ダイドードリンコの「自販機」戦略がスゴすぎる…! その知られざる実態 「DyDo」社長が明かす

写真拡大 (全3枚)

「ダイドーブレンド」シリーズのコーヒーや「さらっとしぼったオレンジ」などで知られるダイドードリンコを取材した。国内の飲料の売り上げは約1200億円超、そのうち自動販売機での売り上げ比率が80%以上を占め、独自のポジションを築いている。元は大同薬品工業の清涼飲料部門だったが'75年に分社化した。ちなみに、「DyDo」というロゴの由来は「ダイナミック(Dynamic)」と「ドゥ(Do)」を合わせたもの。創業家出身の高松富也社長(44歳)に話を聞いた。

「現場の汗が、会社の生命線」

当社は自販機の運用担当を「ルート担当者」と呼んでおり、長年蓄積してきた自販機の運用ノウハウが貴重な財産になっています。

商品を売り切れにしないのはもちろん、オフィスに設置してあるならミネラルウォーターの「miu」を、工事現場の近くならコーヒーを多めに並べるなど、全国に約27万台ある自販機の品揃えや見せ方を細かに変えています。

photo by iStock

さらに、ルート担当者のトラックには清掃道具が積んであり、当社自販機だけでなく、周囲も清掃します。この丁寧な対応を、効率的に行うことが難しいのです。現場の汗が当社の生命線。ここまでやる会社は少ないと自負しています。

特に推したい商品は「ダイドーブレンド」シリーズのコーヒーです。工事現場の方やドライバーの方がグッと飲み干し「さあ!」と仕事に向かっていく時に愛されてきた商品で、当社も「ダイドーブレンド」の売り上げと共に成長してきました。

成分表示をご覧いただければわかる通り、香料は一切使っていません。一方、最近では自販機がオフィスに設置される例が増えてきて、食事の糖や脂肪の吸収を抑制する「大人のカロリミット」茶シリーズがよく売れるようになりました。

商品開発は面白く、努力はお客様にすべて伝わります。コーヒー豆の産地や生産機械、さらには時代が求める味に合わせレシピを変えており、味がよくなると売り上げも伸びるのです。

自らの足で歩んできた道のり

創業家の生まれとはいえ、育ちはいたって普通です。就職についても親の口添えなど一切なく、大学卒業後、自ら選んで三洋電機に入社しました。

ちなみに当時、当社の自販機は三洋電機がつくっていたのですが、私はそれを知らなかった。三洋側も、私が入社してから初めて「もしかしてダイドーの息子さん」と気づいたようです。

当社に移ってからは、私もルート担当者と一緒に自販機のオペレーションを行いました。夏は汗まみれになり、冬は手がかじかみます。雨の日、飲料を入れた段ボールが水を含んで底が抜け、ガラガラ転がる缶を集めながら「せっかくの商品を台無しにしてしまった」と落ち込んだこともありました。

photo by iStock

しかし、あの経験があったからこそ、現場からの報告も相談も苦労話も、実感を持って捉えられるのです。

「柔軟さ」をもって海外市場へ

目標は、自販機の運営をより効率化していくこと。そして、現状では10%程度の海外売り上げ比率を倍増させることです。

海外市場で売り上げを伸ばすポイントは、現地の変化にスピード感を持って対応していくことだと思っています。たとえば、冬のモスクワでは温かい缶コーヒーが売れそうなもので、我々もロシアの方が缶を両手で包み、美味しそうに白い息を吐く姿を想像していました。

ところが、実際に売れているのは、炭酸飲料や水だったのです。ロシア進出後に「モスクワでは服も建物も防寒対策がバッチリだからこそ、冬でも冷たい炭酸飲料が好まれるのだ」と気がつきました。

最初は試行錯誤がいりますが、こうして柔軟に動いていけば、いつかは成功につながるはず。今は、マレーシアやトルコなどでも商品を販売しています。

日本の元気は、地方の元気から

ルーチンワークは、週に2〜3回、10km程度走ることです。毎月100km前後走っている計算になります。

趣味は全国各地のお祭り巡り。当グループは全国の地方局が制作したお祭り番組の中から優秀な作品を厳選し、BSで「ダイドーグループ日本の祭り」という番組を提供しています。言うまでもなく、日本の元気は地方の元気から生まれます。

各地のお祭りを訪ねると、地元の方の「文化を守ろう!」という思いに胸打たれ、改めて「この企画を地道に続けていこう」と思わされます。

自販機にできることを探し求める

当社の自販機は「おしゃべり機能」を装備しており、購入時のご挨拶はもちろん「おおきに!」などと方言にも対応するほか、オリジナルメッセージも吹き込めます。

photo by istock

実は、当社の社内に設置してある自販機は、私から社員へのメッセージをしゃべります。経営者や総務の方には、ぜひオフィスにダイドーの自販機を設置することをおすすめします。自販機一台で、経営理念を伝えることも、ねぎらうこともできるのです。

当社はコーヒーの鮮度から焙煎までこだわり抜き、自販機にできることを絶えず探し続けています。あの「ありがとうございました」という声には、我々の真心がこもっているのです。(取材・文/夏目幸明)

高松富也(たかまつ・とみや)
'76年、奈良県生まれ、少年時代は野球少年でプロを目指す。'01年に京都大学経済学部を卒業し、三洋電機に入社。'04年にダイドードリンコ入りし、自販機の運用、設置場所の拡大、商品開発等を行い、'09年から常務取締役、取締役副社長等を歴任、'14年に同社代表取締役社長に就任し、以来現職

『週刊現代』2020年9月5日号より