「世帯月収50万でも赤字」DINKS浪費の元凶はPay系とコンビニ飯
■貯金できない…手取り月収約50万円の共働き夫婦の「お金体質」
「ふたりの手取り月収は計50万円近いのですが、なんだか銀行残高の減りが早くて、お金が全然貯まらないんです」
都内在住の会社員Tさん(40)が共働きの妻(39)をつれて家計相談にやって来ました。
手取り月収は順に約29万円、約20万円です。十分な収入ですが、貯金ゼロの状態が続いているとのこと。どこに問題があるのでしょうか。
ふたり仲良く楽しくDINKSライフを送りたい。ただし、ほどよく節約しながら。そうした考えのもと、Tさん夫婦は、常に「お得感」を意識した買い物を信条としてきたそうです。
ところが、近ごろ、クレジットカードの請求額が多くなっています。以前は毎月3万〜4万円の貯金ができており、貯蓄も現在240万円あるのですが、最近はほとんどできないか、赤字になる月もあるそうです。
■「お得感」重視の買い物の落とし穴
「おそらく使いすぎている状態にあるのだろう」とTさんも妻も思っているのですが、原因がわかりません。あくまで「お得な買い物」を貫いているだけなので、「どこを削ればよいのかわからない」と訴えます。
聞けば、いくらお得だからといっても、一度にたくさん買い込んでいるわけではない。基本的に生活に必要なモノを入手しているだけ。最近、冷蔵庫など白物家電の買い替えはしたものの、これは計画通りの購入でした。ですから、何が原因で、銀行残高の減りが早いのか皆目見当がつかないと言うのです。
ただ、さらに聞いていると、「支払い方法」が変わったことが家計に影響を与えた可能性があることがわかりました。
きっかけは2019年10月の消費増税に伴う、キャッシュレス・消費者還元事業や、スマホ決済アプリなどに関連するキャンペーン。「同じものを買うのなら、ポイント還元、キャッシュバック、割引を受けられたほうがよい」ということで夫婦の意見は完全一致。メリットを享受するべく、スマートフォン決済中心の支払いにすることにしました。
複数のスマホアプリを夫婦それぞれがインストールし、活用。昨秋以降、現金で支払うことはほとんどなくなったそうです。
■「キャッシュレス決済の還元」に釣られて、想定外の浪費
スマホ決済アプリは、消費増税時のキャッシュレス・消費者還元事業によるポイントバックをきっかけに普及しました。クレジットカードやデビットカードなど俗にいうプラスチックカードに加え、スマホ決済もじわじわと増えていきました。
Tさん宅の支払い方法がキャッシュレス決済に変わったことで家計状況が悪化したということは、いったい何を意味するのでしょうか。
これは、住宅ローン返済や口座引き落としなどの「固定費」は変わりない半面、食費や日用品といった日々の財布から支出する「変動費」の管理が増加したということです。つまり、支出の仕方が変わったことにより、管理が十分にできなくなってしまっているということです。
実際、キャッシュレス決済が活用されることが多くなるにつれ、その「管理」に悩む人々からの相談が急増しています。今まで現金決済が中心だった私たち日本人は、その管理に不慣れであるため、混乱しがちなようです。使っているつもりはないのに、全部の決済を合わせてみると、いつもよりも支出が多くなっていたという家計もよく見かけるようになりました。
■もっとも多く利用するのは「LINE Pay」「PayPay」
Tさん宅の支払い状況を詳しく聞きました。
もっとも多く利用するキャッシュレス決済は「LINE Pay」でした。LINE Payには「LINE Payカード」というプリペイドカードがあり、残高や支払い履歴を共有して利用できます。つまり、スマホアプリのLINE Payが使えればLINE Payカードで支払うことができるので、チャージ額を把握しておけば支出の管理が楽になるのです。
その次によく利用しているのが、「PayPay」です。PayPayのサービス開始当初は20%還元キャンペーンをしていて、パソコンを購入してかなりのポイント還元を受け、「おいしい思いをしました」(Tさん)。今ではそのような極端な還元はされませんが、利用できる店が多いので、手持ちのクレジットカードと連携させ、チャージ残額を気にせず使えるところも気に入っています。
他にも、楽天ペイ、メルペイ、d払い、auPayなどをスマホにインストールし、クレジットカードと紐づけて利用しています。それぞれにキャンペーンなどがあり、お得であると自覚しています。
Tさん夫婦は、スマートな支払い&「お得」追求の観点から、キャッシュレス決済を積極利用しているわけですが、やはりポイントやキャッシュバック、割引に関して過剰な期待をしすぎている感がぬぐえませんし、お金の管理も十分にできていないように思います。
