バルセロナについて語った宮澤ミシェル氏

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バルセロナについて語った宮澤ミシェル氏
サッカー解説者・宮澤ミシェル氏の連載コラム『フットボールグルマン』第167回。

現役時代、Jリーグ創設期にジェフ市原(現在のジェフ千葉)でプレー、日本代表に招集されるなど日本サッカーの発展をつぶさに見てきた生き証人がこれまで経験したこと、現地で取材してきたインパクト大のエピソードを踏まえ、独自視点でサッカーシーンを語る――。

今回のテーマは、バルセロナについて。メッシの去就問題や新監督のロナルド・クーマン監督による改革など、例年以上に注目を集めたバルセロナの新シーズンがいよいよ開幕する。そんな、バルセロナが直面している問題点などを宮澤ミシェルが語った。

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バルセロナの2020−2021シーズンが、今週末からいよいよ始まるね。初戦からその動向にこれほど大きな注目が集まったことはなかったんじゃないかな。

ビジャレアルの久保建英が、育成年代を過ごした古巣と初対戦するということもあるけれど、やっぱり注目される理由はメッシだよな。

退団を一旦は封印したけれど、今シーズンがバルサのユニフォームに袖を通す最後になる可能性はあるからね。

2004年にデビューしてから16年間を過ごしたクラブを去るのか、それとも翻意するのか。それはすべて今シーズンの戦いで決まるんじゃないかな。

バルセロナは今季からクラブのレジェンドであるロナルド・クーマンを監督に迎えると、新監督は就任早々にこれまでのバルサを支えてきた中心選手たちに戦力外通告をするなど改革を断行した。

イヴァン・ラキティッチがセビージャへ、アルトゥーロ・ビダルがインテルへ去ったけど、もっとも驚いたのはルイス・スアレスを戦力外にしたことだよな。

昨季は故障があったとはいえ、それでもリーグ戦28試合で16得点、CLなどの公式戦を含めれば36試合21得点のストライカーの放出しようってんだから、クーマン監督には確固たるビジョンがあるんだろうね。

シャビやイニエスタが抜けてからのバルセロナの問題点は、ボールをポゼッションするスタイルのサッカーを取りながらも、実際には中盤に起用する選手は、ボールを繋ぐ能力よりも、ボール奪取能力に長けた選手を置いたことにあるよな。

メッシが守備ではまったく機能しないことの負荷を、ラキティッチやビダルが担ってきた。だけど、これだとパスが自由自在につながるわけではない。どうしても歪みが生まれてしまった。

それでもラ・リーガの戦いなら"違い"を発揮できたけど、CLではベスト8以降の戦いになると相手のクオリティーも高まるから、そこを突かれてしまったんだよな。

逆の見方をすれば、バルサほどの育成組織を持っていても、世代交代は容易くないってことでもある。若手を育てるために成績が落ちてもいいってのなら話は別だけど、それが許されないのは世界屈指のビッグクラブが背負う宿命だからね。

プレシーズンでのクーマン監督は4−2−3−1を基本フォーメーションにし、メッシを1トップやトップ下で起用。バイエルンから復帰したフェリペ・コウチーニョを左サイドやトップ下に使い、右サイドや1トップでアントワープ・グリーズマンを据えた。

そこに17歳のアンス・ファティや、怪我から復帰のデンベレ、そして新戦力の20歳のフランシスコ・トリンコンが絡んでいくんだろうけど、課題はこの布陣で相手に押し込まれたら守れるのかってことだよな。

ブスケツとデ・ヨングが守備的MFのファーストチョイスになると思うけど、ブスケツはスピードへの対応に不安があるからね。ユヴェントスから加わった30歳のミラレム・ピアニッチは実績ある選手だけど、ベティスから復帰の22歳のカルレス・アレニャや、新戦力の22歳のマテウス・フェルナンデスがどれくらいのクオリティーを発揮できるか。控えの彼らがブスケツの座を脅かすほどになれれば、おもしろいことになるんだけどね。

バルセロナは日本時間で9月27日(日)にホームにビジャレアルを迎えるけど、その2節後には昨季4位のセビージャと対戦し、10月末にはレアル・マドリードとのクラシコが待っている。

初戦のビジャレアル戦は前監督との契約問題の関係でクーマン監督がベンチ入りできない可能性があるらしいけど、クラブのなかがゴタゴタしていては選手たちの集中を削ぐことになりかねないから、早くスッキリしてもらいたいね。

悠長に構えていたら、メッシに愛想を尽かされて冬の移籍期間に出ていかれちゃうなんて事態にならないとも限らないんだから。

構成/津金壱郎 撮影/山本雷太