清武は横浜戦を「楽なゲーム」と振り返った。その意図は?写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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[J1リーグ11節]C大阪3-0横浜/5月11日/ヤンマースタジアム長居
 
 セレッソ大阪は5月11日の横浜F・マリノス戦で3−0の勝利を収め、前節の松本山雅FC戦に続いてリーグ2連勝を飾った。9節まで2勝2分5敗で13位とパッとしない成績で、特に7節の札幌戦からは3試合連続で無得点と低調だったものの、ここに来て調子を上げてきている。
 
 横浜戦で快勝できた理由はなんなのか。キャプテンで10番を背負う清武弘嗣は言う。
 
「走り勝ちですね、今日は。ポゼッションをするより裏に抜ける選手が活きた試合だった。今年に入ってこういう試合は初めてだったと思うので、考え方としては、簡単な、楽なゲームでした」
 
 横浜戦の戦い方は、意外だった。今季から指揮を執るロティーナ監督が落とし込もうとしているポゼッションサッカーではなく、まるでカップ戦2冠(ルヴァンカップと天皇杯)を獲った2017年シーズンのユン・ジョンファン体制のような堅守速攻型だったのだ。
 陣形全体が前掛かりで最終ラインに大きなスペースができがちな横浜に対しては、たしかに理に適っている戦術だったし、チームとして高次元に機能していたのは間違いない。ポゼッション率は28.6パーセントと多くの時間でボールを回されていたが、堅牢な守備ブロックはほとんど隙がなく、相手の背後を突くカウンターの切れ味も鋭かった。
 
 特に称賛すべきは守備面。指揮官が求める規律を守り組織的に横浜の攻撃を食い止めていった。清武が「俺と宏太のサイドハーフは中を締める。FWもボランチまで下がる。ボランチが主導権を握って押し出すとか、そういうのは今出来ている。それをさぼらずにやるのがチームの規律。そういうところで一体感は出ると思うので、この2試合はすごく良い戦いが出来ている」と手応えを語るのも頷ける。
 
 一方で攻撃面は小さくない驚きだった。常に優位な立ち位置を取る難解な戦術とはかけ離れたものだったからである。だからこそ、清武は「簡単な、楽なゲーム」と振り返ったのだろう。
 
「監督とかイバンコーチが求めるのは、常にボールを握るサッカーだから、今日みたいに縦に速いサッカーというのは、今までシーズンに入ってそこまでなかった。今日はピッチに入った選手が臨機応変にやれた。最初から裏が空いていたので、その攻め方ですぐにいけました。そういう頭にみんなが切り替えたんだと思います」
 
 清武がこう言うように、臨機応変な戦いができているのは評価すべきだが、そもそも本来目指している攻撃ができていないのだから、戦術の幅が広がったというのは時期尚早である。
 
 理想を追い求めれば、すぐに結果はついてこず、真逆の戦い方では、まさに別のチームにでもなったかのように機能し始める。その意味で横浜戦の快勝は、決して手放しで喜んではいけないだろう。
 
 時間を要してでも、あくまでポゼッションサッカーを追求するのか、機能し始めている堅守速攻型にこのまま切り替えるのか。セレッソ大阪は依然として、理想と現実のジレンマを抱えているのではないだろうか。
 
取材・文●多田哲平(サッカーダイジェスト編集部)