日本代表を率いる森保一監督【写真:Getty Images】

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W杯最終予選の初戦でオマーンにまさかの敗戦「絶望的だと悲嘆に暮れる必要はない」

 森保一監督率いる日本代表は、2日に行われたカタール・ワールドカップ(W杯)アジア最終予選初戦でオマーンと対戦し、ホームで0-1と敗れた。

 7大会連続のW杯出場を目指すなか、まさかの黒星スタートとなった一戦を、海外の識者はどのように見たのか。かつてアジアサッカー連盟の機関紙「フットボール・アジア」の編集長やPAスポーツ通信のアジア支局長を務め、ワールドカップ(W杯)を6大会連続で取材した英国人記者のマイケル・チャーチ氏は、「不運な夜だった」としたうえで、この1敗で「悲嘆に暮れる必要はない」としている。だが、森保監督がベストメンバーを送り出さなかった点は「傲慢な顔を叩いてくれと言わんばかり」と指摘し、勝負の中国戦に向けて教訓にすべきとしている。

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 吹田でのオマーン戦のような敗北の後には、当然お決まりのリアクションが起こる。気持ちが昂り、ショックが収まらないうちは、大規模な変更を求める声も挙がるだろう。

 しかし、一歩引いて冷静に考えてみれば、この敗戦が世界の終わりでないことが分かる。森保一監督体制で9試合目のW杯予選で初の敗北。実に不運な夜だった。

 この敗北によって、日本のW杯出場の望みが絶望的だと悲嘆に暮れる必要はない。残りの9試合、サムライブルーがカタールW杯の出場権獲得のために苦しい戦いを強いられると、敗北主義者のような態度を取るのは実に愚かなことだ。

 しかし、教訓にしなければならない部分もある。森保監督にとって、これは重大な分岐点になるはずだ。森保監督は狡猾なブランコ・イバンコビッチ監督を軽視し、最初からベストメンバーを送り出さなかった。

 日本は伊東純也と原口元気がスタメン起用され、冨安健洋は日本の最終予選の開幕戦に出るのではなく、アーセナルと契約するためにロンドンに飛び立つことを許可された。

 理由はどうあれ、堂安律と久保建英、そして冨安を欠いたチームを送り出すというのは、オマーンにその傲慢な顔を叩いてくれと言わんばかりだった。

 原口と伊東は、堂安と久保の水準には遠く及ばなかった。日本はボール保持ができず、ファイナルサードで創造性を発揮できなかった。そのことが2人の不十分さを物語っていた。ハーフタイムで原口が古橋亨梧と交代したことに驚きはなかった。

 植田直通は他のセンターバックと比べてクオリティーが低いと、試合開始早々で明らかになった。ミスキックによってボールポゼッションの不安を露呈。吉田麻也も含め、彼らはオマーンFWのフィジカルの強さと動きに苦労していた。

中国戦は勝利がマスト、引き分けでも大失敗ではないが…

 最初の15分の日本は、まるでキックオフの15分前に駐車場で合流したかのような雰囲気のチームだった。緩慢で、スローだった。一方でオマーンは、大雨の難しいコンディションにも適応していた。

 30分が経過したあたりから徐々に改善も見られ、日本もいつものようにゲームのテンポを支配し、冷静にプレーしていたが、GKファイズ・アルルシェイディのゴールを脅かすことはほとんどなかった。ボールを失い、オマーンにカウンターのチャンスを与えていた。

 権田修一は彼自身、そして森保監督が望んでいた以上に忙しいゲームになったと感じていただろう。大迫勇也は試合の大半で消えていた。鎌田大地はしばしば行方不明で、日本は相手の規律あるディフェンスを突破するのに苦労した。

 火曜日にドーハで行われる中国戦はより重要な意味を持つことになった。勝利がマストだ。引き分けでも大失敗というわけではないかもしれないが、李鉄(リー・ティエ)監督のチームにもし敗れれば、森保監督は最前線に立たされることになる。

 日本が2018年ロシアW杯アジア最終予選で、UAEとのホーム開幕戦に敗れたことを思い出すと、サムライブルーはその敗北の後の6試合で5勝を挙げ、最終的には1試合を残して予選を突破した。

 今の日本にも同じことができるはずだが、変化は必要だ。森保監督は最終ラインを見直し、本当に目的に合っているかを自問自答しなければならない。冨安がスタメンにいない時には年齢が問題になる。酒井宏樹、吉田麻也、長友佑都もかつてのように若くて、活気に溢れた選手ではなくなった。彼らも動きは以前よりも鈍くなり、その結果として日本は苦しんでいる。

パニックになる必要はないが、森保監督はすぐさま行動に移すべき

 そして、森保監督は彼自身にもスポットライトを当てなければならない。彼はなぜ久保や堂安を先発させなかったのか。なぜ彼らをヨーロッパから遅れて合流することを認めたのか。なぜ日本の勝利のために彼らの才能を生かすことができなかったのだろうか。

 そして今回選ばれなかったのが不思議な選手たちもいる。東京五輪で印象的な活躍をした田中碧はなぜいないのか。鈴木優磨はどうしたのだろうか。大迫は素晴らしい選手だが、以前のようなレベルにはなく、後継者を見つける必要があるだろう。鈴木にはその可能性があるが、森保監督は彼を選ぼうとしない。

 パニックになる必要はない。問われている問題は、すべてチームにとってポジティブなものとして答えることができるし、予選突破を確実にすることもできるだろう。しかし、森保監督はすぐさま行動に移す必要がある。さもなければ、監督への疑念はさらに大きなものとなっていくだろう。(マイケル・チャーチ/Michael Church)