
強いて言えば…
「毎日を忙しくして現実逃避するのはやめましょう」ですかね。
豊本さん:
僕、本当に“先のことを考えられない人間”なんですよ。
20代で仕事があんまりなかったとき、「何かしなきゃ」って焦りはあるけど、何をすればいいかわからない。
だから、とりあえずスケジュールを埋めて気を紛らわせてたんですよ。
サノ:
ああ…わかります。
豊本さん:
どんな中身でもいいからとりあえず仕事の予定を入れて忙しくしていれば、それなりに落ち着くという。
「なんかやってるからいいか」って逃げられるんですよね。
でも、何の狙いもなく、方向性もブレブレの仕事をただ“やってる”だけ。当然、一応やってるけど何も結果につながっていかない状態がつづいて。
サノ:
…そういう20代、けっこう多い気がします。
「何かを変えなきゃ」と思いつつ、「毎日の仕事が忙しいから」と根本的な解決から目を背けている人…まあ僕なんですけど…
飯塚さん「いや重いよ…（笑）」
サノ:
豊本さんは、どうやってその状態を突破できたんですか？
豊本さん:
「余計なことをしない」と決めました。
僕みたいなタイプは、変に自分でもがいて余計な空回りを続けるより、「自分が信じるリーダーが信じたことをひたすらやる」に徹したほうが絶対いいと思います。
僕自身、東京03になって「この3人で面白いコントをやる」以外余計なことをしないと決めてからは、景色が多少変わりましたね。
豊本さん:
“やるべき”ことが決まれば、あとはひたすらそこに向き合えばいいので。
なので、ビジョンを描くのが苦手なタイプの人は、「やるべきこと」が見えているリーダーを信じてひたすら頑張ってみると、どこかで流れが変わるかも。
豊本さんのアドバイス�◆嶌該戮覆海箸發舛磴鵑肇▲圈璽襪垢戮�」
角田さん:
あと豊本さんはアレもあるよね？
「大したことやっていないのに、やった感を出す力」。
なんかすごいのきた
角田さん:
頑張ってるのに、アピールが苦手で評価されずにモヤモヤしてる人ってけっこう多いと思うんですけど…
「わかってるスタンス」で乗り切れてることがけっこう多いんですよ、豊本さんは。
サノ:
「わかってるスタンス」？
角田さん:
とにかく「わかってる感」「やってる感」を出すのがウマい。
後輩にアドバイスとかもけっこうするっぽいんですけど、意外に評判がよかったりするらしいんですよ。
なんなら飯塚さんとコンビで活動してたときって飯塚さんがネタをつくってたんですけど、当時の僕は豊本さんがネタをつくってると思ってましたから。そういう人、多かったよね？
飯塚さん:
多かったね。
なんなら豊本、その空気に乗っかってたよね？
豊本さん:
乗っかってた。
飯塚さん:
あと、普段口数は少ないけど、自分の手柄はちゃんと言いますよ。高らかに。
角田さん:
何の文脈もなく無理やりねじ込んできますよ、ええ。
今日イチで白熱してるな
飯塚さん:
でも実際、世の中で生きていくうえで「アピール」って大事ですけどね。
「頑張ってることを自分で言うなんてカッコ悪い」と思う職人タイプが損しちゃうことも、なくはないと思うので。
角田さんのアドバイス「人生が面白ければ、まわりがほっとかない」
サノ:
それでは最後…角田さんから20代にアドバイスできること。
お願いします！
角田さん:
俺、アドバイスできないんだよな〜...
本当に「中途半端な20代」を送っちゃってたので。
角田さん:
俺、バイトとかできちゃうタイプなんですよ。
飯塚さんもそうでしたけど、芸人のなかには「もうお笑いしかできない」みたいな人もけっこういて。その一点に賭けられるからこそ売れていってるとも思うんですね。
でも僕は、生活のためにアルバイトを辞めることができなくて。
角田さん:
アルバイトすれば、なんとか1人暮らしってできちゃうじゃないですか。
だから、「いつかお笑いだけで食えるように」とか言いながら、むしろ「バイトで忙しい」みたいな生活になっちゃって。「こんなんじゃ無理だよね」って。
実際僕、そのままプラスドライバーってお笑いトリオを辞めていますから。
サノ:
なるほど…そこから抜け出せた理由は何だったんですか？
角田さん:
「飯塚さんとの出会い」…としか言いようがないんですよね。
もともと面白いと思ってたアルファルファの飯塚さんが、近所に引っ越してきた。お互いお酒が好きで一緒に飲むようになって、「どうしようこの先」なんて話していたら一緒にトリオでやろうと誘ってくれた。転機は明らかにそこで。
だからポイントは…「お酒飲めるといいことあるよ」なのかな？
お、お酒か…
角田さん:
飯塚さん、どう？ 俺からアドバイスできそうなこと…
飯塚さん:
ないです。
角田さん:
えっ、俺だけそんな感じ？
即答なのよ
飯塚さん:
もうね、角ちゃんには「才能しか」ないんですよ。
サノ:
「才能しか」ない？
飯塚さん:
これは豊本もそうなんですけど、生き方とかは全然尊敬できない。
何も学ぶべきことはない。
飯塚さん:
ただこの人はもう、人生が面白いんです。
もともと長渕剛さんに憧れて音楽をやりたかったけど、「世の中に対して歌いたいことがない」って理由で挫折してて。
それでお笑い番組もろくに見てなかったくせに、誘われるがまま芸人になってるんですね。
「これがもう面白いじゃないですか」
飯塚さん:
こういう人だから、人間の弱さとか汚さとかしょうもなさとか、そういうのを表現させたら本当にすごいんですよ。
