30年前から1.5倍、学校での子どもの骨折の原因
学校での子どもの骨折が増えているようです(写真:しげぱぱ/PIXTA)
最近、子どもがちょっとしたことで骨折する、という話を聞きます。
高齢期の骨折は、要介護状態となる要因の1つで、骨折部位によっては生活の質(QOL)に深刻な影響を与えることがあることで知られています。一方、子どもについては、男児や運動中の骨折が多いことから、一昔前まで、骨折は“活発な証拠”といった印象すらあったのではないでしょうか。
しかし、最近では、高齢者の骨折と同様に、筋肉・骨・関節などのトラブルや、バランス能力・体力・移動能力などが衰え[こういった理由により、立ったり歩いたりといった日常動作が困難になることをロコモ(ロコモティブシンドローム)と呼びます]と関連づけた話題となることが増えてきたように感じます。
学校での骨折は30年前の1.5倍
実際、どのぐらい骨折は増えているのでしょうか。
独立行政法人日本スポーツ振興センターの「学校の管理下の災害」によると、学校(学校行事を含む)における骨折は、小学生から高校生まで増加しており、全体で30年前の1.5倍、1970年と比べると2.4倍にまで増えています。
ここ10年間に着目すると、未就学児〜中学生は横ばいにとどまっていますが、高校生では引き続き増加し続けています。
では、どのような場面で骨折をしているのでしょうか。
まず、小学生は、休憩時間(始業前、授業終了後の特定時間を含む)の骨折が最も多く、2017年度でほぼ半数を占めます。次いで、体育が27.5%(各教科合計で29.6%)で、体育の実施競技別にみると、跳び箱、バスケットボールでの骨折が多くなっています。小学生では、部活動(クラブ活動、部活動)はあまり多くありません。
中高生になると部活が半数を占める
中学生や高校生になると、休憩時間の骨折は減り、部活動が半数を占めるようになります。体育は小学生同様3割弱で、実施競技別にみると、中学生も高校生も、バスケットボール、サッカー・フットサルが多くなっています。
部活動での実施競技別にみると、中学生はバスケットボールとサッカー・フットサルがそれぞれ全部活動における骨折の4分の1程度を占めています。高校生では、野球とバスケットボールが加わります。競技人口の影響もあるでしょう。
このように、普段から運動をよく実施している部活動中の骨折が多いことから、特定の部位のみを使いすぎているオーバーユースの可能性が推察されます。また、身体の成長が早まったことも伴い、早くからより高度な技術を使うことによって、骨折が増加しているという指摘があります[笠次良爾「学校管理下における児童生徒のケガの特徴について」Kansai学校安全6号(2011年)]。
その一方で、スポーツ庁による広報サイト「DEPORTARE」によると、中学2年生の女の子について、1週間の総運動時間が60分未満(1日あたり9分弱)といった「ほとんど運動をしない」子どもの割合が2割程度であるのに対し、900分以上(1日あたり2時間強)といった子どもも多く、子どもの総運動時間の二極化が進んでいる可能性が示されています。
(出所)スポーツ庁web広報マガジンDEPORTARE 「〜子供の運動習慣における課題とは〜 「二極化」の改善に取組む「体育」の優良事例をレポート!」
運動部に所属している、あるいは、習慣的に運動を実施している子どもは、体力、運動能力が高いことがわかっていることから、特に運動習慣がない子どもについて、食生活の変化や運動不足、日照不足により骨が弱くなっている可能性があり、子どもの「ロコモ」も心配されています。
未就学児の骨折が横ばいの理由
また、未就学児の骨折は横ばいで推移していますが、その理由として危険な遊具が減ったこと、ケガをするような遊びをしなくなったことなどが挙げられることが多いようです。
こういった背景の中、2016年度から、学校の健康診断に「しゃがみ込むことができない」「体を前屈、後屈できない」「片足立ちを5秒保てない」「関節に痛みがある」「両腕とも痛みなく、完全に上まで上げられない」などの運動器の確認項目が新たに追加されました。
過度に高度な激しい運動をする必要はなく、幼少期から、個々の体力、身体の成長に見合った運動をバランスよく行うこと、スポーツに慣れ親しむことが重要とされています。