「キモい」と話題になった四足歩行ロボット「SpotMini」が量産へ、一体何に使われるのか?
ボストン・ダイナミクスは二足歩行の「アトラス」や不気味な四足歩行ロボット「ビッグドッグ」など数々のロボットを開発し続けています。そんなボストン・ダイナミクスが「実用的なプロダクト」の生産を開始すると発表しており、「一体どのような用途で使われるのだろうか?」ということを、電気工学技術の学会誌「IEEE Spectrum」のライターであるエヴァン・アンカーマン氏が予測しています。
https://spectrum.ieee.org/automaton/robotics/industrial-robots/boston-dynamics-spotminis
登場当初から「キモい」と話題となったボストン・ダイナミクスの四足歩行ロボット「SpotMini」は、2019年に市販される予定。当初の生産予定大数は100体でしたが、その後、2018年7月には年間1000台を生産すると発表されました。
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SpotMiniがどのようなロボットなのかは、以下の記事から読むことができます。
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ボストン・ダイナミクスのマーク・レイバートCEOはSpotMiniの量産について「私たちは長い時間をかけて未来のために動いてきました。そして今、実用的なプロダクトを作ろうとしています」と語っています。
レイバートCEOはSpotMiniが「建設」「配送」「セキュリティ」「ホームアシスタンス」の4分野でのテストされていることを明かしており、将来的な目標を「さまざまなアプリケーション用の柔軟なプラットフォームを生み出すこと」としています。ただし、「実用的なプロダクト」が具体的にどのようなものを示しているのかはわかっていません。
レイバートCEOが語る内容を可視化するとこんな感じ。青い部分がボストン・ダイナミクスが2018年時点で目材している製品とアプリケーションであり、黄色い部分が長期的に目指していく「高度な機能」となっています。
短期的なスパンで目指している内容の1つに「エンターテイメント」というものがありますが、これは既にSpotMiniのムービーが視聴者に楽しまれていることからも、ほぼ確実に達成できるといえます。また、多方向に動けることからも災害救助など緊急事態での活用も可能とみられます。一方で、屋内ではSpotMiniの起動性を十分活用できない可能性があり、より複雑な自律性が必要になることからも、防犯目的の用途として力を発揮するかどうかは微妙なところだそうです。
また、Amazon倉庫で導入されているような作業ロボットとして使用すると、能力を持てあます可能性があります。ボストン・ダイナミクスのロボットの特徴は驚異的なバランス・俊敏性・可動性にあり、平らな地面を持つ決まった場所で作業するだけであれば、安価なロボットは他にもあるとのこと。
そして、配達サービスでロボットを使用することにおいて、技術的な壁となるのは、歩道から受け取り人の家の扉までの間の道のり。知覚という点においても運動計画という点においても、配送ロボットは最後の最後、歩道からドアに移動する部分で膨大な作業を行う必要があるとのこと。レインバートCEOによると配送ロボットは作業の80%を行えるようになっているそうですが、自動運転カーの開発からわかるように、「できない点」を補うのは非常に難しい作業となります。
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変化が激しく複雑な環境である建設現場はロボットが活躍する場所の1つに見えますが、「ある場所から別の場所に重い物を移動させる」という作業に高度な自律性はあまり必要ありません。建設現場用の自律的なロボットを開発する労力が、その効果に見合ったものであるかどうかは不明とのこと。
一方で、高齢者や障害者の世話は、長期的みればロボットの果たす重要な役割になるとアッカーマン氏は述べています。家庭内のケアで必要とされる自律的な移動・操作の技術はかなり複雑で、信頼性やコストの面で優れたロボットを開発するには時間がかかるとみられていますが、ボストン・ダイナミクスのロボットの用途としては大きな可能性があります。
ボストン・ダイナミクスが2018年現在に開発しているロボットは、上記の図の「長期的に目指していく『高度な機能』」を有するロボットではありません。まだまだ目標とするロボットを開発するまでには長い道のがあります。今後、以下の図の青い部分にあるロボットが黄色い部分に移動するのか、それとも全く新しいロボットが黄色い部分に位置することになるのかが注目されています。