Google Mapのクチコミ低評価に怒る飲食店長「ほとんど嘘か思い込み」

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「我々の店に対するクチコミは、低評価が多いです。しかし、ほとんどが悪意ある嘘か、たんなる思い込みに過ぎません」

 東京都内の大手飲食チェーン店で店長を務めるAさんが憤る。

 Google Mapの機能「クチコミ」は、本当に信用できるのだろうか。飲食店にとって、Google Mapに書かれている評価は決して無視できるものではない。それが集客に直結するからだ。しかし、もしそのクチコミが嘘と誇張で固められたものだったとしたら――?

◆Google Mapのクチコミ「低評価」の信憑性に疑問

 そんなクチコミに頭を抱えるAさんの店舗は都内に所在し、新型コロナウイルスの影響も出ているとはいえ、毎日多くの客を集めている。そして日本の接客業の宿痾とも言える「客の声は絶対」の原則に、日々向き合っている。

「Google Mapのクチコミは、Googleアカウントさえあれば誰でも書けますよね? その店を実際利用したかそうでないかは関係なかったと記憶していますが、このあたりは間違いないですよね?」

 普段、IT関連の記事を執筆している筆者に対し、そう問いかけるAさん。その通りである。現状、Google MapのクチコミはGoogleアカウントを持っていれば、誰でも簡単に書き込むことができる。対象の店舗を実際に利用したか否かは問われない。

「現実問題、我々の店に低評価している人は本当にウチに来たのか分かりませんし、そうでなくとも個人的な逆恨みで低評価しているという例はあります」

◆鬱憤晴らしのクチコミ

 今の時代、どのような店舗にも必ず屋内カメラが設置されている。店員と客との間に何かしらのトラブルが発生した場合、まずAさんはカメラの映像を確認する。今のカメラは映像が鮮明になっているから、店員の接客態度や一挙手一投足がよく分かる。

「店員にこんな無礼な態度を取られた、こんな嫌がらせをされた、こんな不正をされた……。クチコミに書かれていることを全部上げたらキリがないのですが、それらのほとんどは誤解もしくは嘘です。その客がクチコミに書き込んだ直後に映像をチェックしても、結局は客の態度に問題があったという場合が多いですね」

 Aさんは「鬱憤晴らしで低評価を書き込む客」についても触れた。

「“他人を褒める”というのは、非常に難しい行為だと思います。その人の優れた点を抽出し、なおかつ“なぜ、どのように優れているのか”を解説しなければなりませんから。一方で“他人を貶す”のは本当に簡単です。幼稚園児でもできます。人なら誰しも持っている“至らない点”をひたすら酷評すればいいのです。そして、自分の利用した店舗を酷評することでストレスを発散している人は確かに存在すると確信しています」

◆クチコミは絶対ではない

 だが、そこにも「現実の壁」が立ちはだかる。そのクチコミが真実なのか嘘なのかを審議する術がない以上、大衆はクチコミに書かれている内容を重視する。低評価がそのまま集客の低下につながってしまう、という現実があるのだ。

「ただでさえ日本の接客業はカスタマーに逆らえないのに、真偽を検証できないクチコミにも圧迫されている状態です」

 飲食店に対するネット上の評価がいかにいい加減か、ということは海外のライターも検証実験を行っている。

 イギリスのライター、ウーバー・バトラー氏は旅行情報サイト『トリップアドバイザー』で『The Shed at Dulwhich』というレストランを掲載した。この店舗はバトラー氏が運営するものだが、実際は自宅の裏側にある物置小屋をレストランと偽った代物。飲食店として営業したことは一度もない。

 友達に頼んで、偽レストランへの高評価クチコミを書いてもらう。するとそのクチコミを見た人から予約希望の連絡が舞い込んでくるようになった。そしてバトラー氏の偽レストランは、トリップアドバイザーのクチコミランキングのトップに君臨してしまった。

 つまり、「クチコミは絶対ではない」ということは、頭の片隅に入れておくべきだろう。

◆投稿者の顔は知られている

 Aさんは最後に、こう強調した。

「クチコミに“店員がこんな無礼を働いた”ということが書いてあれば、我々は即座に事実確認を行います。これは信じてください。そして映像がある以上、たとえ匿名の書き込みでも“ああ、この客があのクチコミを書いたんだな”ということが分かってしまいます。そういう意味でも、ネットに匿名はあり得ないんですよ」

<取材・文/澤田真一>【澤田真一】
ノンフィクション作家、Webライター。1984年10月11日生。東南アジア経済情報、最新テクノロジー、ガジェット関連記事を各メディアで執筆。ブログ『たまには澤田もエンターテイナー』