オーストラリアのモナッシュ大学など3校の共同開発により、通信速度が44.2Tbpsに達する光学チップが開発されました。この通信速度は、単一の回線の転送速度としては世界新記録とのことです。

Ultra-dense optical data transmission over standard fibre with a single chip source | Nature Communications

https://www.nature.com/articles/s41467-020-16265-x

Recording the world's fastest internet speed from a single optical chip - Scimex

https://www.scimex.org/newsfeed/australian-researchers-record-worlds-fastest-internet-speed-from-a-single-optical-chip

Engineers Successfully Test New Chip With Download Speeds of 44.2 Terabits Per Second

https://www.sciencealert.com/this-optical-chip-could-allow-us-to-download-1000-high-definition-movies-per-second

Researchers claim new internet speed record of 44.2 Tbps - The Verge

https://www.theverge.com/2020/5/22/21267321/broadband-internet-speed-record-australia-researchers-micro-comb-fiber

オーストラリアのモナッシュ大学、スウィンバーン工科大学、ロイヤルメルボルン工科大学の研究チームが共同開発した「光マイクロコーム(optical micro-comb)」の写真が以下。サイズは短辺5mm×長辺9mmで、一緒に映っている2オーストラリアドル硬貨(直径20.5mm)の半分未満の長さしかありません。

研究チームが開発した光マイクロコームは、80の個別のレーザー光を単一の信号発生装置に置き換えることにより、同時に複数の周波数の光でデータを送信できるようにしたもの。研究チームが実際に光マイクロコームを使用して、オーストラリアのメルボルンに敷設された長さ76.6kmの光ファイバー回線で通信速度をテストしたところ、データ転送速度は44.2Tbpsに達しました。これは、HD画質の映画1000本、4K映像をサポートする容量100GBのUltra HD Blu-rayディスク50枚分に相当するデータを1秒間で転送できる速度とのことです。



スウィンバーン工科大学光学科学センターの所長であるデビッド・モス教授はこのテスト結果について「私がマイクロコームを最初に作ってから10年がたつ間に、マイクロコームは非常に重要な研究分野となりました。1本の光ファイバーを使っての帯域幅の世界新記録を樹立したことにより、世界中における飽くなきインターネット需要を満たすことができる大きな可能性が示されています」とコメント。

また、ロイヤルメルボルン工科大学のアーナン・ミッチェル特別教授は、「マイクロコームは当面、データセンター間の超高速通信に使われるでしょう。しかし、この技術が十分低コストでコンパクトになれば、世界中の人々が利用できるようになるのは想像に難くありません。その実現のために、将来的には既存の光ファイバーネットワークで、このレベルの通信を最小限のコストで行えるような光学チップを作りたいと考えています」と話しました。

さらにマイクロコームの将来性について、モナッシュ大学で講師を務めるビル・コーコラン博士は「これは単にNetflixが便利になるというだけのことではありません。この技術は、自動運転車といった未来の交通機関に利用できますし、医療、教育、金融、電子商取引産業などの分野での活用も見込めます。また、人工光ニューラルネットワークを用いたAIのような、いわば『考える光』の実現といった新境地の開拓も可能です」と述べて、さらなる研究開発に意欲をのぞかせました。