還元された分があるから「少しくらい多めに使っても大丈夫」といった気のゆるみもありそうです。こういったことがお金の使い過ぎにつながっているのではないかとお見受けしました。
■「お得さ」に流されて、収入と支出のバランスが崩壊
具体的な支出の状況を聞き、支払い履歴を見ながら支出の総額を出していくことにしました。
食費(月10万3000円)、被服費(同2万8000円)、交際費(同2万3000円)を中心に、支出がかなり多くなってことがわかりました。前述のように、キャンペーンに乗って、ポイントがたくさん得られるうちに買おう、使おうということが原因です。
クレジットカードと紐づけられないLINE Payなどは、残高がないと不安になり、少なくなるとすぐチャージ。貯まったポイントもすぐに使えるので、コンビニ利用が増えたといいます。無計画にチャージしては支払いに使うというプロセスを繰り返して支出が増えてしまったのです。他のアプリも同じように使っていました。
家計の鉄則として言えるのは、クレジットカードであれスマホのアプリ決済であれ、お金の支払い方が変わっただけで管理の仕方は現金と同じだということです。いわばお金の形が変わっただけなのです。「お得さ」に流されて、収入と支出のバランスをチェックしわすれてはいけません。
■弁当、飲料品……「コンビニ」でアプリ決済三昧のツケ
Tさん宅の家計簿をさらに詳細にチェックすると、買い物の仕方が変わったことも判明しました。「コンビニでの買い物」が急増しているのです。コンビニは2%引きで買い物ができる(2020年6月30日まで)ということで、どうやらいつもより1、2点多く買いものカゴに入れていており、買い物をする頻度も増えていました(特に、コンビニ弁当などの飲食品の購入)。
Tさん夫婦には、支出を正常な状態に戻すために、コンビニの利用の仕方も見直ししてもらうとともに、主に使うアプリを定めてもらうことにしました。あちこちに支払い記録が残っては、把握しにくいからです。そして、それに紐づける口座、クレジットカードを紐づけるのならその支払いをする口座を1つにまとめ、わかりやすくすることにしました。これで、キャッシュレスでの決済と、口座からの支出、両面から支出状況を把握できます。
無理に還元を狙うのではなく、生活の中で自然に得られるポイントを家計に還元していくということで節約につなげていく消費スタイルに変更するのが狙いです。
その結果、食費(月10万3000円→6万6000円)、被服費(同2万8000円→6000円)、交際費(同2万3000円→1万8000円)と大幅に減額することができ、家計簿は劇的に改善されました。毎月ほとんど貯金できないか赤字だったものが、コンスタントに月約8万円も貯められるようになったのです。
一般的に、それまできちんと家計管理ができていても、「支出の仕方が変わった」「支出状況が把握しにくくなった」ということでそれが乱れてしまうことがあります。
最近はAI、フィンテックなどテクノロジーにより様々なことが変わりました。そして、お金の在り方も変わってきています。こういった時代の変化に適応していかなければ暮らしにくくなるという時代も来るでしょう。つまり、お金を使う側の感覚も日々アップデートしていくことが、浪費をなくし、お金の管理をするコツだと言えるでしょう。
■最大−3.7万円【メタボ家計 コストカット額ランキング】
コンビニでの無駄な支出や、ポイント狙いのスーパーでの買い物のしすぎを改めた
2位 −2.2万円 被服費
キャンペーンで「20%のポイントバック」などに惹かれ、買いすぎてしまっていた
3位 −0.7万円 娯楽費
書籍やゲームの購入が増えていたので改めた
4位 −0.5万円 日用品代
ドラッグストアでも知らず知らずに買い物をしすぎていたことに気づいた
4位 −0.5万円 交際費
割り勘しやすいからと回数が増えていた飲み会を1〜2回減らした
6位 −0.2万円 その他
サブスク契約の動画を一つ減らした
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横山 光昭(よこやま・みつあき)
家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表
お金の使い方そのものを改善する独自の家計再生プログラムで、家計の問題の抜本的解決、確実な再生をめざし、個別の相談・指導に高い評価を受けている。これまでの相談件数は2万3000件を突破。各種メディアへの執筆・講演も多数。著書は60万部突破の『はじめての人のための3000円投資生活』や『年収200万円からの貯金生活宣言』を代表作とし、著作は120冊、累計330万部となる。個人のお金の悩みを解決したいと奔走するファイナンシャルプランナー。
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(家計再生コンサルタント、株式会社マイエフピー代表 横山 光昭)