ナイジャ・ヒューストンと堀米雄斗がオリンピック前哨戦で激突。 CHIMERA A-SIDE THE FINAL
あまりに豪華なオリンピック前哨戦
1月25・26日と愛知県国際展示場 Aichi Sky Expoにてエクストリームスポーツの王者を決めるCHIMERA A-SIDE THE FINALが開催されました。
こちらは昨年行われた豪華海外招待スケーターも参加した、オリンピックイヤーの幕開けを飾る世界的ビッグコンテストとなっていて、優勝賞金はなんと1000万円。メダルの行方を占う上でも非常に重要な一戦となりました。
それもそのはず。来日したライダーは2010年代からコンテストで無類の強さを誇る、絶対王者のナイジャ・ヒューストンに、2017年のThrasherマガジンのスケーター・オブ・ザ・イヤーに輝いたジェイミー・フォイ、Grizzly GriptapeやThank you skate coといったブランドを手がける人気者のトリー・パドウィルなどそうそうたるメンツが集結。
そしてそれらを迎え撃つ日本勢も現時点で最強と言えるメンバーです。今や世界最高峰のライダーの1人で、国内開催のコンテストは2016年以来の出場となる堀米雄斗を始め、Soraグラインドと呼ばれるトリックを持つオリジナリティの塊である白井空良、昨年のWORLD SKATE JAPANやAJSAの年間チャンピオンに輝いた青木勇貴斗などが一同に会すのだから、オリンピックの出場ポイントが獲得できるコンテストではないとはいえ、注目が集まらないわけはありません。
それゆえオリンピック本番のSTREET LEAGUE方と式若干ルールが異なり、2本のランと3本のベストトリックのうちベストスコアの1本ずつが採用される形式で、それぞれ100点ずつあるので合計200点満点で争われます。STREET LEAGUE方式との一番の違いは、ランとベストトリックで必ず1本ずつ採用されるので、一発大逆転が起きにくく、ランでも安定した滑りが求められるという点です。
心理戦の様相を呈していた初日の予選
初日は予選が行われ、豪華海待選手とリーグ戦を勝ち抜いてきた日本勢が入り混じって接戦を繰り広げました。結果は堂々とした貫禄の滑りで168点を叩き出した堀米がトップ通過で、続くナイジャが160点で2位。お互いまだ手の内を出し切っていない心理戦の様相を呈していましたが、それは予選終了後にそれぞれが行っていた決勝に向けた練習にも現れていました。ナイジャは今回のパークのメインセクションであるバンクからのギャップ to レールで感覚を確かめるように何度も練習していたのに対して、堀米はルーティーンを中心に取り組んでいたのですが、決勝ではその取り組みがそのまま結果としてスコアに現れることに。
堀米がそのまま優勝するかと思いきや…
それはどういうことかというと、翌日の決勝1本目でランで堀米雄斗はハンドレールでノーリー B/S270 スイッチリップスライドをメイクするノーミスのパーフェクトランを披露して87点を獲得しトップに躍り出ました。前日MPルーティーンを中心に取り組んでい効果でしょう。対してナイジャは1本目のラストトリックでバンクからのギャップ to レールでのキックフリップ B/Sリップスライドをミスしてしまい、出遅れる形となってしまいました。
勝ち方を知っていたナイジャ・ヒューストン
しかし、ここからナイジャが真の強さを見せます。
ランの2本目できっちりキックフリップ B/Sリップスライドを仕留めると、堀米を上回る90点を獲得。今回のセクション構成を考えた上で、一番のビッグセクションがバンクからのギャップ to レールなので、そこで回しインのトリックをルーティーンに入れてメイクしたことが高得点につながったのでしょう。
さらにベストトリックでは、1本目に同じバンクからのギャップ to レールセクションでノーリー F/S 270スイッチリップスライドをメイクしたのみに終わってしまった堀米に対して、1本目にハーフキャブ B/Sスミスグラインドの180アウト、2本目にはさらにその上をいくキャバレリアル B/Sノーズブラントスライドをメイクし、今大会最高の97点を獲得。優勝を決定付けました。しかもこのトリックは練習では一度も披露していないトリックというおまけ付き。それもジャッジ陣の評価を高めたポイントになったことは間違いありません。
しかし、これもナイジャの前日の予選後の練習や決勝のトリック構成を見ると、すべてが計算されたものであったと思えてしまうのです。
どういうことかというと、前日の予選後の練習では決勝1本目にメイクしたハーフキャブ B/Sスミスグラインドの180アウトに加え、キャバレリアル B/Sリップスライドも彼はメイクしていたのですが、キャバレリアル B/Sノーズブラントスライドはその延長線上にあるトリックだからなんです。
しかもベストトリックでメイクした両トリックの写真を比べても、実はアプローチの体勢がデッキをレールに掛ける直前までほとんど変わっていなかったので、そういったことをすべてを計算していたのではないかとすら思えてしまうナイジャ。もしそれが観客の盛り上がりもすべて考えての上でのトリック構成だとしたら、彼は恐ろしいほどの試合巧者だと言えます。
堀米のさらなる進化に期待
コンテスト後のインタビューで、堀米はニュートリックを出したかったことと、ナイジャとの差はそこまでないという話をしていましたが、それが今回のCHIMERA A-SIDE THE FINALや、決勝で8位に終わってしまった2018年のStreet League World Championship Super Crown Finalのような持ち技が出しにくいセクションがメインだとしたらどうなのでしょう。
もしかしたらオリンピックの金メダルはセクション構成に左右されるのではないだろうかとすら思ってしまいます。しかし、日本人としてはセクションへの対応力をつける練習も重ねていくと話してくれた堀米のさらなる進化の方に期待したいところです。
Result
1位 ナイジャ・ヒューストン 187点
2位 堀米 雄斗 180点
3位 ジェイミー・フォイ 170点
4位 青木 勇貴斗 154点
5位 池 慧野巨 149.3点
6位 トミー・フィン 149点
7位 白井 空良 79点
8位 ジェイク・イラーディ 63点
9位 根附 海龍 60点