2012年に予測された「今年生まれた子どもが使うことはないテクノロジー15選」は的中したのか?
技術の進歩は日進月歩であり、ほんの数年前までは広く使われていた技術やデバイスが、現在ではほとんど使われていないということも起こり得ます。テクノロジー関連のオンラインメディア・Tom's Hardwareの編集長を務めるAvram Piltch氏が、2012年に予想した「今年生まれた子どもが使うことはないであろう15のテクノロジー」について、予想が当たったのか外れたのかを解説しました。
https://www.tomshardware.com/opinion/15-technology-predictions-how-they-did
Piltch氏は2012年の4月に息子が生まれた際、「息子が使うことはないであろう15のテクノロジー」を予想する記事を公開しました。当時から9年が経過した2021年、Piltch氏は当時の予測が当たったのかどうかを振り返っています。
◆01:有線インターネット
2012年には複数の家庭用モバイルWi-Fiプランが登場し始めていたことから、当時のPiltch氏は、「数年以内にインターネットサービスプロバイダ(ISP)は顧客の家に光ファイバーを引くのをやめ、携帯電話を介して家庭用ブロードバンドを提供するようになる」と予測していました。ところが、記事作成時点では依然として有線によるインターネットの提供が一般的であり、第5世代移動通信システム(5G)の導入が始まったばかりです。今後、Piltch氏の息子が大学入学するまでに5Gが主流になる可能性はあるものの、記事作成時点で9歳の息子は有線インターネットの時代を覚えているとのこと。
◆02:写真撮影やビデオ撮影機能に特化した専用のカメラ
Piltch氏は、「2012年の私は、オートフォーカスカメラとビデオカメラが瀕死(ひんし)の状態であり、息子がこれらのカメラを使うことはないだろうと予測しました。これは正しいことが判明しました」とコメント。Piltch氏の母親はパナソニック製カメラを使っているものの、息子は撮影機能に特化したカメラを使ったことはないそうです。
◆03:固定電話
Piltch氏の家庭では2012年まで固定電話を使っていたものの、妻が息子を妊娠している最中に固定電話を解約して携帯電話を使うようになったため、息子も家庭内で固定電話を使ったことはありません。しかし、依然として固定電話を日常的に使っている家庭も存在するほか、多くの企業は社内に固定電話を設置し続けています。息子も将来的に就職した後で、社内の固定電話を使う可能性はあるとPiltch氏は述べています。
◆04:起動が遅いコンピューター
2012年のPiltch氏は、息子がコンピューターを使う時代には新たなOSが採用され、更新プログラムやパッチのインストールに再起動を必要としなくなり、起動するまでに数秒しかかからなくなるだろうと予測したとのこと。ところが、OSの改善やSSDの普及が予想以上に遅く、息子がPCを使い始める年齢が想定より早かったことからこの予想は外れました。息子は数年前から起動には約30秒ほどかかるPCを使っており、OSのアップデートをインストールするには再起動する必要があります。
◆05:PCのウィンドウの操作システム
Piltch氏は、息子がPCを使い始めるまでにPCのグラフィカルユーザインタフェース(GUI)から「ドラッグしてサイズを変更できるウィンドウ」がなくなり、モバイルデバイスに限らずPCでもタッチフレンドリーなUIが主流になると考えていました。2012年にはWindows 8もタッチ操作を意識したUI設計を採用していましたが、当初の予想ほどPCでのタッチ操作はユーザーに歓迎されなかったため、依然としてPCではウィンドウを使った操作システムが主流です。この傾向はPiltch氏にとってもありがたいことだったそうで、「業界の誰もがモバイルデバイスで動作するものがPCにも理想的というわけではないと気付きました」と述べました。
◆06:ハードディスクドライブ(HDD)
2012年のPiltch氏は、「息子が最初のノートPCを入手する際にはSSDなしで購入できない」と予想していました。当時からPiltch氏はSSDを採用しており、これまでに息子が家庭で使用したPCも全てSSDが搭載されているとのこと。なお、これまでに息子が使用した「HDDを搭載した機器」は、Xbox OneとPS3のみだそうです。今後、息子が自分用のノートPCを購入するとしても、当然ながらSSD搭載モデルを選ぶことになるだろうとPiltch氏は述べています。
◆07:映画館
