人種差別的だとして『風と共に去りぬ』米で配信停止
アカデミー賞で作品賞など8部門に輝きアメリカ映画の古典とされるも、黒人の描写や奴隷制の肯定など長年物議を醸してきた映画『風と共に去りぬ』(1939)が、米動画配信サービス「HBO Max」で一時配信停止となった。
現在アメリカでは、白人警官の暴行で黒人男性ジョージ・フロイドさんが死亡した事件を受け、国を挙げて人種差別への抗議デモが行われている。そんな中、想像を絶する黒人の奴隷生活を描いた『それでも夜は明ける』のオスカー脚本家ジョン・リドリーが現地時間9日、HBO Max は同社のプラットフォームから『風と共に去りぬ』を「取り下げることを検討すべきだ」という論説を LA Times に寄せることになった。
リドリーいわく同作は「南北戦争前の南部を美化し、奴隷制度の恐ろしさを無視し、黒人をひどいステレオタイプで描いたもの」であり、「南軍をロマンチックなものとして描くことで、脱退派(南軍)の活動は善く、高貴なものであったという考えに正当性を与え続けているのです。本当は彼らが人間を所有し、売買する“権利”を持ち続けるための恐ろしい戦いなのに」と訴えた。
これを受けて、HBO Max は『風と共に去りぬ』の一時配信停止を決定。同作はアメリカ社会において人種的偏見が普通のことだった時代の産物ではあるものの、人種差別的な描写は間違っており、それを何の説明や批判もなしに配信することは無責任だと考えたのだという。編集を加えたりすれば「偏見などなかったと主張することと同じになってしまう」ため、映画はオリジナルのままで、歴史背景の説明と問題の描写への批判を付けた上で再配信する予定だとしている。
『風と共に去りぬ』は、南北戦争前後のアトランタを舞台に、スカーレット・オハラの波乱万丈な半生を壮大なスケールで描いた映画。第12回アカデミー賞ではハティ・マクダニエルさんが黒人として初めてオスカーに輝いた(助演女優賞)が、The Hollywood Reporter によると当時のアカデミー賞でも人種隔離が行われており、彼女は白人の共演者たちとは別の、後ろの方のテーブルに着かされていたという。
アメリカでは、ジョージ・フロイドさん死亡事件を受けて、警察密着ドキュメンタリー番組「全米警察24時 〜コップス」の打ち切りも決定している。(編集部・市川遥)