51歳の父、6歳の長男と昔のゲームで不思議な関係に<古泉智浩の養子縁組やってみた>
51歳の漫画家・古泉智浩さん。古泉さん夫婦と母(おばあちゃん)、里子から養子縁組した6歳の長男・うーちゃん、里子の3歳の長女・ぽんこちゃんという家族5人で暮らしています。
今回は、うーちゃんとゲームをめぐる新しい関係についてです。
6歳の養子の男の子、うーちゃんはポケモンが大好き。任天堂のSwitchでポケモンのゲームがしたいと言うのですが、まだゲームは早いと思うので買ってあげていません。
うちはただでさえ、おばあちゃんのスマホを自由に使っており、子どもにゲームを与えたときの影響は計り知れません。スマホではポケモンGOだけという約束なのですが、ポケモンGOに飽きるとこっそりYouTubeを見たり、ほかのゲームをしています。
「うーちゃん、スマホ見せて」
急に声を掛けるとびくっとして、カバーを閉じます。
「なにか隠した。見せてごらん」
「いやだ」
うーちゃんの手からさっとスマホを取り上げると、YouTubeでゲームかなにかの動画を見ています。
「うーちゃん、スマホはポケモンGOだけって約束だよね。動画見たり、ほかのゲームをしたりしていると、もううーちゃんにスマホを禁止にしないといけなくなるよ」
極力高圧的にならないように、優しく言葉を掛けるようにしているのですが、うーちゃんはイスに突っ伏して動かなくなってしまいました。
本人も後ろめたかったのでしょうか。怒るわけでも、反省の言葉を述べるでもなく無言です。僕は言い方がきついとママによく言われるので、もっと気をつけたいと思います。
さて、僕自身じつはモンスターハンターが好きなのですが、うーちゃんがうちに来てからかれこれ6年やってなくて、新作が3月の終わりに発売されるとのことで、やりたくて仕方がないわけです。
3歳の里子のぽんこちゃんも大分しっかりしてきたので、そろそろいいのではないでしょうか。
2月にイオンに行くと、品薄でなかなか買えないと評判のSwitchが売られていました。お! と思って、モンハンが発売になったらまた本体が買えなくなるのではないかと、衝動的に買ってしまいました。
とりあえずこれで遊ぶことができるのだけれど、自宅に持ち帰るわけにはいきません。仕事場として借りているアパートに保管しておくことにしました。
そうしてゲーム熱が高まっていた先日、納戸の片づけをしているとPS3が出てきました。東京でアパートを借りているときに使っていたもので、去年PS5が発売になったので2世代前のゲームです。
当時は新作で高かったゲームソフトが今や捨て値で売られていて、僕自身ゲームのアップデートをしていないので、僕にとってはいまだ最新ゲームです。
申し訳ないような気分で、当時大人気だったFALLOUT3というゲームを買ってこっそり部屋で遊んでいました。
そんな様子をうーちゃんに見られてしまいました。
「なにやってるの?」
「これはね、文明が崩壊した世界のゲームだよ。この人がパパで敵を倒しながらいろんなミッションをクリアしてるんだよ」
ゲームはポケモンくらいしかやったことのないうーちゃんが、食い入るように画面を見ています。ゲームが子どもを魅了する魔力のすごさをまざまざと感じます。
荒れ地を歩いていると巨大な蟻が襲い掛かってきます。それを野球のバットを振り回して倒します。
「パパすごいね」
「こうやって倒した後は、蟻の肉を取って自分の食料にするんだ」
さらに進むと、野蛮人のような敵が銃で撃ってきます。
「パパ、がんばれ」
敵に詰め寄って、バットで殴り倒します。そうして敵が持っていた武器や防具を奪います。
「撃たれたダメージがあるから、自分の家に戻ってベッドで寝て治すんだ」
街に入ると、ボロボロのバラック小屋のような街並みが広がっています。それを見たうーちゃんが、
「ボロボロだね。だけどすてきだね」
と言いました。
