パナマを相手に1対0で辛勝した日本。快勝と言える内容ではなかった。(C) JFA

写真拡大 (全2枚)

 オーストリア遠征の第1戦となった親善試合のパナマ戦は、1対0で勝ったけど、まったく納得できるような内容じゃなかったね。無失点で抑えた守備面はさておき、攻撃面での課題が解決していないのは明らかだよ。

 前半は立ち上がりこそ、セットプレーのチャンスで久保のクロスから橋本のヘディングシュートで決定機を作り出したけど、流れの中の連係からチャンスになる場面はほとんどなかった。柴崎と橋本のボランチコンビは後ろの方でばかりパスを回して、縦に入れるシーンは限られていたし、前線の久保や三好も足下でばかりもらいたがる。前半はゴールに背中を向けてプレーすることが多かったから、パナマも守りやすかったんじゃないかな。

 後半に入って、ドイツで絶好調の遠藤が投入されて、持ち前の球際の強さとタイミングのいい縦パスで流れを引き寄せた。その遠藤から久保への縦パスが起点となって、先制のPKにつながった。さらに、その後投入された浅野や鎌田は積極的に裏を狙うプレーを見せて相手のディフェンスラインを押し下げたから、中盤にも前を向く時間的な余裕ができた。相手が10人になったこともあり、終盤に向けて連係もよくなって展開はずいぶん日本ペースになったのは確かだ。

 それでも、結果を見ると1対0の僅差のスコアで終わっている。10月のオランダ遠征から何も変わっていない。結局、ゴール前でのクオリティという問題は残ったままなんだ。いくら遠藤がいい縦パスを送ろうと、サイドから良いクロスが上がろうと、ゴール前で仕留めることが出来なければ何にもならない。

 後半は何度か決定機と言えるチャンスがあったけど、外したシーンをよく見ると、相手に寄せられてバランスを崩したシュートしか打てていない。結局、それで枠を外したり、コースを捉えたシュートが打てなかったり……。GKとの1対1をモノにできなかったシーンもあった。これこそが、“質”が問われる部分なんだよ。決定力はゴール前でどれだけ質の高いシュートを打てるか。そうした勝負の明暗に関わってくるポイントで力を発揮できてこそ、質の高い選手と言えるんだ。

 パナマ戦のピッチ上に質が高い選手はいなかったね。

【動画】パナマ戦ハイライト! 遠藤、久保のラインから南野がPKゲット
 
 でも決定力の低さはいまに始まったことじゃない。こんなことは、この何年、いや何十年と言われ続けてきたことで、アジア以外の国際舞台で点が取れていないのは継続的な課題だ。だから本来、日本サッカーは点が取れる選手を生み出せる育成をしてこなければならなかったけど、そこへのアプローチがまだまだ十分じゃないということだ。

 これまで常々言ってきた事だけど、Jクラブの下部組織ができて、優秀な人材がそっちへ流れていったけど、果たしてそれで全体の競争力が上がったのかも疑問だ。いまだに代表には高校の部活上がりの選手も一定数がいるし、そういう現状を見ると、高校時代に激しい競争の中で揉まれてきた選手は昔より少なくなっているのは明らかだよ。だってJクラブの選手は日常的に高校の大会には出られないからね。こうした登録制度の問題も僕はずっと言い続けてきたよ。

 森保監督は、10月遠征の時から3バック、4バックとシステムを試したり、なるべくいろんな選手を見て、いろんな組み合わせを試したいという趣旨の発言をしてきたけど、真の問題はそこじゃないんだ。はっきり言って、選手の質だよ。どんな選手を使っても、どんなシステムを採用しても、1試合に1点取れるか取れないかじゃ、選手の質の問題というほかない。試合後のコメントがはっきりしない森保監督も、そう言えばいいんじゃないのかな。

構成●サッカーダイジェストWeb編集部