有田焼サウナストーンの作り方を聞いてきた
佐賀県とサウナイキタイがコラボレーションし、佐賀県の名産・嬉野茶を五感で味わえるイベント「サガサウナ」。佐賀県の魅力をサウナを通じて伝えたいと考える中で「有田焼をサウナストーンにできないか?」というアイデアが飛び出しました。そんな無茶な企画を快諾してくれたのが、佐賀県有田町で有田焼のタイルを作り続けるクラフトタイル社さん。
国内で流通しているサウナストーンは、ほとんどが輸入品。サガサウナのイベントに合わせて佐賀産サウナストーンを作るに当たり、どのようにして有田焼サウナストーンが完成したか、取材してきました!
※2020年2月に佐賀県にて取材した記事となります。
400年の歴史をもつ有田焼をサウナストーンに!
「そもそも有田焼ってサウナストーンになるの?石じゃなくていいの!?」なんて声が聞こえてきそうですが、実はバッチリ使えるんです。磁器は土を1,300度以上の高温で焼いて作られ、完成すると鉱物に匹敵する硬さになります。サウナストーブの表面温度は300〜400度程度なので、耐熱温度も耐久性もまったく問題ありません。サウナストーブの上で熱してロウリュすれば、しっかりと蒸気をあげてくれます。
ご存知のとおり有田焼は佐賀県有田町で発祥し、日本最初の磁器として400年以上の歴史を誇る伝統的な焼き物。素地が白いので鮮やかな絵付けができ、丈夫さと美しさの両面からいまも世界中で愛され続けています。そんな有田焼の伝統を受け継いでいる作り手のみなさんも、まさかサウナストーンとして注目される日が来るとは思っていなかったかもしれませんね。
今回、有田焼サウナストーンを作ってくれたのは、有田町で有田焼のタイルなどを製造しているクラフトタイル社さん。有田焼は器や皿のイメージがありますが、美しい仕上がりから建物の壁などにも使われているとのこと。有田焼のタイルがあることを今回初めて知りましたが、本当に素敵でした!無茶なオーダーにも関わらず、ご快諾ありがとうございます。
有田焼の“おにぎり”サウナストーンができるまで
「有田焼をサウナストーンにするって発想は、ぼくらにはなかったですね」と話すのは、クラフトタイル社代表の竹重さん。サウナもお好きで、よく入っているとのこと。
実は竹重さん、以前にも知人からの頼みでサウナストーンを有田焼で作ったことがあるとのこと。そんな酔狂なモノがすでに存在していたのか…!?と思われる方も多いでしょう。実は長野県のフィンランドヴィレッジにあるスモークサウナには、クラフトタイル社さんの有田焼サウナストーンが使われています。おそるべし、フィンランドヴィレッジ!
さて今回製作するサウナストーンは、おにぎり型でオーダーしました。「茶ロウリュにはやっぱりおにぎりでしょ!」という思いつきを口にしてみたら、佐賀県さんが一切止めずにGOサインを出してくれました。さすが、肝が座っています。積みやすくて意外と実用的な形状です!
まずは素材の切り出し。羊羹のような形にして、大きさを揃えていきます。しっとりとした粘土のような状態なので、指の力でも簡単に形が変わります。ここからおにぎり型に成形していきます。
「そしたら、これをにぎります」と竹重さん。えっ、手で握ってるんですか!?と一同驚愕。まさかのオール手作業。想像以上にアナログな製法でした。これは大変な作業だ…!工場でおにぎりを握っている人にしか見えなくて笑ってしまう。
せっかくなので、手ほどきを受けて握ってみました。しっとりしていて手が気持ちいい。土の密度が高いせいか、握るには思ったよりパワーがいる印象。たくさん作るには、かなりの労力がかかります。今回オーダーしたおにぎりサウナストーンは、全部で約200kg、およそ500個です。これを職人さんが全て手作りしてくれていると思うと、とても贅沢なサウナストーンですね。
形をととのえたら、次は色付け作業。今回は白、黒、オレンジの3色のサウナストーンを作ります。白は素材の色を活かしながらも更に白くするために釉薬を吹き付け、黒は土に色を混ぜて作ります。そしてオレンジは釉薬を吹き付けて着色していきます。
吹き付けるとこんな状態になります。鮭おにぎりですね。この状態でおよそ24時間ほど乾燥させてから、焼き入れの作業に移ります。
焼き入れ工程で現れたのは、巨大な釜!最大1,300度に達する超高温で、30時間ほどかけて焼きおにぎり…ではなくサウナストーンを完成させます。想像以上に長時間熱を加えるんですね。
熱源はガスで、釜の内部には炎が見えています。近寄っただけで汗が吹き出しそうな熱さです。昔は薪が主流で、今でも薪で焼き上げている作家さんも少なからずいるとのことでした。
ちなみに焼くものを底上げをしている理由は、熱を均等に加えるため。天井が丸くなっているのも、上部に溜まった熱を下部に対流させるためとのことでした。そう、お気づきかもしれませんが、良いサウナ室の構造と似ていますね。もう少し社長と仲良くなったら、焼き終わった後に「余熱サウナ」として釜に入らせてもらえないか交渉してみようかな…という妄想が脳裏をよぎりました。
握ってから3日目、ついに完成!
焼きあがって釜から出せば、ついにサウナストーンの完成!原料の土の状態から比べると、だいたい1割くらい縮むそうです。
有田焼のおにぎり型サウナストーンが並ぶ様は、圧巻の一言!ずっしりとした重みがあり、まさにサウナストーンそのものです。白いサウナストーンは混ぜ込んだ砂粒が現れて、ごま塩をふったおにぎりにそっくり。色付きのサウナストーンも斬新なビジュアルです。これで茶ロウリュできると思うと、わくわくしますね!
「伝統×サウナ」ミックスカルチャーの可能性
クラフトタイル社さんが有田焼のタイルを作り始めたころ、地域ではたくさんの会社が有田焼のタイルを生産していました。しかし時代の流れとともに減少していき、今ではクラフトタイル社さんが九州地域で唯一の作り手となってしまいました。
今回オーダーしたサウナストーンは、有田焼の歴史の中では異質かもしれません。それでも快く引き受けていただき、サウナカルチャーとコラボレーションできたことは、双方にとって面白い試みだったのかなと思います。
伝統が形を変え、サウナというフィルターを通して魅力が伝わっていく。大げさかもしれませんが、有田焼という伝統が少し身近になったような気がしました。サウナと日本の伝統、ミックスカルチャーが活発になれば、もっともっと面白いサウナが誕生するかもしれませんね!
温浴施設でサガサウナ体験!「どこかでサガサウナ」温浴施設さんにもご協力いただき、3月26日〜28日に嬉野茶ロウリュを体験できるイベント「#どこかでサガサウナ」を開催!有田焼サウナストーンも展示またはサウナストーブの上にあるかも!?
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