「エール」18話 音、国際作曲コンクール入賞の裕一にファンレター 古関裕而とドラマの比較もしてみる
第4週「君はるか」18回〈4月22日 (水) 放送 演出・松園武大 脚本・吉田照幸〉
留学したい裕一
鉄男(中村蒼)のすすめで応募した国際作曲コンクールに入賞した裕一(窪田正孝)。イギリス留学とその費用全額免除の誘いに揺れる。茂兵衛(風間杜夫)に言って許してもらえるわけないと思ったから。なにしろ裕一は喜多一の負債を茂兵衛が肩代わりする代わりに権藤家の養子になり、ゆくゆく事業を継がないといけないのだから。嬉しさを押し殺す裕一。挙動不審な彼を銀行の人たちは不審に思う。悩む裕一のもとに藤堂先生(森山直太朗)が現れる。もちろん先生は留学をすすめるが、お金のことがあると知ると口ごもりつつ「天から授かった宝物はドブには捨てない」とだけ言う。でも、先生、逸(はや)って鉄男に話してしまい、新聞記事になる。茂兵衛にはまだ言わないでいたというのに。
裕一の「せんせーい!」の金切り声のトーンが井戸田潤の「ハンバーグ!」みたいだった。
ファンレターを出す音
その頃、豊橋の音(二階堂ふみ)は新聞で同世代の者が国際コンクールで入賞した記事を読み、大興奮。題材が、小学校のとき演じた「竹取物語」だったものだから、運命を感じてしまう。曲を聞いたわけでもないのに、夢中でファンレターを書く。最初は、文学少女・梅(森七菜)に代筆を頼むが逃げられ「心で書くもの」とアドバイスされ自分で書き出す。かなり思い込みの激しい文面で、「あなたの魂を私は歌で伝える」とすっかりその気。こういう人って苦手だなあと思う人も中にはいるだろうけれど、強い思い込みが道を拓くこともあるもので。
裕一は、たくさんファンレターをもらったなかで、音の手紙を気に入って、返事を書き始める。その途中で三郎がやってきて、酒に誘う。久々に出た「いてて いてて」。
賞金が、日本円で4000円(いまのお金で約1200万円)というから、それで権藤家の借金返せばいいのにという気もしないではないが……。
史実ではどうたったか
「エール」の主人公・古山裕一のモデルは日本が誇る作曲家・古関裕而。巨人や阪神、甲子園の歌を作ったり、映画やドラマの曲を作ったり、大学の応援歌、校歌など5000もの曲を作曲、お店の閉店によくかかる「蛍の光」の編曲なども手掛けた多作の人物。クラシックを学び、そこからポピュラーソングや歌謡曲へとジャンルをまたぎ、多くの人に愛される曲を作ってきた。4月10日、NHKで放送された「ららら♪クラシック 古関裕而の世界」(解説は慶応大学教授・片山杜秀)で、古関裕而が国際作曲コンクールに入賞したエピソードが紹介され、「竹取物語」が入賞した頃の「亡き愛児に捧ぐる歌」の演奏もあった。当時の楽譜は現存していないものが多く、これが数少ない残っている楽譜なのだとか。そう、「竹取物語」はどういう曲かわからないのである。ドラマではぜひ勝手に想像して作ってほしい。
では、この番組で紹介されたモデルの歴史と、ドラマを比べてみよう。
◯明治42年福島市に生まれ
↑ これはドラマと同じ。学生時代音楽三昧だったことも同じ。
◯山田耕筰の本を読んで独学で作曲の勉強をし、「火の鳥の会」という音楽愛好グループに入りコンサートに通っていた。そこでラヴェルやストラヴィンスキーに触れる。
↑ このへんはうっすらドラマに取り入れられていたが、音楽に夢中描写は薄め。
◯高校卒業後川俣銀行に就職、仕事をしながら作曲も続けた。
↑ ドラマでは母の実家の養子になり、音楽を諦めるという哀しい話になっている。
◯外国から取り寄せた音楽雑誌で見つけた国際コンクールに応募。
↑ ドラマでは鉄男にすすめられたことに。
◯「竹取物語」を題材にした「竹取の翁」が入賞(新聞の見出しではこの題名になっている)。
↑ 入賞は同じ。タイトルがドラマではわかりやすく「竹取物語」。
◯ストラヴィンスキーから手紙をもらう。でもイギリス留学はしなかった。
↑ ドラマでは、審査員がストラヴィンスキー。留学ははたしてドラマでは……?
◯ファンレターを送った内山金子と結婚。
↑ 金子のモデル・音がファンレターを送る。18回では返事がまだ来ないが、どうなる……?
余計なお世話だが、こういうモデルに関する紹介番組を土曜日に日村の案内でやったらいいんじゃないかと思うのだが、今週の土曜日の振り返りはどうなるのだろうか。
(文/木俣冬、タイトルイラスト/おうか)
(これまでの木俣冬の朝ドラレビューはこちらから)
番組情報
連続テレビ小説「エール」◯NHK総合 月〜土 朝8時〜、再放送 午後0時45分〜
◯BSプレミアム 月〜土 あさ7時30分〜、再放送 午後11時〜
◯土曜は一週間の振り返り
原案:林宏司
脚本:清水友佳子 嶋田うれ葉 吉田照幸
演出:吉田照幸ほか
音楽:瀬川英二
キャスト: 窪田正孝 二階堂ふみ 唐沢寿明 菊池桃子 ほか
語り: 津田健次郎
主題歌:GReeeeN「星影のエール」
制作統括:土屋勝裕 尾崎裕和