ホームシアターの充実や公開スケジュールが限定された映画館のシステムの不都合さ、映画館招待券のコストや手間などの要因から、Piltch氏は2012年の時点で「映画館はすぐに消えるだろう」と考えていたとのこと。ところが、2020年は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックで映画館の客足が急減したものの、記事作成時点では映画館がなくなっていません。それでもPiltch氏は、パンデミックで人々が自宅で過ごすことの快適さを知った結果、息子が大人になるまでに映画館が消滅する可能性もあると主張しました。
◆08:マウス
かつて「モバイルデバイスのタッチ操作がPCにも採用される」と予想していたPiltch氏は、PCのマウスも使われなくなると考えていました。ところが、依然としてマウスはPC操作において広く使われており、息子も実際にマウスを使ってPCを操作しているとのことで、この予想は「笑えるほど間違っていた」とPiltch氏は認めています。
◆09:3Dメガネ
2012年の時点では3Dメガネを使ったホームエンターテインメントが注目されており、市場には3D対応テレビが登場していました。Piltch氏は3Dメガネを着用するのが面倒であり、新たに3Dメガネを使わない3D技術も登場していたことから、「息子が10歳になるまでに、3Dメガネを使用しなくても多くの視聴者が同時に3D体験を楽しめるようになる」と予想したとのこと。ところが、実際には3Dメガネと関係なく3D市場はほぼ壊滅状態であり、予想とは違う理由で息子は3Dメガネを使用したことがないそうです。
◆10:リモコン
赤外線などを使用して電子機器を操作するリモコンは、障害物があると機能しなかったりリモコン自体をなくしたりするため、面倒なことも多いものです。そのため、Piltch氏は息子が小学校に入るまでにリモコンが廃れ、スマートフォンアプリを介した操作やジェスチャー・音声コマンドに置き換わると予想しました。ところが、依然として多くの電子機器にリモコンが附属しており、この予想は外れたといえます。
◆11:デスクトップPC
「私が2012年に行った最悪の予測」とPiltch氏が述べているのが、「PCベンダーが6年以内にほとんどのデスクトップPCの生産を停止する」というもの。ノートPCの性能が急激に向上しており、デスクトップPCとノートPCの間にあったパフォーマンスと価格のギャップが縮まっていたことが理由でしたが、記事作成時点でもゲーム用や高度な作業用にデスクトップPCを購入する人々が存在います。消費者向けPCの売上に占めるデスクトップPCの割合は、2013年の20%から2020年の13%へと減少していますが、近年では自分でデスクトップPCを構築する人が増えているそうで、2020年には170万台ものPCケースが販売されたそうです。
◆12:電話番号のプッシュ
Piltch氏は、「息子が高校生になるまでに友達との連絡はオンラインメッセージやビデオチャットが主流になり、電話番号を友達と共有することすらしない」と予想しました。実際には予想より早くこの流れが広まり、記事作成時点で9歳の息子は日常的にFacebookメッセンジャーを使って友達や家族とやり取りしているため、電話番号を使って誰かに連絡を取ったこともないとのこと。
◆13:「プライムタイム」のTV視聴
2012年のPiltch氏は、ストリーミングサービスやタイムシフト視聴の流行により、20時〜23時の「プライムタイム」にTVを視聴する習慣がなくなるだろうと予想しました。この流れは記事作成時点でさらに加速し、多くの人々がNetflixやDisney+といったストリーミングサービスを視聴しています。実際にPiltch氏の息子も、プライムタイムの番組を見る習慣を持っていないそうです。
◆14:FAX
Piltch氏は「息子がFAXを使うことはないだろう」と予想し、実際にこれまでの9年間で息子がFAXを使ったことはないとのこと。しかし、一部の企業や金融取引においてFAXが使われている現場もあり、この世からFAXが消えてしまったというわけではないとPiltch氏は述べています。
◆15:光学ディスク
2012年の記事では、Piltch氏は「息子が10歳になるまでに大手エンターテインメント企業がCDやBlu-rayの販売をやめる」と予想していましたが、記事作成時点では2022年までにほとんどの企業がCDやBlu-rayの販売をやめる可能性はありません。実際にBlu-rayより配信コンテンツの方が視聴する際に便利であるものの、物理的な光学ディスクには「実際に所有している」という感覚があるため、Piltch氏は今後もしばらく光学ディスクがなくなることはないだろうと考えています。
一連の予想結果から、Piltch氏は「必ずしも『ハイテクなもの』が最も使いやすいものとは限らない」という点や、「一度確立された技術が完全に消えるまでには長い時間がかかる」といった学びが得られるとコメント。また、子どもが学ぶ速度も決して過小評価できるものではなく、Piltch氏の息子は非常に早くからPCに触れていると述べました。