小池百合子都知事も愛犬を亡くし…『ペットロス』絶望と後悔からの這い上がり方
「バタッと倒れているかもしれませんが、それも本望だと思ってやり抜いていきたい」
【写真】つぶらな瞳が可愛い、小池都知事の愛犬・ソウちゃんのありし日の姿
7月2日、小池百合子東京都知事は退院後の記者会見でそう述べた。連日の新型コロナ対策、東京都議選と東京オリンピックの対応により過度の疲労で入院。病み上がりのためか、時折咳き込み、声は小さかったものの、語気を強めて冒頭の覚悟を口にした。
主人を支え続けた愛犬・ソウちゃん
だが、複数のメディアは『ペットロス』も一因ではないかと報じている。
「実は先月、20年近くわが子のように可愛がっていたメスのヨークシャーテリアを亡くしたんです」
そう明かすのは小池都知事をよく知る永田町関係者。
愛犬との出会いは小池都知事が第2次小泉内閣で環境大臣を務めていた2003年ごろまでさかのぼる。
「小泉(純一郎)元首相から譲られたともいわれており、飼い始めたころは『総理』と名づけていたようです」(前出・永田町関係者、以下同)
当時、小池都知事と小泉元首相は結婚説も報じられるほど深い仲との噂も。彼を意識して名づけたとも囁かれた。だが、しばらくするとその呼び名に変化が表れたのだ。
「『そうさん』に変わりました。噂のあった小泉さんから離れ、小池さん自身が仕事にさらに重きをおき、『総理大臣』に目標を見据えたのではないかといわれています」
だが、小池都知事自身は、「愛犬が家族の中でいちばんの主役。わが家の総理、だから『そうさん』になった」と周囲に明かしていたという。
年月がたち、愛犬の名前は「ソウちゃん」に変わった。母親を看取った際もソウちゃんは小池都知事を支えた。
こんなエピソードもある。
「小池さんは“お客さんが来るとソウちゃんが主役になってにぎやかなのよ”とうれしそうに語っていたとも。飼い始めたときは小泉さんの影がちらついていたかもしれませんが、次第に愛犬に自らの目標を重ねていった。呼び名にそのときの小池さんの気持ちや目標が現れていたのでは」
周囲にも愛されていたソウちゃん。小池都知事の知人が手作りしたという洋服やリボンなどでコーディネートも楽しんでいたという。
だが、晩年のソウちゃんはがんなどの大病を患い、小池都知事は激務の中での別れとなった。このペットロスが過労に追い打ちをかけたのではないかと想像するのだが、前出の永田町関係者は言う。
「そこはしっかり割り切っていたと思います。気落ちしている場合でないことをいちばん理解しているのは小池さん。『鋼の女』と呼ばれるほどの彼女ですから、そんなセンチメンタルではないでしょう」と言いつつも「本当の小池さんの心の中は誰もわかりませんけどね」とつけ足した。
「彼女は政界にも敵が多く、基本的に頼る人はいない。ソウちゃんは黙って話を聞いてくれる、心を許せる相手だったのかもしれません」
最愛の子を亡くした悲しみがのしかかる
小池都知事を襲ったとみられる『ペットロス症候群』。死別などでペットを失ったときの強い悲しみやストレスが心身の不調を引き起こす。
「最愛のペットとの別れで心身にさまざまな反応があるのは自然なこと。病気ではありません」
そう話すのはペットロスカウンセラーの川崎恵さん。
自分や家族にとっては『最愛の子』。犬や猫の場合、人間でいえば3〜5歳の子や孫の存在に近い。
「ペットを失うということは“子どもに先立たれる親の状況”にも似ている。実の両親との別れよりもつらかった、という声もよく聞きます」
ペットは人間と異なり、駆け引きもなく、無条件の愛で飼い主に寄り添ってくれる。だから飼い主はペットに心を開くことができ、人によってはきょうだいにも子どもにも、パートナーにもなる。
そんな蜜月関係で結ばれているからこそ、別れのつらさは想像を絶するレベルとなる。
「気持ちの落ち込み、鬱のような症状、涙が止まらないなどの状態になります。やってしまったこと、できなかったことへの罪悪感。最愛の子がいなくなった孤独感や喪失感、絶望感……立ち直れるか、という不安もあります」
無気力になったり、希死念慮も強くなる。
「多くの相談者が“死ぬことはできないから迎えにきてくれないかな”と。本当に死にたいんじゃないんです」
身体にも反応が出る。頭痛やめまい、食欲不振や倦怠感。睡眠障害やもともとの持病が悪化するケースも。
悲しみに耐えるのは逆効果
だが小池都知事をはじめ、人前に出ることが多い著名人はペットを亡くしたあとも元気な姿で表舞台に立っている。無理やりにでも自分を奮い立たせているのだろうか。
「一般の私たちでも仕事や学校などつらくても外に出なければならない状況は同じ。家から1歩出ればスイッチが入り、悲しみから一時的に離れられる。1日中考えているより外に出ていたほうが救われるという声もあるんです」
ただ、帰り道や玄関を開けた瞬間に愛するわが子がいないという現実に直面し、絶望感が襲ってくる。そんな悲しみから逃れるために別のことに没頭する人もいる。
冒頭の小池都知事の会見の言葉にはそうした思いもあったのだろうか──。
「一時的に何かに逃げたくなるのは自然な感情だと思います。ですが、そのときは気が紛れても悲しみの根本がなくなるわけではありません。ペットの死と向き合うことで初めて第一歩が踏み出せる」
では、そこから這い上がるためにはどうしたらいいのか。
「思いっきり悲しみ、泣くことが癒しになります。周囲の反応などを気にして、悲しみに耐えるのは逆効果。さらにストレスがかかるんです」
絶望している飼い主を励ますため、周囲の人はつい“次の子を飼ったら?”なんて言葉をかけがち。人によっては、ペットを失った直後にはそうは思えなくても、寂しさなどからもう一度ペットと暮らしたいと思うことがある。
だが、次に直面するのは高齢という壁だ。
「自分の死後を考えると飼いたいけど迎えられない。そのジレンマに悩む高齢の飼い主は多いんです。その後のことを熟考してペットを迎え入れることが肝心なのです」
タレントの小柳ルミ子もその葛藤の末、新たに保護犬を家族に迎え入れたことを自らのブログ内で明かしていた。
「誰でも最愛の子を亡くせば傷つき、生きるだけで必死。でもペットロスの悲しみを通して、動物が無条件に与えてくれていた愛や思い出を振り返ることができるんです」
愛するペットを亡くした小池都知事。目の前の課題をすべて片づけたとき初めてソウちゃんの死と向き合う時間が持て、本当の意味で立ち直れるのかもしれない──。
■これまでにペットを亡くした著名人
小柳ルミ子(犬)
秋野暢子(犬)
キンタロー。(犬)
杉本彩(犬・猫)
上沼恵美子(犬)
中川翔子(猫)
松居直美(犬)
柴咲コウ(猫)
西川史子(犬)
渡辺えり(犬)
折原みと(犬)
横尾忠則(猫)
安倍晋三前首相(犬)
バイデン米大統領(犬)
※関係者への取材を基に編集部で抜粋
ペットロスカウンセリングサロンcher ange主宰。自らもペットロスの経験があり、日本ペットロス協会で学び、ボランティアののち'13年に同サロンを立ちあげた。現在は対面だけでなく、電話相談にもあたる