通信大手3社によるスマホ新プランが話題を呼んでいる。ファイナンシャルプランナーの山崎俊輔氏は「今まで4人家族の場合、通信料が2万円超していたものが、『月額20GB 2980円』に切り替えると月約1万2000円に収まり、年間約10万円も家計が助かる。今後、格安スマホ会社の料金プランと天秤にかけて支出カットに努めるといい」と指摘する--。
写真=iStock.com/TARIK KIZILKAYA
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■スマホ新プラン「月額20GB 2980円」が向く人、向かない人

毎回、「あなたのお金の生存戦略」というテーマで寄稿をしていますが、2021年はその言葉の重みが確実に増している。新型コロナウイルスの不安が社会に広がり、給与や賞与の減少リスク、雇用への不安の増大、家計の維持が苦しくなっていく中、「節約」はこれまで以上に最重要になっている。そのカギとなるのは「スマホ代削減」。筆者はそう考えています。

家計において「通信費」=「固定電話代」ではなく「スマホ代」となって久しい。金額的にも固定電話の利用料金より、スマホの利用料金が上回る。

スマホ代については、今までは安易に削りにくかった。格安スマホ会社が一定の知名度を得ても、回線の品質不安などから、移行に踏み切れないユーザーも多かったのではないか。だが、「2021年は料金プラン見直しの年」となるかもしれない。

■NTTドコモによるahamo発表の衝撃

2020年12月3日、NTTドコモが新料金プランを発表したが、業界に大きな衝撃が走った。

ahamo(アハモ)という別ブランド名だが、NTTドコモが直接取り扱うブランドであり、かつ低コストだったからだ。

ポイントを簡単にまとめると

・20GBまで利用できる
・5分以内の国内通話無料
・4G/5Gどちらの回線も利用できる
・キャリアメールは提供しない
・手続きはオンラインのみ
・月額2980円(+税)

となる。

3大キャリアが提供するプランで20GBの大容量を提供するものとしては破格の値段である。たとえば現行の安値プランであるNTTドコモの5Gギガライトだと、月1980円で利用できるのは1GBまでだ。利用量に従い料金が上がるのだが、7GB利用すると月3980円まで上昇する。

低価格プランでは、MVNOなどの格安スマホ会社がしのぎを削っていた領域だった。ところが今回のahamoはこれらの料金プランにも勝負できるどころかむしろ優位に立つほどの設定なのだ。

ただし、この低料金プランはいくつかの前提を求めている。まず、ドコモショップでの手厚いマンツーマンサポートはない。サポートはオンライン(チャットはあるようだが)で基本的に完結させる。キャリアメールも提供しないので「docomo」のメールアドレスは使えなくなる。

■ahamoに向いている人、不向きな人

これを聞いて「まったく苦にならない!」という世代と「それは困る!」という世代に分かれるだろう。それがまさにahamoを選ぶかどうかの分岐点といえる。

NTTドコモは同時並行的に、店頭サービスについての料金見直しを進めている。例えば、ドコモと関係のないアプリの初期設定や引き継ぎについては有償化すると明示した。例えばFacebookやモバイルSuica、メルカリなどを設定する場合、ユーザーはその都度、1650円(税込み)払う仕組みだ。

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ドコモショップに出かけてみると、高齢者が長時間、スタッフを占有している姿を見かける。若者のほとんどは自力で問題解決をしており、店頭を利用していない(機種変更のときに2年に一度出かけるくらいかもしれない)。そうした若者は今回の低コストプランのまさにメインターゲットだ。

■SoftBank とau、対抗プランはどう出たか?

3大キャリアとして大幅な値下げプランを先行したNTTドコモに対して、12月22日にはSoftBankは対抗プランを発表した。

こちらはahamoへの対抗プランという位置づけを明確にしつつ、協業関係にあるLINEとの連携を強みに打ち出しているのが特徴だ。サービス名も「SoftBank on LINE」である。

プランの詳細は基本的にahamoに準じている。LINE経由での手続き可能であること、LINEに使うギガはカウントしないことなどが差別化のポイントだ。

auも1月13日に対抗プランを出した。こちらはなんと「月2480円」を打ち出している。ただし「5分通話話し放題」をつけると+500円となるので実質的には「2980円ライン」にそろえている。とはいえ、今さら通話をしないという人にはさらに月500円削ることができるプランだ。

■楽天モバイル他、格安スマホ会社はどう動くか

ahamoの打ち出した流れを放っておけないのは格安スマホ会社、MVNO業者たちだ。このまま放置すれば契約者が大量流出するのは目に見えている。

もともとMVNO系のプランは「2年しばり」のようなものがなく解約の自由度が高い。またユーザーの感度は高く、最新サービスの比較検討も動きが素早い傾向があるからだ。

日本通信は早速、ahamo対抗プランをぶち上げてきた。あえて「20GB 1980円」と1000円差をつけてMVNO利用者の引き留めを図っている。

来年春のahamoスタート時には各社が「20GB 月2980円」を意識しつつプランの競争を行うことだろう。

第4のキャリアとして地保を固めたい楽天モバイルがどう動くかも気になるところだ。自回線であれば2980円ギガ使い放題としており、「2980円」で肩を並べる。また、キャンペーンとして1年間無料としているところを2021年には期間満了のユーザーが出始める。有料課金開始時にユーザーが「楽天にとどまるのか、ahamoへ移るのか」という点も興味深い。

■4人家族なら、年10万円も通信費が安上がりになる可能性

読者の家庭においては、こうした競争の激化は魅力的な選択肢の増加であり、かつ通信費引き下げのチャンスとなる。2021年は「通信費引き下げの年」となりそうだ。

夫婦に子ども2人の家庭が全員スマホを所有していたとして、現状は、そのすべてをNTTドコモにまとめても、月2万円を超える(シミュレーションページで2万円を割る結果が出るが、6カ月間限定割引などが終了すると2万円を超える)。端末代を分割払しているなら費用はさらに増える。

それが、ahamoに切り替えると単純に2980円×4回線としても、月1万2000円(+税)に収まる。月8000円の差は年間で約10万円だから家計としては相当助かることになり、インパクトはかなり大きい。

対抗馬となるのは、MVNOの格安スマホ会社の料金プランで、ファミリープランがあるような場合だろう。ただし、料金ではさらに下がるものの、ギガはあまり多くもらえない。たとえばIIJmioのファミリーシェアプランはSIM4枚に対して月5000円台で利用できるものの、家族全員で12GBをシェアする格好なので、ネットを外で積極的に利用する子どもがいれば、ちょっと苦しいはずだ。ここは対抗プラン待ちだ。

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当面は「ahamoとahamo対抗プラン」を天秤にかけつつ、サービス開始を待ちたい。うまくいけば、家計の大きな支出カットが成功するだろう。

また「2年しばり」の契約をいまだ放置している場合、縛りのない現在のプランに変更しておくこともお忘れなく。

さて、ahamoは3月から本格受付開始としている。しかし早期エントリーをしておくと、dポイントを付与するプロモーションも開始しているようだ。ひとまずエントリーだけしておいて、さらにひとり3000ポイントをゲットする条件を確保しておいてはいかがだろうか。

2021年は暗いニュースが多い年明けだが、こと通信費だけは明るい年になりそうだ。

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山崎 俊輔(やまさき・しゅんすけ)
ファイナンシャルプランナー
フィナンシャル・ウィズダム代表。連載12本を数える人気コラムニスト。『マネーハック大全』など著書多数。
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(ファイナンシャルプランナー 山崎 俊輔)