なにしろ文明が崩壊しているので非常に貧しくて非衛生的な暮らしぶりなのですが、だからこその解放感や気安さがあると僕も魅力を感じていました。
うーちゃんもそんな気持ちを感じてくれたことがうれしくて、「ほーっ」と思いました。
街を歩いていろいろな人に話を聞くと、この後のミッションに必要な情報を教えてくれることがあります。僕がしつこく質問を続けているとうーちゃんが
「この人もう行きたいんじゃない? あんまり聞くとかわいそうだよ」
と言いました。
「この人はおしゃべりだからいいんだよ」
「もう行こうよ」
もう少し話を聞きたかったのですが、うーちゃんがそう言うのでやめました。
そうして次のミッションでは地下の通路を歩き回って巨大なネズミを倒さずに調査するというもので、なにしろ倒してはいけないので、逃げ回るばかりです。
「こわいよ、もう出ようよ」
「それじゃ、ミッションがクリアできないよ」
などと言っているうちにネズミに襲われて僕が死んでしまいました。
まだ操作が難しくて漢字も読めないので、うーちゃんは自分で遊ぶことができません。僕がやっている様子を隣で見て、「次はこうしよう、あそこになにかあるよ」と指示するのがおもしろいようです。
夜はお風呂と食事をすませた後か、朝、保育園に行く前に支度を全部終えてから少しの時間、一緒に遊んでいます。
今はゲームが非常にいい効果を発揮していますが、この後自分でゲームを触るようになったらと思うととても不安です。アパートに置いてあるSwitchはどうしたものでしょう?
漫画家。1969年、新潟県生まれ。93年にヤングマガジンちばてつや賞大賞を受賞してデビュー。里子を受け入れて生活する日々をつづったエッセイ『うちの子になりなよ ある漫画家の里親入門
』、その里子と特別養子縁組制度をめぐるエピソードをまとめたコミックエッセイ『うちの子になりなよ 里子を特別養子縁組しました
』など著書多数。古泉さんの最新情報はツイッター(@koizumi69
)をチェック!
今回は、うーちゃんとゲームをめぐる新しい関係についてです。
ゲームが気になるうーちゃん。一方、ゲーム好きな古泉さんが密かに始めたこととは?
6歳の養子の男の子、うーちゃんはポケモンが大好き。任天堂のSwitchでポケモンのゲームがしたいと言うのですが、まだゲームは早いと思うので買ってあげていません。
うちはただでさえ、おばあちゃんのスマホを自由に使っており、子どもにゲームを与えたときの影響は計り知れません。スマホではポケモンGOだけという約束なのですが、ポケモンGOに飽きるとこっそりYouTubeを見たり、ほかのゲームをしています。
急に声を掛けるとびくっとして、カバーを閉じます。
「なにか隠した。見せてごらん」
「いやだ」
うーちゃんの手からさっとスマホを取り上げると、YouTubeでゲームかなにかの動画を見ています。
「うーちゃん、スマホはポケモンGOだけって約束だよね。動画見たり、ほかのゲームをしたりしていると、もううーちゃんにスマホを禁止にしないといけなくなるよ」
極力高圧的にならないように、優しく言葉を掛けるようにしているのですが、うーちゃんはイスに突っ伏して動かなくなってしまいました。
本人も後ろめたかったのでしょうか。怒るわけでも、反省の言葉を述べるでもなく無言です。僕は言い方がきついとママによく言われるので、もっと気をつけたいと思います。
●じつはゲーム好きの古泉さん。こっそりSwitchを買い、昔のPS3を起動します…
さて、僕自身じつはモンスターハンターが好きなのですが、うーちゃんがうちに来てからかれこれ6年やってなくて、新作が3月の終わりに発売されるとのことで、やりたくて仕方がないわけです。
3歳の里子のぽんこちゃんも大分しっかりしてきたので、そろそろいいのではないでしょうか。
2月にイオンに行くと、品薄でなかなか買えないと評判のSwitchが売られていました。お! と思って、モンハンが発売になったらまた本体が買えなくなるのではないかと、衝動的に買ってしまいました。
