ルビン氏はこう続ける。「センパイはその組織の中で立場を守られている。三浦に引退を考えるべきだと発言したコメンテーターがいたが、次の機会にはその話をしなくなった」

 実際、三浦の影響力は絶大だ。彼の日々の節制を怠らない姿勢は、理想的のライフスタイルを実践していると考えられている。

 日本には「ソンタク」という言葉がある。他人の心を推し量ることを意味するが、日本人のそうした気持ちが働いて、クラブだけでなくメディアにも三浦が現役を続けることについて疑問視する声は上がっていない。加えて、スポンサー企業にとっての商品的価値の高さも、情熱を燃やし続ける三浦を後押しする大きな要因になっている。
 
 三浦の前では前述のように語ったイニエスタが、別の機会では引退についてこう見解を述べている。

「もちろん少しでも長く現役を続けたいよ。でもチームの成長のために自分が貢献できていないと感じたら、その時はきっぱり辞めるつもりだ」

 このイニエスタのような考え方は、日本の文化ではむしろ異質に映るのかもしれない。もっともルビン氏によると、若者や海外生活経験者の間では新たな価値観も生まれているという。その変化の兆候が見られるのがネットだそうだ。

「ネットでは賛否はある。ただそこから一般レベルにまで議論が発展することはない。三浦の出場機会は限られている。試合に出た時もメディアはポジティブな部分を報道している」
 
 三浦は現在臀部を痛めていて、神戸戦に出場できるかどうかは微妙な状況だ。しかし今回のカンファレンスで、イニエスタとともに新シーズンが開幕するJリーグの顔としての役割を果たした。

 三浦はいうなればアニメから生まれたヒーローのようだ。オリベル・アトムが出場する試合も永遠に終わりが訪れなかった。ピッチは何キロも続くというほど広大だった。そう、まるで時の流れが止まっているかのように……。

文●ファン・L・クデイロ(エル・パイス紙)
翻訳●下村正幸

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