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近年では、これまで広く取り入れられてきた週5日労働制に代わり、さらに休日を1日増やす週4日労働制が注目を浴びています。「これまでと同じ仕事量を処理できなくなるのではないか」という不安の声も聞かれる週4日労働について、レディング大学で金融学の講師を務めるMiriam Marra氏がさまざまなメリットを解説しています。

Four-day week pays off for UK business | Henley Business School

https://www.henley.ac.uk/news/2019/four-day-week-pays-off-for-uk-business

Economics of a four-day working week: research shows it can save businesses money

https://theconversation.com/economics-of-a-four-day-working-week-research-shows-it-can-save-businesses-money-126701

Marra氏の研究チームは、イギリスにおいて週4日労働制を導入した企業についての聞き取り調査や分析を行ったところ、対象企業がトータルで年間920億ポンド(約13兆円)もの支出を削減できていることを発見しました。これは対象企業における総売上高の2%に相当するとのこと。

対象企業のうち51%が「週4日労働制がコストの削減をもたらしている」と回答したそうで、会社の設備を使用するコストや残業代などのコスト削減が結果的に支出削減につながったことがうかがえます。また、対象企業の62%が「病気で休むスタッフが減少した」と報告したほか、63%が「仕事の質が向上した」、64%が「仕事の生産性が向上した」と回答しています。



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また、Marra氏は日本マイクロソフトが試験的に週4日労働制を導入した結果にも触れ、「週4日労働制によって生じたポジティブな結果が一致している点は興味深い」と指摘。日本マイクロソフトでは2019年8月、毎週金曜日を「特別有給休暇」として休日にする実験を行い、2300人の社員が週4日労働制で勤務しました。

その結果、2018年8月と比較して、従業員の生産性が40%も向上したと発表されました。なお、今回の実験に伴って日本マイクロソフトでは会議の時間や回数の削減、オンラインプラットフォームの活用といった手段も採用されており、こうした生産性向上に関連する施策も功を奏した可能性があります。

日本マイクロソフトが週4日労働制を導入したメリットは生産性だけにとどまらず、電力消費量が23%減少したことや、紙の印刷が59%減少したことなども報告されています。Marra氏はこの結果を受けて、「今回の実験は、ワーカホリック文化が最も強い国の一つである日本において、週4日労働制の取り決めが適用され始めるかもしれないと示唆しています」と述べました。



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さらにMarra氏の研究チームは、週4日労働制がもたらすメリットはビジネスや仕事上のものだけにとどまらないと主張。Marra氏の調査によれば、余分な休日を過ごす方法として54%の従業員が「買い物」、43%が「映画や劇の鑑賞」、39%が「レストランなどで外食」を挙げているそうで、週4日労働制が消費を後押しして社会全体に効果が波及する可能性もあるとのこと。また、日本マイクロソフトにおいて報告されたように、企業内での電力消費量や紙の消費が削減されるほか、通勤回数が減って燃料消費が抑えられるなど、環境にもメリットをもたらす可能性もあります。

しかし、週4日労働制がもたらす多くのメリットが主張されていたとしても、サービス業界や公共サービスの現場では、週に3日を休日とすることが困難な可能性があります。また、重要な点として、単に労働時間を削減するだけで生産性の向上を狙うのは難しく、日本マイクロソフトのようにさまざまな生産性向上の施策にも焦点を当てることが重要だとMarra氏は述べました。



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