とりあえずこれで遊ぶことができるのだけれど、自宅に持ち帰るわけにはいきません。仕事場として借りているアパートに保管しておくことにしました。
そうしてゲーム熱が高まっていた先日、納戸の片づけをしているとPS3が出てきました。東京でアパートを借りているときに使っていたもので、去年PS5が発売になったので2世代前のゲームです。
当時は新作で高かったゲームソフトが今や捨て値で売られていて、僕自身ゲームのアップデートをしていないので、僕にとってはいまだ最新ゲームです。
申し訳ないような気分で、当時大人気だったFALLOUT3というゲームを買ってこっそり部屋で遊んでいました。
●ゲームを横で見て指示するのが楽しい!うーちゃんと古泉さんの不思議な時間
そんな様子をうーちゃんに見られてしまいました。
「なにやってるの?」
「これはね、文明が崩壊した世界のゲームだよ。この人がパパで敵を倒しながらいろんなミッションをクリアしてるんだよ」
ゲームはポケモンくらいしかやったことのないうーちゃんが、食い入るように画面を見ています。ゲームが子どもを魅了する魔力のすごさをまざまざと感じます。
荒れ地を歩いていると巨大な蟻が襲い掛かってきます。それを野球のバットを振り回して倒します。
「パパすごいね」
「こうやって倒した後は、蟻の肉を取って自分の食料にするんだ」
さらに進むと、野蛮人のような敵が銃で撃ってきます。
「パパ、がんばれ」
敵に詰め寄って、バットで殴り倒します。そうして敵が持っていた武器や防具を奪います。
「撃たれたダメージがあるから、自分の家に戻ってベッドで寝て治すんだ」
街に入ると、ボロボロのバラック小屋のような街並みが広がっています。それを見たうーちゃんが、
「ボロボロだね。だけどすてきだね」
と言いました。
なにしろ文明が崩壊しているので非常に貧しくて非衛生的な暮らしぶりなのですが、だからこその解放感や気安さがあると僕も魅力を感じていました。
うーちゃんもそんな気持ちを感じてくれたことがうれしくて、「ほーっ」と思いました。
街を歩いていろいろな人に話を聞くと、この後のミッションに必要な情報を教えてくれることがあります。僕がしつこく質問を続けているとうーちゃんが
「この人もう行きたいんじゃない? あんまり聞くとかわいそうだよ」
と言いました。
「この人はおしゃべりだからいいんだよ」
「もう行こうよ」
もう少し話を聞きたかったのですが、うーちゃんがそう言うのでやめました。
そうして次のミッションでは地下の通路を歩き回って巨大なネズミを倒さずに調査するというもので、なにしろ倒してはいけないので、逃げ回るばかりです。
「こわいよ、もう出ようよ」
「それじゃ、ミッションがクリアできないよ」
などと言っているうちにネズミに襲われて僕が死んでしまいました。
まだ操作が難しくて漢字も読めないので、うーちゃんは自分で遊ぶことができません。僕がやっている様子を隣で見て、「次はこうしよう、あそこになにかあるよ」と指示するのがおもしろいようです。
夜はお風呂と食事をすませた後か、朝、保育園に行く前に支度を全部終えてから少しの時間、一緒に遊んでいます。
今はゲームが非常にいい効果を発揮していますが、この後自分でゲームを触るようになったらと思うととても不安です。アパートに置いてあるSwitchはどうしたものでしょう?
【古泉智浩さん】
漫画家。1969年、新潟県生まれ。93年にヤングマガジンちばてつや賞大賞を受賞してデビュー。里子を受け入れて生活する日々をつづったエッセイ『うちの子になりなよ ある漫画家の里親入門
』、その里子と特別養子縁組制度をめぐるエピソードをまとめたコミックエッセイ『うちの子になりなよ 里子を特別養子縁組しました
』など著書多数。古泉さんの最新情報はツイッター(@koizumi69
)をチェック!