婚活がなかなか終わらない、実らない。そんな男女のリアルとは?(写真:筆者撮影)

もはやルーティンのように、延々続く婚活生活。結婚したい男女は山ほどいるのに、どうしてこんなにもパズルが合わない? 独り身は自由きままだけれど、それでも既婚者バッジをつけたい。そんな決意を胸に、婚活アプリを開いては“イイね”ボタンを押す通勤電車。

そんな、独身者たちにお話を聞くシリーズ『僕/私たちの婚活は今日も終わらない』。婚活中のライターが、取材先との対話を通して、婚活の実情を伝えていきます。

家庭菜園が趣味、関西弁の佐藤さん

今回登場するのはフリーカメラマンの佐藤さん(43歳、仮名)。身長168僂涼翔中背、デニムのパンツ、青いチェック柄のシャツにカジュアルなジャケットをさらりと羽織る。年齢よりも若く見える彼は、明るい人柄でノリも抜群。筆者と初めて会った日も、関西弁で場を盛り上げてくれた。そんな佐藤さんの趣味は家庭菜園だという。

「実家の庭が荒れていたので、きれいにしたんです。そこにスペースができて、せっかくなので大根やニンジンを育ててみたら、思いのほかはまって」。普段は仕事に忙殺されている佐藤さんだが、土をいじっている時間は無心になれるという。YouTubeで育て方を検索し、今では春菊やししとうなどバリエーションも増やしているそうだ。


松永怜さんによる婚活連載。第1回目です

佐藤さんの家族は父親がすでに他界。結婚した兄は遠方に住み、高齢の母親は病気を患いながら、どうにか杖で歩けるレベルとのこと。結果論だが母親が体を動かすきっかけになればと、家庭菜園の水やりなどお願いしている。「別に枯れてもいいと思っています。母が何か動くきっかけになればと」。

そんな母親思いの佐藤さんには40歳のころ、結婚を考えた彼女(35)がいた。「仕事先で知り合った事務員さん。美人で明るくてよく喋る人でした。僕も活発なタイプだし、2人でいると他愛もない会話がとにかく楽しかった」。

年齢的にもお互い結婚を意識していたという。

しかし付き合って3、4カ月経った頃、徐々に彼女のネガティブ思考が気になるように。

「彼女はなんでもマイナスに捉えるんですよ。私は仕事が遅くてもう無理だとか、結婚話が出ても子どもができなかったらどうしようとか……とか」

一度スイッチが入るとネガティブ発言が止まらなかったという。

また佐藤さんを困惑させたのは、マンションへのこだわりの強さだった。

「どうしてマンション持ってないの? これからどうやって生活するの?と問い詰められていました。僕はフリーランスだし、すぐには買えないと説明しても、そんなんでどうするの? 心配じゃないの?と言われてしまう。それなら2人で頑張ってお金を貯めればいいんじゃない?と提案しても、私はそういうことはあまりしたくないし、私は月10万くらい稼げば十分だと。マンションが買えないのは僕の年収が低いせいだと言われるんです。

しかも彼女は、うんと広くてゲストルームにお客さんを呼べるようなマンションがいいと、当たり前のように言うんですよ。年収450万くらいをさまよう俺に言うか?と……」

さらに彼女からの訴えは続く。

「フリーランスは不安定で心配だと言われました。確かに毎年年収は変動するし、先行き不安定なのは認めます。でもね、一般企業に勤めても潰れる可能性あるよって。一緒に苦労すればいいじゃないって」

確かにそうだ。会社に入れば安心だという時代はとうに過ぎ、終身雇用も崩壊した。一方、佐藤さんは大学を卒業して以来20年、会社に属さずずっとフリーで働いてきた。収入が多い年も少ない年も乗り越えて、なんだかんだやってきたという自負はあるだろう。

しかし、一般企業の社員でしか働いた経験がなく、安定した給料をもらってきた彼女には、理解できなかったようだ。夫がフリーランスという状態は、人によっては覚悟がいることなのだろうか。

きつい口調は悪意がなくても・・・

こうして彼女のネガティブ要素を感じつつも、それを凌駕するくらい愛情も深まってきた。いよいよ僕も、40過ぎて結婚か。ティファニーが好きな彼女のために、内緒で指輪を見に行ったという。付き合って1年後にはプロポーズしよう……そう覚悟を決めた1週間後、突然、彼女から別れ話を切り出される。

