それはともかく、現在の人手不足を解消するためには、もちろん「生産性向上」も必要だが、併せて「地域社会」が鍵になるのではないかと考えている。特に地方の人手不足は、一企業で解決できる問題ではなくなりつつある。
 意外だろうが、都道府県別の経済成長率を見ると、実は日本の足を大きく引っ張っているのが東京都だ。東京都はGDPが94.3兆円('16年度)と、一都市としては世界最大級の経済規模を誇る。日本全体のGDPの、ほとんど5分の1を占める東京都の経済成長率が、信じがたい話だが'14年度、'15年度、'16年度と、3年連続で「マイナス」に陥っているのだ。現在の東京は日本経済を牽引しているわけではない。むしろ、足を引っ張っている。もっとも、東京一極集中は相も変わらず続いている。'16年、東京には15万人を超す人々が流入した。もちろん、そのほとんどが若い世代であり、本来は地方でサービスの担い手となる人々だ。

 経済成長していないにも関わらず、人口だけは増える。当然ながら、東京圏では「貧困」が問題になりつつある。少なくとも現在の日本では、豊かになるチャンスは東京圏にはない。むしろ、地方にある。
 だが、貧困化が進む東京圏から地方に人々が移動したとしても、定着してもらわなければ意味がない。Uターン、Iターンで流入した人々に定着してもらう。一企業が各地で努力しても、なかなか難しい課題だ。地域社会や行政との連携は必至だろう。
 今後の日本の地方を中心とした人手不足は、ある意味で地方の「再生」のチャンスでもあると理解するべきなのだ。

みつはし たかあき(経済評論家・作家)
1969年、熊本県生まれ。外資系企業を経て、中小企業診断士として独立。現在、気鋭の経済評論家として、分かりやすい経済評論が人気を集めている。