日本は強豪のウルグアイを相手にポテンシャルを示す戦いぶり。写真は柴崎(左)、三好(中央)、岡崎(右)。(C) Getty Images

写真拡大 (全2枚)

 昨年キリンカップで来日したウルグアイは、親善試合にしては異常なほどにハイテンションだった。そこで日本に敗れたことは、少なからず警戒心をもたらしたのかもしれない。いきなり開始57秒で板倉滉のトラップミスを見逃さず、ルイス・スアレスがそのままロングレンジからゴールを脅かす一方で、チーム全体としては慎重に様子を見ながらゲームに入った。
 
 逆に日本はチリ戦の修正点を炙り出し、距離を縮めてテンポ良くパスを繋ぎ、序盤に2度の大きなチャンスを築いた。2分には縦パスを受けた三好康児が右サイドを抉り切り、岡崎慎司に決定的なラストパスを提供。7分にも安部裕葵が柔らかいクロスを2人のCBの間から走り込む岡崎の頭に合わせた。
 
 本来プレミアリーグで経験豊かな大ベテランの役割は、これを決め切ることだった。そこは再三チャンスを呼び込むことで評価される上田綺世とは違う。ただし反面岡崎は、レスター時代と同じ方法でチームに貢献し続けた。最前線で抜け目なく相手DFにプレッシャーをかけ、CBとボランチから1度ずつボールを奪い取り、無から単独でチャンスを生み出した。ゴールは奪えなかったが、2点目のシーンでは果敢にニアに飛び込みGKフェルナンド・ムスレラの不十分な対応を誘発した。
 
 またもうひとりのベテラン、川島永嗣もしばらくゲームから離れていたのが嘘のように安定したプレーで勝点奪取を支えた。特にエディソン・カバーニが単独で抜け出す致命的なシーンでは、タイミング良く飛び出し浮き球に手を伸ばし、スアレスがフリーで放った強烈なショットも弾き出した。こうして見れば、敢えてふたりのベテランを連れて来た森保一監督の判断は、功を奏したことになる。日常の行動やピッチ上のアドバイスだけではなく、彼らのプレーも間近で見た大迫敬介や上田に貴重な刺激を与えたはずだ。

 そして初戦に続き、攻守両面でチームを牽引したのは柴崎岳だった。もともと攻撃面での視野の広さは大きな武器だったが、守備面での予測力もさらに研ぎ澄まされている。この日も柴崎の足もとにボールが経由する度に、流れが落ち着き攻撃の優位性が高まった。先制ゴールを導く三好へのサイドチェンジはその典型だった。しかし今後も代表に不可欠な存在だからこそ、そろそろしっかりと出場機会を確保できる適性クラブを探して欲しいところだ。
 
 一方2ゴールの三好は、危機感を募らせていたに違いない。同じレフティで久保建英が台頭し、代表では堂安律が最優先でプレーをして来た。来年の五輪を考えれば、アピールする有効な機会はこれが最初で最後だったかもしれない。だが崖っぷちは一転して人生を変える一戦になった可能性がある。川崎から札幌、横浜とレンタル移籍を繰り返したが、今度は海の外から声がかかりそうだ。
 
 まさに完全アウェーの試合だった。カバーニは過剰な演技でVAR判定を呼び込み、PKを獲得し大喜びした。ジオバニ・ゴンザレスは、ボックス内で中島翔哉のターンを身体でブロックしたが、主審はVARを拒んだ。もちろん日本代表に稚拙なミスはあったが、それは経験値を思えば想定内だった。PKを与えた植田直通も教訓は手にしたわけで、試合を進めていく過程でデビュー戦の岩田智輝も少しずつ自信を膨らませていく様子が見て取れた。
 
 もし今さらながら残念な要素があるとすれば、FC東京からひとり招集する交渉が出来なかったのか、という点だ。久保の契約が切れるのは分かっていたのだ。4バックで戦うなら室屋成、小川諒也の両SBか、柴崎のパートナーとして橋本拳人でも補充出来れば、だいぶ状況は改善できたはずだ。
 
文●加部 究(スポーツライター)