セブンーイレブンは今年7月に初出店した沖縄で、物流改革を進めている(記者撮影)

セブン-イレブンを運営するセブン-イレブン・ジャパンが、24時間営業などの課題解決に向けて物流改革を進めている。

加盟店の営業時間短縮を「断固として認めない」と強硬な姿勢だったセブンだが、この11月1日からは全国の8店舗で、23時〜7時の最大8時間閉店することを認めるなど、柔軟な姿勢を見せている。

約50ページに及ぶ、時短営業の運営方法を記した「深夜休業ガイドライン」も策定した。ただ、深夜に休業すると、加盟店は本部に払うチャージ(経営指導料)が大きく増額されるため、「時短営業を行わせたくないという(セブン本部の)意思を感じる」(首都圏の加盟店オーナー)との声があがる。

多頻度配送は本当に最適なのか

時短営業が容易ではない背景の1つには、物流問題がある。コンビニはこれまで、全国一律のチェーンストア・オペレーションを徹底することで効率的な店舗運営を実現してきた。朝に並ぶ弁当などの商品を補充するために、深夜の配送ルートや時間を最適化してきた。

こうした効率的な運営は、全国の店舗が24時間営業していることを前提としており、もし一部の店舗のみ時短営業を行うと、配送の順番や時間の組み直しが必要になる。

時短営業時代の新たな物流の仕組みが求められている中で、セブンがいま力を入れているのは「沖縄モデル」の構築だ。今年7月に初出店した沖縄では物流の仕組みを抜本的に見直した。セブンーイレブン・ジャパンの青山誠一執行役員は「入社して以来、コンビニには多頻度配送が必要と思い込んできたが、時代の変化とともに『本当に多頻度が最適なのか』という問題が生まれてきた」と話す。

沖縄モデルとは、多頻度配送を見直すと同時に、工場や配送の作業省略と効率化を目指す仕組みだ。

そもそものきっかけは、工場の問題だった。セブンが初めて出て行く都道府県では、まず近隣の都道府県にある中食製造業者の工場から商品を納入する態勢をとる。そして、十分に店舗数が増加してから、中食製造業者がその都道府県に工場を新たに建設していた。

一方、沖縄は海に囲まれているため、周辺県からの納入が難しい。セブンは沖縄では2020年2月までに50店舗、2024年までの5年間で250店という出店計画を立てている。この計画では十分な採算性を確保できないため、中食製造業者は二の足を踏み、セブンの沖縄進出のハードルになってきた。

1日の配送回数を5回へ削減

この沖縄独特の事情から、セブンは沖縄出店が決まった2017年ごろから製造や配送をゼロベースで見直し、工場側の負担を減らす仕組みを模索してきた。

沖縄モデルの特徴の1つは、配送回数を減らしたことだ。セブンでは1日3回(21時〜翌2時、7時半〜10時半、14時〜17時)の配送時間帯を設けている。その配送時間帯に合わせ、例えば首都圏では、おにぎりや弁当、パンなど20度の温度帯で配送される商品が1日4回、サンドイッチやレンジで温める必要があるチルド弁当、牛乳など、5度のチルド帯で配送される商品は1日3回配送される。

さらに、飲料などの常温品とアイスなどの冷凍食品の配送も行われ、食品の1日の配送回数は9回に及ぶ。

一方、沖縄では、20度帯の商品と5度帯の商品を同時に運べるトラックを使用し、同時に納入することを可能にした。その結果、冷凍食品の配送などを含めても、1日の配送回数は5回で済む。

店舗に陳列する商品数も大きく減らした。おにぎりや弁当など中食工場で作られる商品の品目数は最大3割超減っている。沖縄以外の大規模な工場では通常、120品目を製造するが、沖縄の工場では80〜100品目に絞り込まれている。

加えて、おにぎりやサンドイッチ以外の、製造に手間がかかる弁当などの商品は夜間に製造するものを減らした。その結果、中食工場では夜勤の人手を減らすことができ、廃棄ロスの削減につなげることができた。

さらに、商品発注の時間を早めた。店舗が本部に対して商品を発注する翌朝のピーク向け時間帯の締め切り時刻は、沖縄以外の地域では午前11時が通例だが、沖縄では午前9時に早めた。昼と夜のピーク向け時に対応している発注内容の修正も、沖縄では対応しない。商品発注時刻を早めることで、工場や配送に余裕が生まれる。

店舗ごとの仕分け作業は配送センターで

そして、仕分け作業も集中化させた。通常、おにぎりや弁当など中食工場でつくられる商品は、工場で配送先の店舗単位に仕分けし、配送センターに送られる。飲料やアイスなどメーカーから納入される商品は配送センターに送られ、配送センターが店舗ごとに仕分けをする。


「沖縄での実験に手ごたえを感じている」と自信を見せる青山氏(記者撮影)

それを沖縄では工場で仕分けを行わず、店舗ごとの仕分けはすべて配送センターで行うことにした。その結果、工場のスペースが空き、仕分けの人手も削減された。

とはいえ、配送便数を減らし、発注の締め切り時間を早めた結果、十分な商品量を並べることができずに販売機会ロスを発生させてしまっては元も子もない。この点、青山氏は「沖縄で大きな問題は起きておらず、(沖縄モデルの)実験に手応えを感じている」と言う。

セブンの歴史を振り返ると、30年前は1日2回、おにぎりや弁当などを配送していた。しかし、より新鮮な商品が並ぶのが一番望ましいと、1990年ごろから朝昼晩すべてのピーク時間帯に1日3回配送する仕組みに変えた。冷凍食品などと合わせると、1日あたりの配送回数は9回が基本となった。

ただ、積載効率を高めるためには配送回数はできる限り少ない方がいい。そこで2013年ごろから、北海道や九州など店舗間の距離が遠い一部地域で、20度帯とチルド帯の商品を同時に運べるトラックを利用し始めた。その結果、冷凍食品を合わせた1日あたりの配送回数は6回へ減少させることができた。

こういった配送回数削減の流れが背景にあって初めて、多頻度配送や物流網を抜本的に見直す沖縄モデルが可能になった。

沖縄モデルを全国に展開

セブンは今後、沖縄モデルの全国展開を狙っている。しかし、発注の締め切り時間変更は、取引先のシステム変更や加盟店の勤務シフトにも影響が及ぶため、導入はそう簡単ではないだろう。一方で、一定の地域では配送回数を減らした実績があり、比較的取り組みやすいかもしれない。

青山氏は「私が1981年に入社した時には、24時間営業している店舗は全体の3割程度でしかなかった。そのときは1日2便態勢で、物流が機能していた。今後、全国的に時短営業が増えても、物流が大きく崩壊することは考えにくい」と強調する。

業界を取り巻く環境が変わる中で、コンビニを支える物流などの仕組みも大変革を迫られている。セブンの沖縄での取り組みは、コンビニ業界の将来を左右するものになるかもしれない。