保育士、性風俗、非常勤講師...それぞれの窮状 「支援の必要性」会見で訴える
ライブストリーミングサイト「DOMMUNE」(ドミューン)は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で苦しい立場にある業界の労働者や経営者らによる「#SaveOurLife記者会見」を2020年5月7日に配信した。
教育、保育、性風俗など様々な分野の当事者が窮状を伝えるとともに、支援の必要性を政府に訴えた。
「勤務実態なし」で給与0円
記者会見を主催したのは、新型コロナウイルスの影響で休業する文化施設に対し、国からの助成金を求める目的で始まった署名活動「#SaveOurSpace」。会見場は東京・南青山にある休業中のライブハウス「月見ル君想フ」で、新型コロナウイルスの影響を受ける各界の参加者たちが、リモート映像や文書などを通じて思いを語った。
Nakayama Yoshikoさんは、厳しい待遇で業務を強いられる非常勤講師の実態を明かした。
Nakayamaさんは3つの非常勤先を持っているが、教育機関の休校を受け、ある非常勤先の4月の給与が「勤務の実態がない」として0円になったと話す。市民講座を担当する友人も収入が断たれ、コマ数が減ったり休講が決まったりする非常勤講師もいるという。
Nakayamaさんの勤務先では「遠隔授業」「オンライン講義」が始まったというが、「準備に費やす時間は、非常勤先のリクエストに応じることで増えていく」と負担の大きさを嘆く。私費でオンライン講義に必要な機材を揃える知人もいるといい、「このまま少ない給与から追加の諸経費を自腹で支払い続けねばならないのでしょうか」と危機感を示した。
こうした実態を受け、Nakayamaさんは「図書館司書や職員も含め、多くの非正規雇用者が教育を支えています。新型コロナウイルスによる影響を受けた全ての人に、自粛の強要ではなく、可能な限り速やかな、簡易な手続き、かつ十分な補償、十分な手当、十分な給付を強く求めます」と政府に訴えた。
保育士「子どもの行動を完全に止めることなどできない」
東京都内の認可保育園で働く保育士の寺田さんは、他職種と比べ「給与はある程度保証されている」としつつも、「濃厚接触しないことはありえない」と高い感染リスクにさらされている現状を明かした。
園内では食事や排泄、睡眠などあらゆる場面で感染リスクがあり、おもちゃを舐める0歳児や、手で口を覆わず人の顔の目の前でせきやくしゃみをする1〜2歳児もいるという。
寺田さんは「子どもの育ちを保証する以上、発達の中で人間関係を築いて友達や大人と触れ合って遊ぶ子どもの行動を完全に止めることなどできない」とし、「自分が無症状の感染者で、子どもたちに感染させてしまったらどうしようというプレッシャーを感じながら日々の保育に向かっている」と苦悩を語る。
それでも「保育士には、子供の命と尊厳を守るために、様々な職業の方の社会生活を支える責任がある。だから私たちは、自分が感染するリスクを背負っても保育が必要な子供を預かります。対策を十分にした上でお子さんを預かることで少しでも保護者の方を支えたいし、それは虐待を未然に防ぐことにも繋がる」と覚悟を示した。
その上で、「子供たちが安心して生きていくために、政府の方々は責任を持って、この国で生きる全ての人の生活が、過度な負担や不安なく成り立つように協力してください」と訴えた。
性産業は「重要な役割を果たしてきた」
性風俗業従事者の今賀はるさんは、新型コロナウイルスの影響で店舗の休業が相次ぐ性風俗業界は「とても厳しい状況になっている」と話す。一部の店舗が営業を続けていることに対しては「なんで今の時期に開けているんだ」という批判もあるとしたが、労働者や従業員の生活がかかっているため「責めることはできない」と語る。
今賀さんは性風俗業で働く人々について「一概には言えない」としながらも「お金に困って働いている」人が多くいると話す。具体的には子供の養育費が必要なシングルマザー、借金の返済が必要な人、学費を払うために働く学生、親への仕送りが必要な人などで、「自粛をしたくても(借金などの)『支払い』はストップされず、休むことができない状況の人もいる」と、感染リスクがある中で働き続ける性風俗業従事者に理解を示した。
その上で、「性産業は大昔から存在し続けてきた仕事。ただの性欲処理だけじゃなく、重要な役割を果たしてきた」と語り、他の業界と差別することなく「補償」をしてほしいと訴えた。