「あなたのきつい口調や言葉に耐え切れないと、バッサリでした。確かに今まで彼女や、仕事仲間からも、何度か言われたことはあったんです。関西弁がきついのか、僕の言い方が偉そうに聞こえるらしくて」

周りから忠告を受けつつも、大したことではないと流していたそう。

本人に自覚がなくとも、きつい言葉を発する人にはどこか小さく構えるし、口を噤んでしまうクセがつく。

別れて1カ月程度は未練たらたらだった。彼女にLINEを送っても既読スルー。昼間からウイスキーを飲んでも一向に酔わず、テレビを見ても面白くない。絶望ってこんな感じなのかと実感したという。


佐藤さん(写真:筆者撮影)

しかし別れから3カ月程度経ち、徐々に穏やかな日常に戻った頃、急に彼女から連絡が来た。まだ佐藤さんは彼女に気持ちが残っており、やり取りをするうちに復縁することになった。

そうしてまた2人の付き合いは続くのかと思いきや、復縁から7カ月後、2回目の別れも唐突にやってきた。年が明け、彼女からの年賀状に、“今年も一緒にいようね”と書かれているのを読んでから1週間後の出来事だという。

「週末に遊びに行った帰りに、ごめん、私、貧乏したくないから別れたいってボロボロ泣きだして。つらい、寂しいと。寂しいなら一緒にいればいいのでは?と言っても話にならない。ただ、正直またこの感じかと思ったのも事実です。1回目に振られたときの衝撃が大きくて、もうあんな思いはしたくない、心底好きにならないよう気持ちにブレーキをかけていたかもしれません。またいつかダメージを与えられるんだろうと覚悟していたような」

ただ、佐藤さん自身も、彼女のネガティブ思考がいつか直るのではと期待していた部分もあったという。彼女が不安を口にするたびに「君は大丈夫だから」と寄り添い、彼女の考え方を軌道修正させようとしたこともあった。ただ、佐藤さんがどんなに励ましても聞く耳は持たず、逆に励ませば励ますほど、結果的に彼女の依存心は強くなっていくばかりだった。

家の中に、自分以外の誰かがいる生活

そもそも佐藤さんは、なぜ40歳を過ぎて独身なのか。佐藤さん自身はどう自己分析するのか。

「あらゆるチャンスを逃してきました。イイなと思った子にもうちょっとアプローチすればよかったのに、しなかったとか。20代後半では、遠距離恋愛していた子から東京に出てくると言われた瞬間、結婚の覚悟がなくて引いてしまったりしましたね。僕はモテるほうではなく、鈍感な面も多々あったけれど、30代半ばまではいつか結婚できると、余裕があったんだと思います。

それに……実は誰かとずっと一緒にいることが不安なんですよね。仕事先から帰宅して、今まで自分がボーっとしていたスペースに人がいると想像すると、少し複雑です。最初はよくてもずっとだと……」

それでも結婚には憧れる。「街に出て、お父さんとお母さんと小さい子どもの3人家族を見ると、自分にもそれくらいの子どもがいてもおかしくないなぁと。独身だというコンプレックスも若干はあるかもしれない。結婚したら、仕事で遅く帰ってきても奥さんがご飯を作っていてくれたらいいなぁ」。

今後の希望を聞くと「少しでもいいなと思った人が現れたら進もうと思います。相手が外出している時間は1人になれますし、何かを得るには何かを捨てるんでしょうし」。

子どもの頃は、ある程度の年齢になれば、誰でも当たり前に結婚するのかと思っていた。大人になった今、結婚にはお互いの自立が必要だし、自分が当たり前だと思っていた生き方や働き方は、相手にとってはそうでないことも少なくない。きつい口調も同様だ。相手のことをもっと想像することが大切なのだろうか。

結婚を目指すわれわれ独身者は、もっと自分の婚活を俯瞰し、分析する機会があってもいいのかもしれない。筆者はカウンセラーでも、結婚紹介所のプロではないが、同じく婚活中の独身者だからこそ、語り合えることもあるはずだ。この連載で一人ひとりと語り合いながら、よりよい婚活と結婚について、じっくり考えていきたいと思う。

この連載では、記事に登場してくださる方を募集しています。婚活中の方、男女問いません。ライターの松永さんと語り合ってみませんか?ご応募はこちらのフォームよりお願いします。