本塁打を放った大谷を出迎えるエンゼルスの面々【写真:Getty Images】

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35歳キンズラーが示した“優しさ”「彼が早く成功できたことが嬉しい」

 エンゼルス大谷翔平投手はメジャーデビューから1週間で早くも数々の伝説を打ち立てている。1日(日本時間2日)の敵地アスレチックス戦で6回3失点の好投で初白星を挙げると、3日(同4日)のインディアンスとの本拠地デビュー戦では第1打席の3ランを含む4打数3安打3打点の大爆発。さらに4日(日本時間5日)のインディアンス戦では2戦連発となる同点2ランを放つなど5打数2安打2打点と逆転勝利に大きく貢献。投手として初登板初勝利、打者としては3試合で打率.429、2本塁打、5打点と驚異的な数字を残している。

 メディアとファンから大きな注目を集める23歳の二刀流。序盤の成功をもたらした要因としては、チームメートのサポートも大きい。インディアンスとの連戦の間、喜びに沸くロッカールームでも、大谷に対する同僚の優しさは満ち溢れていた。

 地元紙の番記者が、イアン・キンズラー内野手にこんな質問をした。

「(初本塁打後に)『サイレント・トリートメント』で迎えたチームの雰囲気は? そして、スプリングトレーニングで苦しんでいたが?」

 すると、それまで笑顔で話していたキンズラーの視線が厳しくなった。

「質問は馬鹿げてる!」、厳しい口調となったキンズラー

「2つ目の質問は完全に馬鹿げている! 新しい国、リーグにきた選手がスプリングトレーニングを過ごす。シーズンに向けた練習をしている。バッティング、ピッチング、彼には色々あるんだ。チームとして彼が早くも成功できたことが嬉しいよ。あまりに不要でネガティブなコメントが彼に対しては出ていた。彼には自分の力を証明するチャンスがやってきたんだ。見ていて楽しいよ」

 そう厳しい口調でまくしたてた。大谷は極度に乾燥したアリゾナ州テンピでのスプリングトレーニングで、投打に様々な修正を施した。試行錯誤の間、オープン戦の成績は防御率27.00、打率.125と期待のスーパースターらしからぬ数字だった。

 その結果、米メディアは開幕前に厳しい論調で書き立てた。マイナーで開幕を迎えるべき、という記事まで出た。そんな地元メディアに対して、オールスター出場4度の実力者は断固たる姿勢を示し、大谷の開幕1週間での大ブレークに溜飲を下げていた様子だった。

 35歳のキンズラーは一回り年下のルーキーがすっかりお気に入りのようだ。インディアンス戦の大谷のメジャー初本塁打のハイライトでは“バイプレイヤー”として輝いた。

 メジャー球団では、記念のホームランを放った同僚をあえて最初に無視し、その後、時間差で手荒く祝福する「サイレント・トリートメント」という流儀がある。インディアンス戦では、ハイテンションでダグアウトに戻ってきた大谷は誰にも相手にされず、キョロキョロしながらエアーハイタッチ。周囲の祝福を待ったが、誰もしてくれない。そして、たまりかねて抱きついた相手がキンズラーだった。

「サイレント・トリートメント」では必死の“抵抗”も…「幸せな時間だった」

「まだ早いんだ。まだだ、と思っていたよ。どうにかしてはねのけようとしたんだけど、彼はなにせ巨漢だからね。うまくいかなかったんだ。幸せな時間だったよ。最初の1週間は究極的に素晴らしかった。エキサイティングだよ」

 DL入りしているキンズラーは、大谷のハグをかいくぐることができなかった。必死に無視を続けようとしたが、諦めると、ニッコリと笑ってハグ。そして、大谷をもみくしゃにする“祝祭”の先導者となった。

「彼は最高の才能に恵まれている。我々はそれを目撃した。野球のマウンドにおいても、彼が生み出す話題のレベルの大きさという点においてもね。メジャーリーグに適応しようとしている彼を見ているのが、本当に楽しいんだ」

 試合後のクラブハウスでは、スーパースターのトラウトをはじめ、選手が次々に大谷を祝福していた。この先、新たな試練がやってくるかもしれない。そんな時にも、大谷には最高のチームメートがついている。(Full-Count編集部)