「マツダは他とは違う!」 激戦SUV市場で個性発揮する「CX-30」の魅了とは
CX-30は三者三様のパワートレインで個性際立つSUV
最近の新型モデルでは、ガソリン車とハイブリッド車をラインナップするのが一般的です。それはSUVでも例外ではありません。
一方でマツダのコンパクトSUV「CX-30」には、ガソリン車、ディーゼル車、そしてマツダ独自のエンジンという3タイプのパワートレインが搭載されていますが、それぞれの個性はどのような部分なのでしょうか。
今回、異なるパワートレインを乗り換えてパワートレインを比較しながら合計で600km以上を走る機会があったので、その印象の違いや購入時に選び分けるポイントを紹介していきます。
【画像】情緒ある宿場にマッチ!? 美しいCX-30をささっと見る(24枚)
まずは、CX-30について概要をおさらいしましょう。マツダのSUVラインナップとしては「CX-3」よりも大きく、「CX-5」よりは小さなボディサイズ。
全長4395mmでいわゆるCセグメントです。コンパクトSUVに位置づけられますが、ホンダ「ヴェゼル」や日産「キックス」、そして注目のニューモデルであるトヨタ「ヤリスクロス」などに比べるとひとまわり大きいポジションで、ボディの大きさ的にはトヨタ「C-HR」に近い立ち位置です。
ボディ設計は、ホイールベースは短くなっているもののマツダのハッチバック「マツダ3」と共通部分が多く、兄弟に近い関係といっていいでしょう。
日本仕様は全高を1540mmに抑え、機械式立体駐車場に入庫が可能なプロポーションとしています。
パワートレインは「SKYACTIV-G」と呼ぶ排気量2リッターガソリンエンジン、「SKYACTIV-D」の1.8リッターディーゼルエンジン、そして特殊な燃焼方式を採用した2リッターガソリン「SKYACTIV-X」の3タイプ。
SKYACTIV-Xの火花点火制御圧縮着火という燃焼方式は、量産車としてはマツダが世界で初めて実用化したもので、パワートレインのハイライトです。
果たして、実際に乗り比べてみてその印象の違いはどうでしょうか。
まずはSKYACTIV-G。排気量の割には低中回転域のトルクが厚く感じられ、高回転までスムーズに上昇するので気持ちよく走ります。もちろん音も静かです。
そこからディーゼルの「SKYACTIV-D」に乗り換えると、動き出す前から違いを感じます。
アイドリング時にガラガラとしたディーゼルらしい音がし、乗員に伝わる振動も少々大きめ。
ただし走り出せばそういったディーゼルならではのネガな部分は収まり、力強い発進加速などディーゼルの良さが際立ちます。
ガソリンエンジンと違って高回転域の爽快な吹け上りはありませんが、低い回転数を保つ高速巡行は快適そのものでした。そしておとなしく巡行すれば20km/Lを楽に超える高速燃費にも驚かされます。
注目のSKYACTIV-Xは、ガソリンとディーゼルの良さを併せ持つような印象を受けました。たとえば発進時はガソリンよりも力強く、いっぽう高回転はディーゼルよりもスムーズに回転が上がります。
街中ではSKYACTIV-Gよりもアクセルの踏み方に素直に反応して乗りやすく、やや排気量が増しているような感覚です。
一方の峠道などでは、絶対的なパワー感などに特筆すべきものは感じられませんでしたが、コーナーからの立ち上がりでアクセルを踏み込んだときの滑らかなエンジン回転上昇は独特の気持ち良さがありました。
このあたりのフィーリングがSKYACTIV-Xの真骨頂といっていいでしょう。
3つのパワートレイン。選ぶポイントとは
さて、それでは3つのパワートレインをどう選び分けたらいいでしょうか。
間違いないのは、長距離を走ることが多いユーザーならディーゼルのSKYACTIV-Dを選ぶべきということです。
燃費が良いうえに燃料である軽油の価格も安いので、燃料代が安く収まります。また、アイドリング時にはやや耳障りに感じるエンジンも、市街地でストップ&ゴーを繰り返すのではなく高速道路や郊外路を走り続けるのであればまったく気になりません。
やや高い車両価格も走行距離が延びれば燃料代で逆転できるので、よりメリットが光ります。
ガソリンのSKYACTIV-Gは、リーズナブルにCX-30を手に入れたい人や、街乗りがメインであまり走行距離が伸びない人にマッチしています。何の不満もなく、SUVライフが送れるでしょう。
難しいのはSKYACTIV-Xです。たしかにエンジンのフィーリングは通常のガソリンエンジンよりも優れているし、実燃費もそれより15%程度いい感触。
優れたパワーユニットであることは認めます。しかしながら、ガソリンのSKYACTIV-Gに対して約60万円高い価格は悩ましいところ。
その価格に見合う、わかりやすい見返りを期待するのは難しいというのが正直な印象です。
では、SKYACTIV-Xを買うべきは、どんなユーザーでしょうか。
それは、食べ物に例えるとお寿司や鰻で「特上」をオーダーするのに似ていると思います。
コストパフォーマンスに優れる「上」ではなく、さらなる金額を払ってでも、よりおいしいもの、より満足感の高いものをセレクトする心意気。数字のようなわかりやすい基準で評価してはいけないのです。
それはいい換えれば、アクセル操作に対するフィーリングで味の違いを理解できる「玄人向け」といっていいでしょう。そう考えるとSKYACTIV-Xの立ち位置がわかりやすいかもしれません。