島根・広島両県内を結んだJR三江(さんこう)線が廃線となり、そのラストランでイノシシとの衝突事故が起きるハプニングがあった。

この事故で、JR西日本が列車運行情報で流したお知らせ文が話題になっている。

下り線の最終列車がイノシシと接触事故


話題になったJR西日本のお知らせ文

イルミネーションに照らされ、空には花火が打ち上がる。「天空の駅」として知られ、高さ約20メートルの橋の上にある宇都井(うづい)駅(島根県邑南町)は、最終列車が着くと、お祭り騒ぎになった。名残り惜しむ地元の人たちの演出に、鉄道ファンらも夢中でシャッターを切っていた。

三江線は、1930年に一部で営業を始めた。島根県内の江津(ごうつ)駅と広島県内の三次(みよし)駅の間の全線が開通したのは、戦後の75年になった。中国山地を貫き、日本海に注ぐ江の川沿いを走っており、その雄大な風景で知られていた。

ところが、沿線で人口減少が続き、車の利用も増えて、利用者の減少は止まらなかった。報道によると、1キロ当たりの1日の平均利用者数は、2014年度に50人まで落ち込み、JR6社の全路線で最少だった。その結果、JR西日本が三江線を廃線することを16年9月に発表し、18年3月31日が運行最終日になった。

JR西日本の米子支社にJタウンネットが4月2日に聞いたところによると、この日は、延べ3274人もの利用者があった。中には、車内がすし詰め状態の列車もあったといい、ツイッターなどでも、その混雑ぶりが伝えられた。JRでは、入場規制はしなかったものの、列車に乗り切れない場合には、代行のバスやタクシーを出して対応した。

そんな中で、下り線の最終列車となる江津発浜原行きが19時34分ごろ、島根県内の川平〜川戸両駅間でイノシシと接触事故を起こした。

「こんな文面を運行情報ページで見ないから新鮮」

この事故で、車両と線路の点検をした結果、最終列車は、18分遅れで浜原駅に着いた。上り線にも遅延が出て、最終列車の三次発江津行きは、24分遅れで21時51分に江津駅に着いた。地元の人らは、手旗を振って最終列車を出迎え、88年の歴史に幕が下りたことに感慨深げだった。

JR西日本の列車運行情報サイトでは3月31日22時、三江線のお知らせで「最終列車がすべて終着駅に到着いたしました」と告知し、長年の利用に感謝の意を表した。三江線はこれで運転が終了になるとしたうえで、こう結論付けた。

「最後の最後まで、皆様にも猪にも愛される三江線でした。ありがとうございました」

この文で「猪にも愛される三江線」という一節がツイッター上で話題になり、次々に感想が書き込まれている。

米子支社の広報担当者によると、列車がイノシシと接触事故を起こすのはよくあることで、珍しくないそうだ。なお、廃線後の4月1日からは、島根・広島両県の6市町による代替バスが走っている。三江線の駅舎や線路については、駅舎の一部が市町村に譲渡されるほかは、取り壊しや撤去になるという。