フットボール狂で知られるミック・ジャガー。母国イングランドを応援するべく、満を持してロシア入りした。(C)Getty Images

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 ロシア・ワールドカップ準決勝・フランスvsベルギー戦の試合前、テレビ画面に大きく映し出されたのは、超が付く大物ミュージシャンだった。自他ともに認めるフットボール狂で、ローリングストーンズの伝説のボーカリスト、ミック・ジャガーそのひとである。
 
 ただ、その“呪い”を知る者は大いにザワついた。「いったいミックはどちらを応援しているの?」と。応援したほうがことごとく敗れ去る、戦慄のジンクスがあるからだ。
 
 現在ストーンズはワールドツアーを展開中。前日はポーランドで公演が行なわれ、ミックは満を持してロシア入りした。英紙『The Mirror』によれば、そもそもツアーの日程は大好きなイングランド代表を応援するため、試合日とかぶらないように組まれているという。それはグループリーグをはじめ、ノックアウトラウンド以降も試合がありそうな日は避ける徹底ぶり。4年前のブラジル大会でも同様だった。
 
 今回ふたりの息子とともにスタンドに現われたミックが、フランスとベルギーのどちらを応援したかは分からない。間違いないのは、水曜日のイングランドvsクロアチア戦を現地観戦するということだ。3月にはガレス・サウスゲイト監督と会食し、もし優勝したらメンバー全員を招待して盛大なパーティーを開かせてほしいと申し出ている。快進撃を続けるスリーライオンズを応戦する好機がようやく訪れたのだ。これを逃すはずがない。

 
 さて、“呪い”の話に戻ろう。凄まじいエピソードのオンパレードだ。
 
 まず、1998年、2006年、2010年大会と、イングランド代表の「ラストゲーム」はすべて現地で応援している。ほぼピンポイントで向かった試合でことごとく敗退が決まっているのだからなかなかだ。英紙『Metro』によると、前回ブラジル大会はグループリーグで敗退したため現地観戦が叶わなかったが、イタリア戦とウルグアイ戦の前に選手たちに檄を飛ばすツイートを敢行。そのどちらの試合もイングランドは落とし、早期敗退を余儀なくされた。
 
 2010年の南アフリカ大会では、ラウンド・オブ16でアメリカvsガーナ戦を観戦。USAの野球帽をかぶり、友人であるビル・クリントン元大統領とVIP席に陣取ったが、アメリカは1-2の惜敗を喫する。愛するイングランドはドイツ相手に屈辱的な大敗を喫し、ブラジルの応援にも駆け付けたが、準々決勝でオランダの後塵を拝した。
 
 極めつけが前回のブラジル大会だ。
 
大会前にイタリアとポルトガルでライブを行なった際に「君たちのチームはかならずベスト16に行くぞ!」と煽ったところ、両国ともまさかにグループリーグ敗退。そして歴史的な出来事「ミネオロンの悲劇」にも登場した。準決勝のブラジルvsドイツ戦ではセレソンのユニホームを身に纏った息子と声援を送るも、王国は驚きの1-7大敗(パートナーがブラジル出身だった)。これにはブラジル国民やメディアからも「ミックのせいだ!」と揶揄され、「百歩譲って先制点が俺のせいだとしても、あとの6点は関係ないだろ!」と反論した。

 
 今大会も開幕前に、自身のプライベートジェット機をアルゼンチン代表に貸し出した。同チームはそれを使ってロシア入り。ところがグループリーグで大苦戦を強いられると、ここでもアルゼンチン国内で“呪い”が囁かれた。結果的にベスト16には進んだものの、決勝トーナメント1回戦でフランスに敗れ去っている。
 
 もちろん応援したほうが勝利したゲームも多数あるのだろうが、単なる偶然にしては、あまりにも結果が悲しいものになりすぎているか。それもこれもミックのフットボール愛があればこそだろう。
 
 はたしてイングランド代表は、ミックの強烈な愛情を力に変えて52年ぶりの決勝進出を果たすのか、それとも“呪い”のジンクスの前に屈するのか。英国内がジワジワとザワついている。