こんだけの才能の持ち主を、他がほっとくわけないもん。
「人生が面白ければ、まわりがほっとかない」。これじゃないですかね、角田さんにアドバイスできることは。
40代になってもモヤモヤは消えない。でもそれを乗り越えるすべがある
サノ:
20代のころ、みなさんもいろいろうまくいってなかったんだなと、なんだかすごく勇気づけられました…
ちなみに、「“40代になった今”でもうまくいってないこと」とかってあるんですか？
飯塚さん:
全然ありますよ。それこそ「人間関係」とかね。
20代でもいっぱいモヤモヤするだろうけど、ここはたぶん一生モヤモヤするところですよ（笑）。
僕らも3人でずっと一緒にやっていくにあたって、それはいろいろありますから。ちょっと仲の良くない時期とか。
サノ:
めちゃくちゃ仲良しに見えるのに…東京03のお三方でもそうなんですか。
「仕事仲間とうまくやっていく」ためのポイントってあるんでしょうか？
飯塚さん:
うーん、結局ねえ…
「何のために一緒にいるのか」をお互いにわかっていれば、たぶん大丈夫なんですよ。
飯塚さん:
この3人で一緒にいるのって、「コントをやりたいから」で。
正直、それ以外なんだっていいんですよ。何にもしゃべらなくて3人でコントやって超面白いなら、もう全然それでいいですよ。
でもよっぽどの天才でもなきゃそんなことできないから、僕らは多少関係が悪いときでもめちゃくちゃコミュニケーションを取るんです。
サノ:
すべては「コントのために」。
飯塚さん:
その“究極の目標”を共有できてるから、お互い人間関係も含めて「粘れるチーム」になってるんだと思います。
つまり、すべて「面白いコントをやるため」に取るコミュニケーションなんです。
べつに…トリオじゃなかったら「こないだ何してた〜？」なんて話したくないですよ、おじさん3人で（笑）！
まあ、それもそうか
飯塚さん:
僕は「ずっと東京03で進化していきたい」んです。3人きりで、もう他は入れないで。
僕、50〜60になったときの3人のコントを想像するとちょっとワクワクするんですよ（笑）。
サノ:
えええ、それは素敵すぎる…
飯塚さん:
等身大のジジイ3人で若手ライブとかに出て、新ネタで爆笑取りたいんです。
年齢を重ねていくにつれ、やれる設定とか状況とか変わっていきそうじゃないですか。「あんま動けなくなってきたヨボヨボの3人で、なんか面白いことできるのかな」って想像すると、ワクワクする。だから、多分まだいけるんじゃないかなと思います。
芸歴とかで下駄を履くんじゃなくて、ジジイになっても3人で「面白い」って純粋な評価をもらえてたら、それが理想の人生。
最後のお話で、ちょっとじーんときてしまいました。今日はありがとうございました！
どんな人にも、「モヤモヤした20代」はある。
そして、それぞれのモヤモヤに答えを出した結果として今があるんだなという当たり前の気づきに、ちょっと心が軽くなった気がしました。
そして、お三方の関係性が、尊い…
うまくやってるように見えるチームも、その裏では「うまくやるための努力」がたくさん隠れているんだなと痛感しました。いちファンとしては、おじさん3人がおじいさん3人になっても新ネタを作っていく姿を見ていたいので、今後もいろいろあるのかもしれませんが、応援しつづけたい所存です。（感想で終わってしまった）
〈取材・文＝サノトモキ（@mlby_sns）／編集＝福田啄也（@fkd1111）／撮影＝長谷英史（@hasehidephoto）〉
東京03の「今日は一日 東京03のラジオコント三昧」が放送！
聴き逃し | NHKラジオ らじる★らじる |今日は一日 東京03のラジオコント三昧
https://www.nhk.or.jp/radio/ondemand/detail.html?p=4784_01
11月23日（火）、NHK-FMが展開する、特定のジャンルを1日がかりで特集する「今日は一日○○三昧」シリーズ。音楽がテーマになることも多い本シリーズに、東京03が登場！
「東京03の好きにさせるかッ！」（NHKラジオ第1）でこれまでに披露された135本以上のコントの中から25本程度が届けられ、東京03とゲスト（バカリズム、空気階段、佐藤栞里ほか）とのトークも披露されました。
こちらの番組は、11月30日（火）まで上記リンクから視聴可能。
本番組について飯塚さんはこのようにコメント。気になった方は、ぜひ聴いてみてください！
飯塚さん:
ラジオコントって、情報は“声”だけで、あとは全部想像で補うじゃないですか。「オフィスがこんな感じ」とか、シチュエーションも。
だから、舞台だったら物理的に表現できないコントを実現できちゃうんです。その自由度が、めちゃくちゃ楽しい。
しかも、台本を作ってくれる脚本家さんたちが、かもめんたるとか、ゾフィーとかやさしいズとか…現役のコント師なので本当に豪華で。
若手の人たちだけじゃなく、シティボーイズ（大竹まこと、きたろう、斎木しげるの3人からなるお笑いユニット）のきたろうさんも来てくれて。お歳も召してるのに、一切噛まない。めちゃくちゃカッコよかったんですよね。
普段の僕らだけじゃできないような面白いコントが盛り沢山なので、ぜひ聴いてみてください！
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